サハラ以南アフリカでHIVとともに生きる人々にとって、医療へのアクセスは深刻化する課題である。
HIVとともに生きる人々のうち150万人は、治療を提供する最寄りの医療施設まで車で1時間以上かかる場所に暮らしている。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって医療制度への負荷が高まる中、HIV治療に利用できる資源はさらに乏しくなっている。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、治療を受けるために車で1時間かけて通院しなければならない状況を想像してほしい。アフリカの農村部でHIVとともに生きる多くの患者にとって、これは現在の現実だ。
シンシナティ大学の研究者らは、サハラ以南アフリカの地図を作成し、医療センターまで徒歩または車で10分、30分、60分以内の地域に暮らす人々を示した。HIVとともに生きる150万人が、HIV治療を提供する最寄りの医療施設まで車で1時間以上かかる場所に暮らしていることが分かった。
パンデミックによるHIV治療への支障
各国政府がパンデミック対策に医療資源を振り向けようと奔走する中、アフリカ農村部でHIVとともに生きる人々の課題は深刻化している。世界ではHIV感染率が大きく改善し、死亡者数も着実に減少していた時期のことだ。2020年には、約68万人がエイズ関連疾患で死亡したと国連合同エイズ計画(UNAIDS)は報告している。2004年の190万人と比べて減少している。さらに、新規HIV感染者数は1997年のピーク以降52%減少した。
混乱が続く中で闘いを続けるには、サハラ以南アフリカの医療が行き届いていない地域で医療へのアクセスを拡大することが、HIV対策の強化に不可欠だとシンシナティ大学の研究者らは強調した。
学術誌『PLOS Global Public Health』に掲載された地図によると、対象となった17カ国では、HIVとともに生きる人々の約半数が医療へのアクセスが限られた地域に暮らしている。スーダンとモーリタニアでは、住民の90%を超える人々が治療を受けるために車で1時間以上かけて通院している。
さらに、西・中央アフリカでは15歳以上のHIV陽性者の42%が最新の抗レトロウイルス療法を受けていない。東・南部アフリカではこの割合は28%である。
移動式医療ユニットが解決策の一つ
「アフリカでは、医療関連資源が限られているため、HIVとともに生きる多くの人々が治療やケアを受けられず、特に最新の抗レトロウイルス療法を利用できていません」と、シンシナティ大学(UC)芸術科学部の博士課程学生で、研究の筆頭著者であるハナ・キム氏は述べる。
キム氏は、アフリカの農村部では交通手段が容易に利用できず、嵐による被害で道路や橋が寸断されることもあると指摘した。一方、一部の農村地域では移動式医療によってこの不足を補っているという。「マラウイや南アフリカなど、アフリカの一部の国ではすでにこの戦略が成果を上げています」と同氏は付け加える。
近くに医療施設があることは、HIV治療の成功を測る重要な指標だと、共著者でシンシナティ大学(UC)医療地理・疾病モデリング研究室のディレクター兼准教授であるディエゴ・クアドロス氏は述べる。「ウイルス量を抑制することは非常に重要です。ウイルス量が抑制されているHIV陽性者は健康であり、感染性もなく、したがって病気をうつすこともありません。」
限界に追い込まれる医療制度
最近、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の事務局長は、HIV感染者が増加していると警告した。パンデミックによる医療制度への過大な負荷が、西・中央アフリカでの増加につながっているという。
シンシナティ大学の研究者らも同じ点を指摘し、HIVとともに生きる人々は新型コロナウイルス感染症にかかるリスクが高いと強調する。免疫力が低下しているうえ、医療制度を利用することも難しいため、一般の人々より重い症状に苦しむことになる。
「アフリカでは、この1年間にHIVに関連する健康状態が悪化したと考えられます」とクアドロス氏は付け加える。
さらに、HIV治療薬への薬剤耐性が高まっていると、世界保健機関(WHO)の最近の報告書は指摘している。
世界的な健康課題に取り組むため、世界経済フォーラムは感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)を立ち上げた。政府、企業、医療、学術界、市民社会の専門家を結集し、新興感染症に対するワクチンの開発を加速させる。連合は、感染症の流行時にこれらのワクチンを利用できるようにすることも目指している。

