ギニア、シエラレオネ、リベリアで拡大するエボラ流行に関する報道は、最終的な死者数についての破滅的な予測や、感染が他の地域へ広がるという凄惨な想像を世界の人々に伝えてきました。しかし、残された人々についてはほとんど語られていません。この流行は、彼らの生計にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
シエラレオネの都市マケニで オカダ (バイクタクシー)の運転手をしていた男性の話を考えてみましょう。この男性の親族がエボラ関連で相次いで亡くなった後、シエラレオネ政府は、もっともな措置として、彼を21日間隔離しました。検査で陰性と確認されて隔離を終えたとき、彼は政府が オカダの営業を禁止していたことを知りました。感染拡大を食い止めるための措置でした。
感染を免れたにもかかわらず、運転手は生計を立てられなくなりました。その後、彼はガソリンを自分に浴びせて 命を絶とうとしました。この若者や、ギニア、シエラレオネ、リベリアの2,500万人のうち多くの人々にとって、エボラは疫学上の脅威であるだけでなく、社会経済的な大惨事でもあります。
流行以前から、この3カ国はすでに世界でも最貧国に数えられていました。 人間開発指数では下位5%以内に位置していました。3カ国の人口を合わせたうち500万人が 栄養不足とされています。
その原因は長年にわたり複雑ですが、貧困の一因として、この地域が別の惨事、すなわちマノ川戦争(1991年から2001年のシエラレオネ内戦、1989年から1997年および1999年から2003年のリベリア内戦を含む)から、いまだに復興の途上にあることが挙げられます。これらの戦争は 数百万人を避難させ、インフラを破壊し、数え切れないほどの人々の生計を奪いました。
戦時中の避難がもたらした重要な影響の一つは、フリータウンなどの都市中心部が急速に拡大したことです。紛争後の状況下で、復興途上にある多くの世帯は、新たに拡大した都市市場の需要に応えることで得る収入に依存するようになりました。
たとえばシエラレオネでは、建築用木材、薪、木炭などの森林産物の 取引が盛んです 。
農村で収穫されたこれらの商品は、複雑な輸送・取引網を通じて運ばれ、何千人もの都市部の販売業者によって最終的に販売されます。これにより、国内各地の多くの人々が収入を得ています。
しかし、こうした経済ネットワークをはじめ、この地域のほとんどの経済活動が機能するには、人々の移動と公共の場での集まりが不可欠です。いずれも、隔離措置(都市全体が対象となることも多い)、幹線道路の封鎖、都市封鎖といった、必要なエボラ対策によって大きく制限されています。この地域では広範に貧困が広がり、人々がその日暮らしをしているため、すでに脆弱な世帯に深刻な影響が及んでいることは疑いありません。
問題に拍車をかけているのが、3カ国すべてで 学校が休校となっており 、来年かなり遅くまで再開されない可能性が高いことです。成人識字率が低いこの地域にとって、これは大きな懸念です。 シエラレオネは43.3%、 リベリアは42.9%、そして ギニアは25.3%です。
すでに脆弱な保健医療制度にも、さまざまな深刻な影響が及んでいます。流行前、シエラレオネでは人口600万人に対し、 医師約120人 がいると推定されていました。これは人口10万人当たり約2人の医師に相当します。比較すると、オーストラリアでは 人口10万人当たり約390人の医師がいます。
これまでに シエラレオネでは医師5人 がエボラ感染で亡くなっており(同国の医師人口のほぼ5%)、現在もさらに多くの医師がエボラに感染しています。これは同国がエボラ危機に対処する能力を損なうだけでなく、現在そして将来にわたり、保健医療部門に壊滅的な影響を与えるでしょう。エボラに感染することを恐れて医療を受けず、地域ではすでに多くの人々が 亡くなっています 。
同様に、国際スタッフの健康上のリスクを理由に、開発プログラムも中断または中止されています。最近まで順調な進展があったにもかかわらず、3カ国すべてがすでに ミレニアム開発目標の達成に苦慮していました。エボラ危機によって、目標が 達成されないことはほぼ確実になりました。
しかし結局のところ、地域の開発優先課題の達成における後退への対処は、経済活動がほぼ全面的に停止したことの差し迫った影響への対応に比べれば二次的であり、後者への対応に左右されることは明らかです。
エボラ危機は残酷な逆説を突きつけています。何千人もの感染を食い止めるために切実に必要な取り組みが、同時に、数百万人の人々に重大な、場合によっては深刻な経済的苦境をもたらしています。国際的なエボラ対応は、この危機が世界のニュースから消えた後も続ける必要があります。
本記事は、 The Conversation
との協力により掲載しています。著者:ポール・マンローは、UNSW Australiaの環境人文学講師です。グレッグ・ファン・デル・ホルストは、メルボルン大学の資源管理・地理学博士課程在籍者です。
画像:2014年10月18日、フリータウンの世界食糧計画(WFP)配給所で食料を求めて列に並ぶ女性。REUTERS/Josephus Olu-Mamma

