事実上のドル一極――国際通貨システムの現状

事実上のドル一極――国際通貨システムの現状
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大危機は、国際通貨システムの極めて脆弱な実態を浮き彫りにした。危機の震源は先進国市場の金融システムであったが、この危機は否定しがたい二つの現実を明らかにした。

第一に、世界の金融システムの相互連関性が、金融ショックの実体経済への波及を加速させるという点である。第二に、債務国と債権国の間の調整プロセスにおける非対称性、世界的な流動性供給、金融の行き過ぎ、不安定化をもたらす資本フロー、自己保険を目的とした外貨準備の蓄積といった、システムが長年抱えてきた脆弱性が、はるかに明白になったという点である。

国際通貨システムへの影響として、主流だった見方のように複数通貨体制へ向かうのではなく、世界は「事実上のドル一極(dollar by default)」という実質的な取り決めに落ち着きつつある。これは主に、ユーロが危機にさらされ、円は日本の財政状況によって信認を損ない、人民元の役割は交換性の欠如と中国指導部の漸進的な姿勢によって制約されているためである。

世界各地域の成長の非対称性といった国際的な不均衡はさらに長期にわたり続く可能性が高く、世界的な需要の崩壊を招くことなく国際的な不均衡を調整できる仕組みが切実に求められている。しかし、そのような調整プロセスは現在存在しない。

危機にもかかわらず、米国は依然として構造的な強みが最も大きい世界経済である。しかしその総需要の基盤は、数年を要しうる家計のデレバレッジ、減税延長がもたらす「財政の足かせ」、とりわけ中国の為替管理による輸出の伸びの鈍化、そして低水準の産業投資によって損なわれている。

それでも、米国の状況は欧州と比べれば実に単純に見える。欧州では家計債務はさほど問題ではないかもしれないが、危機によって明らかになった通貨同盟の脆弱な制度設計と、公的債務と銀行の資本不足との悪循環的な相互関係が、極めて大きな課題を生み出している。

欧州の銀行はギリシャ債務の大幅な減免(ヘアカット)を吸収できるものの、より大きな経済への波及を封じ込めることは想定以上に難しかった。その結果、欧州連合(EU)の小さな経済の一つであるギリシャの資金調達問題として始まったものが、いまや通貨システム全体を脅かす危機となっている。

ユーロが存続するには、ユーロ共同債の発行を支え、欧州中央銀行(ECB)が各国政府の最後の貸し手として機能するような財政同盟が根本的に必要であることは、誰もが知っている。しかし、現在の欧州の諸機関がそのような抜本的な決定を下せるようには設計されていないことも、誰もが認めている。また、豊かな国々も、それを実現するために必要な改革の導入に熱心ではない。

要するに、市場は往々にして過剰反応するのに対し、欧州各国政府は一貫して後手に回ってきた。その結果、欧州は政治的不透明感、財政引き締め、信用収縮、低成長という将来を覚悟せざるを得ない。金融調整と構造改革を見事に両立させたラテンアメリカの経験は、欧州の指導者が前進の道を探るうえで大いに参考になるかもしれない。

本記事は2012年6月25日にBNAmericas.comに掲載されたものです。

ギジェルモ・オルティス氏は、 世界経済フォーラムの国際通貨システムに関するグローバル・アジェンダ・カウンシルの議長です。世界経済フォーラムの新しいシナリオ報告書、 Euro, Dollar, Yuan Uncertainties: Scenarios on the Future of the International Monetary Systemもあわせてご覧ください。

画像:米ドル、ユーロ、人民元。 REUTERS/Kacper Pempel

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