ASEAN共同体の正式な発足まであと数カ月となりました。しかし、真の地域統合を実現するには、まだ多くの課題が残されています。域内の旅行については、これまで議論が行われ、いくつかの取り組みも実施されてきましたが、ASEAN域内の移動を円滑にするという目標の達成には、まだほど遠い状況です。
具体的な行動が必要です。まず、ASEANへの入国と域内移動を容易にする取り組みを進めなければなりません。観光はすべてのASEAN諸国で重要な収入源と位置付けられていますが、ほとんどの国境での入国規則は、それとは逆の姿勢を示しているようです。域外からより多くの観光客を呼び込み、ASEANで消費してもらい、それによって経済成長に貢献してもらいたいのであれば、彼らの入国を容易にすべきではないでしょうか。
ASEANを観光客にとってより訪れやすい地域にする必要があります。その解決策として、欧州のシェンゲンビザに似た共通のASEANビザを導入することが考えられます。これには、円滑な国境管理のため、すべてのASEAN諸国を対象とする電子ビザ制度の構築も含めるべきです。また、加盟国のすべての国際空港に、ASEAN専用の入国審査レーンを設ける必要があります。バンコクやクアラルンプールの空港など、先行して取り組んでいる例はありますが、域内の他のすべての国際空港にも追随してもらう必要があります。
ASEANブランドを構築するため、具体的な措置を講じる必要もあります。ASEANは何を掲げ、独自の強みは何でしょうか。観光客を呼び込むうえでブランディングは中心的な役割を果たすため、ASEANの好ましいブランドを築く方法を見いださなければなりません。それに関連して、ASEANへの認知を高めることも不可欠です。まずは、ASEAN諸国の大使館や域内の学校で、国旗と並べてASEAN旗を掲げることから始められるかもしれません。あるいは、学生や卒業生に地域での就業経験を提供する、文化交流やASEAN域内のインターンシッププログラムを通じて取り組むこともできます。
地域で連携したキャンペーンを複数のチャネルで展開し、従来型メディアやソーシャルメディアも活用して、ASEANと統合の進展に対する認知を高めなければなりません。そうすれば、若者、家庭、企業にメッセージを届け、行動を促すことにもつながるでしょう。
実施を監督する役割を担う機関そのものが弱ければ、ASEANの計画を実現することは困難です。ASEAN各国政府と民間部門は、地域開発に取り組む企業による委員会や作業部会を設置するなどして、観光を含む課題と解決策に焦点を当て、ASEAN機関の強化を支援する必要があります。また、ASEAN事務局への資金を増やし、地域で最も優秀な人材を確保することなどを可能にするとともに、現在過重な負担を抱える職員体制を拡充しなければなりません。
ASEAN域内の移動を真に円滑にするには、地域のすべての関係者が協力し、切実に必要とされている改善を最も効果的に進める方法について議論し、意見を共有する必要があります。そして、今すぐ始めなければなりません。
『Travel & Tourism Competitiveness Report 2015』は こちらからご覧いただけます。
著者:Tony Fernandes、AirAsiaグループCEO
画像:2013年6月25日、マレーシア・クアラルンプールで、もやに覆われたランドマーク、ペトロナス・ツインタワーのふもとに集まる観光客。REUTERS/Bazuki Muhammad

