欧州が世界のイノベーションをリードするための4つの方法

The hand of humanoid robot AILA (artificial intelligence lightweight android) operates a switchboard during a demonstration by the German research centre for artificial intelligence at the CeBit computer fair in Hanover March, 5, 2013
Europe is lagging behind the US and China when it comes to digital technology. It's time to switch things upImage: REUTERS/Fabrizio Bensch
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欧州の経済成長に減速の兆しが見られる今、デジタル化と人工知能(AI)技術は、生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。欧州企業が、大陸の現在の強みと世界のデジタル技術における相対的な位置づけに沿ってAIを開発・普及させれば、欧州の経済生産は2030年までに2.7兆ユーロ増加する可能性があると、マッキンゼー・アンド・カンパニーの近日公表予定の報告書は推計しています。

AI導入における米国との差を縮めれば、2030年までに欧州のGDPはさらに9,000億ユーロ増え、合計で約3.6兆ユーロに達する可能性があります。デジタル化が超競争とスーパースター企業を生み出す世界では、時間を無駄にできません。しかし現状、欧州は米国にも中国にも後れを取っています。追いつく最善の方法は、イノベーションの新たな欧州モデルを構築し、規模を拡大することです。

最近の研究で、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは、欧州が米国のデジタル分野の潜在力の3分の2しか取り込めておらず、その差は2016年以降変わっていないことを明らかにしました。主な原因は、技術の普及とデジタル技術の利用の水準が低いことです。EUの公的資金プログラムによる大規模な刺激策にもかかわらず、欧州の研究開発(R&D)支出総額はGDPの約2%で停滞しています。民間の情報通信技術(ICT)投資も同様です。

例えば2016年、AI分野のベンチャーキャピタル投資と企業投資に占める欧州の割合はわずか11%で、米国の50%に対し、残りの39%の大半は中国に向かいました。それ以降、この配分はさらに中国寄りになり、欧州は停滞している可能性があります。技術導入の初期段階では欧州に投資資金が不足しているとよく言われますが、デジタルプラットフォーム、データの利用可能性とアクセス、そして各業界のエンジニアリング技術へのデジタルイノベーションの統合など、より広い範囲にわたる分断や、未成熟な技術エコシステムにも対処しなければなりません。

欧州には、発展の土台となる強みも数多くあります。スタートアップの活気は高まっており、時価総額10億ドル未満のテクノロジー企業のIPO件数は、過去5年間で120%増加しました。欧州は価値で見れば最大のデジタル単一市場である可能性があり、研究者数では最大です。新技術の統合では先行していないものの、米国に近い水準を保っています。スマートロボット工学や、新たな複雑な製造サプライチェーンと生産チェーンを形作り始める技術では、欧州がリードしています。

欧州はどうすれば追いつき、さらには再びリードできるでしょうか。ベルリン、パリ、アムステルダムなどの都市がAIハブとして台頭する中、欧州はAI人材の流動性を活用できます。同様に、欧州連合(EU)の野心的な「ホライズン2020」プログラムや、ドイツ、フランス、英国など各国が進めるデジタルイノベーションの立ち上げや、技術分野別戦略にもとづいて取り組みを進められます。デジタル化とAIの規模不足に対処し、新たなイノベーションモデルを構築するために、欧州には4つの方法があると考えます。

1. 産業資産を活用する:戦略的な欧州産業向けにデジタルプラットフォームと技術に資金を投じる

確立された企業の大きな基盤と、成功を収めた中小企業のネットワークを擁する欧州は、デジタル化の力を存分に取り込むため目覚めるべき眠れる巨人のようです。デジタル技術の普及と利用において欧州は遅れ、米国の約3分の2の水準にとどまっています。

欧州は既存の資産を活用し、各国の産業戦略に資金を投じて、大規模なデジタル化と統合を進められます。例えば、業界や企業を越えた連携を促すデジタルプラットフォームを通じて取り組むことができます。対象としては、基礎・先端製造業、製薬、医療、卸売業など、大きな可能性を持つ中核産業が考えられます。

