エボラの症例を診断する際には、時間が何よりも重要です。しかし、既存の診断検査では結果が出るまで少なくとも1〜2日かかるため、患者にただちに治療と隔離が必要かどうかを医療従事者が迅速に判断できません。
MITの研究者による新しい検査法が、この状況を変える可能性があります。妊娠検査薬に似たシンプルな紙製ストリップを使うこの装置は、エボラに加え、黄熱やデング熱などのウイルス性出血熱も迅速に診断できます。
「最近のエボラ流行で目の当たりにしたように、症状が現れていても、何の病気なのかはっきりしないことがあります」と、MIT機械工学科の客員研究員で、MITリンカーン研究所の技術スタッフでもあるKimberly Hamad-Schifferliは話します。「異なる病気を見分けられる迅速診断法を考案したいと思いました。」
Hamad-Schifferliと、MIT医工学・科学研究所(IMES)のHermann L.F. von Helmholtz教授であるLee Gehrkeは、この新しい装置について説明した論文の上席著者です。同論文は学術誌 Lab on a Chipに掲載されました。筆頭著者はIMESの博士研究員Chun-Wan Yenで、ほかの著者には大学院生のHelena de Puig、IMESの博士研究員Justina Tam、IMES講師のJose Gomez-Marquez、客員研究員のIrene Boschが名を連ねています。
色分けされた検査法
現在、エボラを診断する唯一の方法は、エボラウイルスの遺伝物質を検出できるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの高度な技術を実施できる検査機関に、患者の血液サンプルを送ることです。これは非常に正確ですが時間がかかり、エボラやその他の熱病が流行するアフリカの一部地域では、こうした技術を利用する機会が限られています。
新しい装置は、妊娠検査薬に使われ、近年では溶連菌性咽頭炎などの細菌感染症の診断にも応用されているラテラルフロー技術を利用しています。しかしこれまでは、複数の病原体を同時に検査するため、複数色のナノ粒子を使った多重化方式を応用した例はありませんでした。
「ウエストナイル熱、デング熱、エボラなど多くの出血熱ウイルスや、アルゼンチン出血熱、ハンタウイルス感染症などの発展途上国に多い病気には、迅速診断法がまったくありません」と、新装置の開発に向けて4年前にHamad-Schifferliと共同研究を始めたGehrkeは話します。
1つの病気しか検査できない既存の紙製診断法とは異なり、新しいMITの検査ストリップは色分けされており、複数の病気を見分けることができます。そのために研究者らは、サイズに応じて異なる色を帯びる銀製の三角形ナノ粒子を使用しました。
研究者らは赤、オレンジ、緑のナノ粒子を作製し、それぞれエボラ、デング熱、黄熱を認識する抗体と結合させました。患者の血清がストリップに沿って流れると、ストライプに塗布された抗体に合致するウイルスタンパク質が捕捉され、そのナノ粒子が見えるようになります。これは肉眼で確認できます。色覚に特性のある人は、携帯電話のカメラで色を識別できます。
「患者のサンプルをストリップに通したとき、オレンジ色の帯が見えれば黄熱、赤色の帯ならエボラ、緑色の帯ならデング熱だと分かります」とHamad-Schifferliは話します。
この工程は約10分で完了するため、医療従事者は迅速にトリアージを行い、患者を隔離すべきか判断できます。これにより、病気がさらに広がるのを防ぐ助けになります。
トロント大学バイオマテリアル・生体医工学研究所の准教授Warren Chanは、診断が速いだけでなく、1本の検査ストリップで複数の病気を検出できるため、必要な患者の血液サンプル量も少なくて済む点で、この装置に感銘を受けたと話します。「ほかの人たちが取り組んでいることより一歩進んでいます」と、研究に関与していないChanは述べます。「現在世界で起きていることに深く関わる病気を対象にし、それらを同時に検出できることを示しました。」
より迅速なトリアージ
研究者らは、新しい装置をPCRなどの既存の診断技術を補完するものと位置づけています。
「電力も特別な技術もない現場で、患者がエボラに感染しているか知りたい場合、この検査なら、感染していないかもしれない人たちと同じ待合室にその患者を入れるべきではないと、すぐに判断する助けになります」と、ハーバード大学医学大学院の微生物学・免疫学教授でもあるGehrkeは話します。「公衆衛生の観点から、最初のトリアージは非常に重要です。その後、PCRなどで確認する検査を行うこともできます。」
研究者らは、エボラ流行がなお続く地域で装置の使用を始めるため、米国食品医薬品局(FDA)の承認取得を目指しています。そのため現在、遺伝子操作したウイルスタンパク質と、感染動物の血清サンプルを使って、研究室で装置を試験しています。
この種の装置は、銀ナノ粒子を別の抗体と結合させることで、他のウイルス性出血熱や感染症を検出するようカスタマイズすることもできます。
「幸いなことに、エボラの流行は収束しつつあります。それは良いことです」とGehrkeは話します。「しかし私たちが考えているのは、次に何が起きるかです。間違いなく、別のウイルス流行が起こるでしょう。スーダンウイルスかもしれませんし、別の出血熱かもしれません。次に起こる流行に備えるために必要な抗体を開発しようとしているのです。」
この研究は、米国国立アレルギー・感染症研究所の資金提供を受けました。
本記事は MIT Newsとの共同掲載です。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Anne TraftonはMIT Newsの寄稿者です。
画像:2014年12月19日、シエラレオネ東部コノ地区の町コイドゥにある赤十字施設で、医療従事者が隔離区域に入る前に防護服を着用している。

