新興技術はインドの労働力をどう変えるのか

An employee works at a solar cell production line at Jupiter Solar Power Limited (JSPL) plant in Baddi, in the northern state of Himachal Pradesh, India May 29, 2017. Picture taken May 29, 2017. REUTERS/Ajay Verma - RC152538E4A0
India will have the worlds largest workforce by 2027.Image: REUTERS/Ajay Verma
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最近発表された世界経済見通し改訂版で、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、国際通貨基金(IMF)は、インドの成長の可能性に引き続き強気の見方を示した。IMFは、インド経済が2018年に7.4%、2019年に7.8%成長し、世界で最も成長の速い主要経済国となると予測している。この順位は2017年に一時、中国に譲っていた。

2012年から2022年までのインドの成長Image: Statista

しかし、インドが長期的に成長軌道を維持するには、人口ボーナスの潜在力を生かすことが重要な一歩となる。現在、インドの人口の半数は25歳未満で、3分の2は35歳未満だ。2027年までに、インドは15歳から64歳までの年齢層で世界最大の労働力を抱えると推定されている。

しかし、技能開発と雇用される能力の向上は依然として大きな課題だ。現在、同国の労働力のうち、正式な技能訓練を受けているのはわずか18%にとどまる。2018年ワン・グローブ・フォーラムが今月初めにニューデリーで開催された際、会議組織委員会委員長であり、カナダの連邦フォーラム上級顧問を務めるダルビル・シン少佐は、次のように述べた。「私たちは、自分たちが享受していると思われる人口ボーナスという考えに常に感嘆してきました。しかし、この優位性を維持できるのは、労働力を適切に訓練できた場合に限られます。現状では、大きな隔たりがあります」。人工知能(AI)やロボット工学などの技術が既存の働き方を急速に変えるなか、この課題はさらに深刻化する一方だ。

AIを誰もが利用できるように

インドのITサービス企業テック・マヒンドラの最高戦略・マーケティング責任者、ジャグディッシュ・ミトラは、会議で、ITサービス分野でさえ既存の仕事の55%から65%がAIによってなくなる可能性が高いと指摘した。「リスキリングや再訓練に必死に取り組まなければ、大きく出遅れることになります」と同氏は述べた。ソフトウェアテストがその一例だ。従来、これは手作業で行われていた。テスターがシステムに入り込み、ソフトウェアの脆弱性を評価するためにそのソフトウェアをハッキングする。今では、バグを見つけて修正するこの作業をAIで簡単に行える。

「AIによってどのように雇用が生まれるのか、という語り方に変えることが重要だ」―ニーラジ・バルガヴァ

ミトラは、ほとんどのAIツールは使いにくく、「AIを民主化」することが急務だと指摘した。インドには多数のエンジニアがいるという強みに触れ、こう述べた。「AIを簡単に使えるようにできれば――小さな町や村に住む人々も、今日携帯電話を使っているように、AIを活用して事業を立ち上げられるようになれば――多くの新たな機会が生まれるでしょう」。

AIを誰もが利用できるようにすることを目指し、テック・マヒンドラはAT&TおよびLinux Foundationとともに、ユーザー中心のオープンソース・プラットフォーム「Acumos」を立ち上げた。「大学や短大、さらには学校の生徒にも利用できるようにしたいと考えています。人々が使えるAIソリューションのライブラリー全体をつくるのが狙いです」とミトラは述べた。

AIをはじめとする先端技術は新たな産業を生み出し、その結果「経済の構造変化」が起きると、ゾディウス・キャピタル・アドバイザーズのCEO、ニーラジ・バルガヴァは述べた。これを踏まえ、「AIによって仕事がどう失われるかではなく、どう生み出されるかという語り方に変えることが重要です」と提案した。数十年前、インドのITサービス産業が始まったばかりのころ、誰もが尋ねたのは、インドにコンピューターサイエンスの卒業生が十分いるかどうかだったと、バルガヴァは振り返った。「仕事が生まれれば、必要な技能は後からついてきます」と同氏は述べた。

バルガヴァは、歴史的にインドの教育制度は論理的思考や推論能力を重視してきたが、AI時代の新しい仕事は創造的思考に重点を置くようになると指摘した。これを受けて、マイクロソフトでAI、Azure、検索パートナーシップ担当ディレクターを務めるヴィネイ・クマールは次のように述べた。「私たちはAIに非常に強気です。定型的で反復的な単調作業の多くがAIに引き継がれ、生産性の向上に大きな影響をもたらすと考えています」。クマールは、AIが非常に良い影響を与えうる分野として教育と医療を挙げた。これらの分野で大きな課題を抱えるインドのような国では、特にその効果が期待される。たとえば教育では、生徒の学習能力に応じて教材をカスタマイズするためにAIを活用できる。また、評価や採点に利用すれば、教師は生徒と向き合い、学力と全人的な成長を支える時間をより多く確保できる。

