まず、ケニアのキリフィ郡の奥地に暮らす女性、エスターになったつもりで考えてみてください。最寄りの町へ行くには、マタツ(公共ミニバス)で3時間移動しなければなりません。あなたの地域は人里離れており、道路はほとんど通行できません。マタツが最寄りの町マリンディまで運行するのは週に3日だけです。あなたには7人の子どもがおり、生活の糧と収入の両方を小さな農場に頼っています。夜は、勉強やほかの用事をするため、あなたも家族も小さなコロボイ(灯油ランプ)の明かりに頼っています。その日の灯油を買う余裕がないと、家族は暗闇の中で過ごします。それでも、よりクリーンで効率的なエネルギーを使い始め、灯油の購入に充てている収入を節約したいと考えています。エスターのような人々は、エネルギー階段の最初の段階にあり、上へ進むことを望んでいます。
エネルギー階段とは、電化へ向かう過程で、電力網につながっていない個人、家族、地域社会がたどる道のりを図式化したものです。エスターと同じく、サハラ以南のアフリカ諸国では人口の70%が電力を利用できず、代替エネルギー源を選ばざるを得ません。従来のエネルギー階段のモデルでは、薪から木炭、灯油、LPG、そして最終的に電気へと直線的に移行すると想定されていました。多くの投資家や企業が、エネルギー貧困の解消と自社製品の市場創出を同時に目指し、サハラ以南のアフリカの再生可能エネルギー分野に参入しています。こうした製品によって、アフリカの現場におけるエネルギー階段の姿は大きく変わりました。私たちが改訂したエネルギー階段では、まず家庭がバイオマスや化石燃料などの従来型エネルギー源を使い、その後、段階的に太陽光発電を取り入れます。最小のランプから始まり、家庭用システム、さらにマイクログリッドやミニグリッドへと進みます。その後に電化が実現し、利用のあり方は先進国で見られるものに近づきます。

従来、社会は所得ピラミッドで表されることが多く、この経済ピラミッドをエネルギー階段と並べて見ると有益です。基本的な考え方として、ピラミッドの底辺は人口の最大の層であり、通常、最も所得の低い人々で構成されます。アフリカ諸国では、ピラミッドの底辺(BOP)の顧客が人口の70%を超えています。この割合は、電力を利用できない人々の割合と一致します。エスターと同じく、こうしたBOPの消費者は通常、農村部に暮らし、開発面で大きなニーズを抱え、購買力が非常に低い人々です。そのため、農村部に住んでいることと購買力の低さから、商品やサービスの選択肢や入手機会が限られています。
エネルギー階段と経済ピラミッドのつながりは明らかです。BOPの消費者は、エネルギー階段の最も低い段階にある製品を購入します。よりクリーンなエネルギー製品を使うことで所得が増え、支出を節約できるようになると、エネルギー階段と所得階段の両方を上り、エネルギー階段の次の段階の製品を購入できるようになります。エネルギー階段と所得階段の最下層にいる顧客は、通常、クリーンエネルギー製品をまだ何も持っておらず、最も基本的なソーラーランプから使い始めます。
東アフリカのBOPに本当にサービスを提供している太陽光発電企業はあるのでしょうか?
東アフリカの再生可能エネルギー分野には、エスターのような顧客やピラミッドの底辺にいる人々にサービスを提供していると主張する事業者が数多くいます。理論上、BOP向けの販売は、市場規模が大きく、サービスが十分に行き届いていないため、事業として成り立つ可能性があります。しかし、この市場への販売が難しい理由は数多くあります。この記事では、そのうち4つを取り上げます。第一に、この市場はアフリカの中でも特に辺境の農村部にあり、流通が大きな課題となります。第二に、BOP層は所得が最も低く、高い流通コストを補うために必要な高価格を支払えません。第三に、多くの企業が販売する製品はBOP層のニーズに合わず、経済ピラミッドのより上位層の消費者に適しています。最後に、BOPの顧客と企業との間に残る最後の隔たりを埋めるための費用は、企業にとっても顧客にとっても高額です。こうした理由に加え、ここでは取り上げきれない多くの理由から、東アフリカのエネルギー分野でBOP向けに販売していると主張する事業者は、実際にはそうしていません。
この分野の企業の多くは農村部を対象としておらず、都市部や都市周辺部を拠点にしています。エスターの場合、最寄りのクリーンエネルギー販売店は、おそらく最寄りの町マリンディにありますが、そこは遠すぎて、頻繁に通うには費用もかかりすぎます。独自の流通網を構築している、または構築中の企業は、店舗を小さな町に置き、BOPの顧客が暮らす農村部には置いていません。こうした地域拠点はBOPの顧客に近いかもしれませんが、最後の一マイルの課題は依然として解消されません。
BOP顧客の低所得と、ニーズに合わない太陽光製品の問題は、互いに影響し合っています。アフリカの経済ピラミッドの底辺にいる消費者の生活費は、1日あたり0.90ドルから2.00ドルです。この所得では、エネルギー階段の最下段にある最も安価な太陽光製品、つまり10ドルから20ドルの基本的なソーラーランプでさえ、BOPの顧客が前払いで購入することはできません。皮肉なことに、市場にある製品の大半は小型ランプではなく、より大型で高価な家庭用システムです。つまり、製品は高すぎるだけでなく、顧客のニーズにも合っていません。市場にある製品の多くは、エネルギー階段の第3段階と第4段階に位置しています。一方、典型的なBOP顧客であるエスターは、最初の一歩すら踏み出せていません。
顧客と販売者の間にずれがあるのは明らかです。取引の両側に現金が必要です。販売者は流通のためだけでなく、顧客が製品代金を全額支払うまで顧客への販売を続けるためにも資金を必要とします。顧客が前払いできないことに対応するため、企業はPAYG(従量課金)、リース・トゥ・オウン(リース後の所有権移転)、その他の分割払いモデルを開発しました。しかしその結果、顧客が支払いを完了するまでサービスを提供するには、企業側に多額の運転資金が必要になります。顧客の返済期間は数か月から数年に及ぶ場合があります。残念ながら、こうした独自のモデルを使っても、製品が顧客のエネルギー階段と所得階段の段階を上回っているという問題は解消されません。1日あたりわずか0.40ドルの分割払いであっても、収入の大半を必需品に充てるBOP顧客には依然として高すぎます。企業は真のBOP層のもとへは出向きません。出向いた場合も、返済できない顧客に融資してしまう現実的なリスクがあります。
では、クリーンエネルギー製品をBOP層に届けるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。市場には運転資金だけでなく、企業が経済ピラミッドのより底辺まで製品を届け、BOP層にいるエスターの玄関先まで運べるようにする、新しく革新的なビジネスモデルも必要だと私たちは考えます。

