2015年4月と5月に中央ネパールで発生した2度の地震による人的・物的被害は甚大で、8,700人が死亡し、90,000人が避難を余儀なくされ、500,000棟を超える住宅や医療施設が破壊されました。これを受け、ネパール政府とパートナー機関は、感染症の流行が起きる可能性に備え始めています。モンスーンの到来により、流行のリスクがさらに高まるとともに、流行が起きた場合の対応にも物流上の課題が生じます。
死者や負傷者という直接的な被害に加え、人々が親族宅や国内避難民の仮設キャンプに身を寄せるなか、衛生環境と衛生設備が損なわれています。ワクチン接種率の不足も重なり、コレラ、腸チフス、麻疹などのリスクが高まっています。2010年のハイチ地震後に発生したコレラの流行は、70万人以上に影響を及ぼし、約9,000人の命を奪いました。十分な備えと対応能力がなければ、ネパールも同様の状況に直面しかねないことを示す事例です。
流行のリスクを高めている要因は2つあります。第一に、ネパールでは感染症の負担が大きく、過去5年間、ほぼ毎年コレラの流行が発生し、2009年には最大70,000人に影響しました。第二に、例年6月末に始まるモンスーンの季節は生活環境を悪化させ、病原体が繁殖しやすい環境をさらに生み出します。地震による地滑りとモンスーンが重なれば、最も被害の大きい地区の一部が孤立し、公衆衛生上の危機への対応が困難になるおそれがあります。小規模な集落では、最寄りの道路や医療施設まで何時間も、時には何日もかかることがあります。
4つの柱から成る戦略
この状況で流行の発生を防ぎ、あるいはその影響を抑えるには、4つの柱から成る戦略が必要です。
第一に、流行の可能性を早期に察知できる監視システムを構築すること。うわさを検証する方法、または流行しやすい疾患の疑い例に関するデータをほぼリアルタイムで収集・分析し、その後、検査機関で確定診断を行う方法が考えられます。
第二に、ワクチンで予防できる疾患、とりわけ麻疹を対象に、遅れている予防接種を補うキャンペーンを実施すること。
第三に、コレラの流行など、影響の大きい事態に備える計画を策定すること。この計画では、迅速な対応を可能にするため、政府とWHO、ユニセフ、人道支援機関などのパートナー間で説明責任と役割を明確にする必要があります。
第四に、特定地域へのアクセスが妨げられた場合に、迅速な初動対応を確保できるよう、地区レベルの対応能力を強化すること。
この戦略の実施はすでに始まっています。地震から2か月後には監視体制が整い、小規模な疾患の集団発生が定期的に検知・調査されています。WHOと協力し、ネパール政府は被災した14地区に40か所の保健施設から成るネットワークを設け、電話、電子メール、SMSを通じた早期警戒システムで、流行しやすい複数の疾患について毎日報告を受けています。最初の地震の直後、ネパール保健省はユニセフと協力し、地震被災地区で500,000人を超える子どもを対象に麻疹予防接種キャンペーンを実施しました。監視に関する研修や地区への支援派遣により、地域の能力が高まり、関係者が参加するコレラ対策計画も策定中です。WHOは各地区に技術スタッフも派遣し、地域の監視・対応能力を強化しています。
疾病監視の限界
流行を確定し対応する地域の能力は依然として限られており、発見が遅れる可能性もあります。早期警戒システムは主に病院を基盤としているため、病院から遠く離れた地域で発生する流行を検知できない場合があります。また、被災地区にはコレラの症例を確定できるところがありません。地区の医療施設は限られている場合があり、地震により病院や保健センターの多くが破壊され、インフラはさらに弱体化しました。医療従事者が、被災した家族や財産の世話をするために職場を離れたケースもあります。外国の医療チームが追加支援を提供しているものの、大規模な流行が起きれば、スタッフや機材の輸送が必要になります。空路でしかアクセスできない場合、輸送に時間がかかるおそれがあります。
監視ネットワークの拡大、医療施設が破壊された地域での診療再開、疾病監視と対応に関する職員研修の継続、そして適切な場所への医療物資の事前配備は、流行が起きた場合の影響を軽減する助けとなります。
この記事は、 チャタム・ハウスとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:マイケル・エデルスタインは、グローバルヘルス安全保障センターのコンサルタント・リサーチフェローです。
画像:検査対象の細菌サンプルが入った試験管。2011年3月9日、ロンドン北部の英国保健保護庁にて。ロイター/スザンヌ・プランケット