2. データの流れを変える:データアクセスと信頼のガバナンスで主導権を握る

欧州企業が構築してきたデータリポジトリ、プラットフォーム、顧客ネットワークは、欧州以外の企業に比べて規模が小さいものです。世界規模の大手プラットフォームが、産業の境界やバリューチェーン、地域を越えて関係者とデータを結びつけ始めたいま、その動きによって欧州企業が競争上不利な立場に置かれる可能性があります。

欧州は、政府が保有する膨大な非個人データや匿名化データを研究向けに公開すると同時に、より多くの企業がデータにアクセスできるようにしながら、市民が自らのデータをより細かく管理できる新たなガバナンス規則を設けられます。透明性とサイバーセキュリティは、市民にとって重要な懸念事項になっています。欧州は、どのデータがいつ共有されるかを明らかにし、市民がデータセットへのアクセス権を変更できる、安全なプラットフォームを推進できます。

3. 人材を強化する:デジタルスキルと多様性

で競争するGoogle(Alphabet)、Amazon、Facebook、Microsoft、Netflix、Appleなど、世界のインターネット界を代表する巨大企業は、知識、スキル、起業家精神に富む文化といった無形資産に加え、データ、プラットフォーム、研究開発(R&D)や合併・買収(M&A)に投じる資本を前例のない規模で活用し、革新的な創出と導入を促進しています。これらの企業は合わせて、2011年から2017年に欧州で60件を超える買収を実施し、そのうち10件は2017年だけで行いました。市場平均を大幅に上回る給与を支払うことができ、例えばロンドンのソフトウェアエンジニアには市場平均の1.5倍を支払っています。一部の企業は、M&Aを利用して優秀な人材を採用しており

、1人あたり通常500万~1,000万ドルを支払っています。

欧州は強固な教育制度をさらに発展させるとともに、多様性と生活の質という比較優位を活かし、報酬の選択肢を改善することで、海外人材を引きつけられます。既存の人材プールを活用するため、テクノロジー分野や起業における女性人材の活躍を後押しし、新技術を活用して人々のスキル向上や再習得を促すこともできます。

4. 大規模な需要を創出する:調達と標準化で公共部門のリーダーシップを活用する

欧州の大規模な公共部門は、イノベーションの推進役ではなく阻害要因と見なされることがよくあります。しかし、革新的な技術の導入で中心的な役割を果たすことができます。欧州の公共サービスと製品に対する公共調達額は、年間GDPの14%に相当し、約2兆ユーロに上ります。政府調達は、商業市場が成立するずっと前から大規模で安定した需要を生み出し、革新的な企業に提案依頼への入札を促せます。また、需要を拡大するため、クラウドコンピューティングやブロックチェーンなどのデジタル技術に大規模な投資を促すこともできます。

欧州は公共調達をイノベーションの推進力として最大限活用し、公共サービス向けの共通デジタル政府標準を確立することで、政府技術におけるさらなるイノベーションを可能にすべきです。

欧州のイノベーションに向けた新モデル――言葉から行動へ

この4つの道筋に加え、欧州のイノベーション・エコシステムの基盤となる要素にも取り組む必要があります。これらを合わせて、新たな欧州のイノベーションモデルを形作ります。

イノベーションの新モデルを打ち立てる機運が高まっています。新たな欧州委員会は、これまでとは大きく異なる姿になり得る欧州連合(EU)の新たな課題を設定します。言葉から行動へ移すため、2019年に次の3つの具体的な取り組みを開始できます。

- コーチングとメンタリングを通じて人材の多様性を高める、女性起業家ネットワーク

- 公共部門のデジタル化、標準化、データアクセスを推進する、欧州向け第4次産業革命センター

- 投資規模を拡大するための、イノベーションに向けた欧州ソブリン・ウェルス・ファンド。

#InnovateEuropeのハッシュタグを使って、世界のイノベーションにおける欧州の役割を形作る議論に、ぜひオンラインでご参加ください。報告書『Innovate Europe: Competing for Global Innovation Leadership(イノベート・ヨーロッパ:世界のイノベーションをリードするための競争)』は、こちらからご覧いただけます。

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