データが原動力に

アリゾナ州立大学の准教授、ハサン・ダヴルジュは、産業時代の主要な価値は効率性と自動化であり、それを支えた主要な資源は石油だった一方、新時代の原動力となるのはデータだと指摘した。「AIは多くの仕事を奪う一方で、同じAIがブロックチェーンのようなまったく新しい技術を後押ししています」と同氏は述べた。「新時代の重要な特徴は、透明性、共有、クラウドソーシング、クラウドファンディング、分散性、非中央集権性です」。

「新時代の重要な特徴は、透明性、共有、クラウドソーシング、クラウドファンディング、分散性、非中央集権性です」―ハサン・ダヴルジュ

ダヴルジュは、人々、とりわけ女性、銀行口座を持たない人々、社会的に恵まれない人々が新技術を使いこなし、その恩恵を最大限に生かして新時代の経済に参加できるよう、訓練し、技術に慣れてもらうために「教育とメディアを再構築する」必要性を強調した。たとえばインドの農村部では、教師たちが道を示している。学校にプロジェクターやホワイトボードなどの備品を導入するため、オンラインの資金調達プラットフォームを利用しているのだ。マイクロファイナンス分野では、ブロックチェーンによって効率を高め、取引コストを下げることができる。ブロックチェーンを使ってデータを集約すれば、貸し手は、個々の借り手が複数の貸し手から過剰に借り入れないようにできる。

バンガロールを拠点とする個人間の車両シェアリング・プラットフォームDrivezyの創業者、アシュワリヤ・シンは、新たなシェアリング経済においてブロックチェーンが果たす大きな役割について、会議参加者に語った。祖先やその共同体は、必要に迫られて非常に高い信頼関係を築き、その信頼を基盤に経済を営んでいたと同氏は指摘した。社会が拡大するにつれ、その信頼は失われていった。「分散型ブロックチェーン・ネットワークは信頼を取り戻せます。シェアリングは小規模起業家を生み出し、ブロックチェーン上の小規模起業家は持続可能な社会を築けます」とシンは述べた。同社がブロックチェーン技術を採用した後、月次成長率が15%から45%に跳ね上がったことも付け加えた。

暗号資産の台頭

ワン・グローブ・フォーラムの登壇者たちは、インドが21世紀の知識経済へ移行するなかで直面する、ほかの重要課題についても議論した。その一つが暗号資産の影響だ。ブロックチェーン・ソリューション企業Hashcoveの共同創業者兼CEOであり、取引技術製品企業uTrade Solutionsの創業者でもあるクナル・ナンドワニは、暗号資産と新規コイン公開(ICO)に非常に強気の見方を示した。同氏によると、従来型企業とは異なり、ICOは投資家、従業員、消費者など、すべての利害関係者に同じ機会があり、それぞれの利害が完全に一致するコミュニティを生み出す。ICOは企業構造の本質そのものを覆すだろうとも述べた。同時にナンドワニは、現時点ではICOの大半に意義がなく、人々は慎重に選ぶ必要があると警告した。「本当に価値あるインターネット企業が登場したのは、ドットコム・バブル崩壊の後でした。ICOでも同じことが起こるでしょう」。

「ブロックチェーン上の小規模起業家は持続可能な社会を築けます」―アシュワリヤ・シン

国境を越えた決済を手がけるPayoneer Indiaのカントリーマネージャー、ロヒト・クルカルニは、ブロックチェーンや暗号資産をめぐる熱気の主な理由は現行の銀行制度の不便さにあり、従来の仕組みを変革する新技術が急務だと考えていた。「もちろんリスクはありますが、それに対処する方法を見つけなければなりません。個人や企業が世界規模で簡単に取引できるようにする必要があります」とクルカルニは述べた。

データの保護

データ管理ソフトウェア企業、IDeaS Revenue Solutions Indiaのマネージングディレクター、K.S.プラシャントによると、デジタル化が進む世界では、データの集中化が重要な課題となる。データが集中管理されると、特に少数の企業が独占した場合に悪用される危険がある一方、集中化されたデータがなければ「新技術の恩恵を十分に活用できない」とプラシャントは指摘した。データの悪用を防ぐには、誰もが役割を担う必要があるという。「成長や収益性への圧力がどれほど強くても、企業は良心に火をつける必要があります。政府は研究を妨げるべきではありませんが、同時に十分に警戒しなければなりません。そして国際機関は標準化を進める必要があります」。

アドバイザリー企業Beacon Global Strategiesのマネージングディレクター、マイケル・アレンは、データ侵害が発生した際に企業が取るべき対応をいくつか挙げた。同氏によると、企業は速やかにフォレンジック調査を開始し、顧客に迅速に通知して率直に説明しなければならない。また、データ侵害の重大性を過小評価したり、確信のない保証をしたりしてはならない。「データ侵害が起きるかどうかの問題ではありません。起きることはほぼ確実です」とアレンは述べた。「企業は、何をすべきか、何を伝えるべきかについて明確な戦略を持たなければなりません」。

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