過去10年間、中国企業は国内の消費者市場で外国企業から着実に市場シェアを奪ってきました。数字がすべてを物語っています。日用消費財(FMCG)の現地企業のシェアは2012年から2016年にかけて66%から72%に上昇し、国内自動車メーカーの市場シェアは31%から39%に、携帯電話・スマートフォン企業のシェアは同じ期間に42%から66%に上昇しました(下の図を参照)。
国内企業のこうした大幅なシェア拡大の背景には何があるのでしょうか。まず、中国企業はイノベーションの加速と市場投入までの時間短縮で大きく前進しました。中国は2011年に特許出願件数で米国を抜き、それ以来、特許出願で世界をリードし続けています。
世界経済フォーラムの『急成長する消費者市場における消費の未来:中国』インサイトレポートによると、中国は、ソーシャル電子商取引プラットフォームのWeChat、オフラインからオンラインへとつなぐ(O2O)サービス、急成長するシェアリングエコノミーのアプリケーションなど、テクノロジーの活用法や新たなビジネスモデルの開発を先導しています。中国企業は人工知能、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学などの新興技術に積極的に投資しています。
レガシーシステムが少ないことも、中国がこれほど速いペースで進展する一因です。例えば、中国ではクレジットカードが普及していなかったため、現金もカードも使わない決済手段の開発が進みました。

もう一つの大きな要因は、中国企業が顧客を中心に据え、「十分に満足できる」価格帯に注力する一方、多くのカテゴリーで高級化、つまりより高価な高級品への移行にも取り組んでいることです。
あらゆる製品カテゴリーの低価格帯と高価格帯の間にあるのが、「十分に満足できる」価格帯です。手頃な価格で、十分な信頼性を備えた製品を提供します。この価格帯は、価格と品質を同等に重視する幅広い中国の消費者に支持されています。ここに注力する現地企業は、現地の消費者をより深く理解し、二つの重要な要素である価格と品質の適切なバランスを備えた製品やサービスを提供しています。
例えば、現地自動車メーカーの成功は、同等の多国籍企業(MNC)の製品より30%安い価格で販売されるSUVラインの成功によるところが大きいといえます。中国の要求水準が高いスマートフォン市場をリードするVivo、Oppo、Huaweiについても同じことが言えます。「十分に満足できる」製品を優先することで、中国の有力企業は事業規模を拡大し、外国の競合企業に対抗してきました。
中国企業は優秀な人材を引きつける力も高めてきました。国内企業にとって人材獲得競争は厳しいものでしたが、転換点に達したようです。今では、外国企業から中国企業へ移るビジネスリーダーの数が、その逆を上回っています。
LinkedInの会員25,000人を対象とした調査によると、過去5年間に外国企業から中国企業へ移ったビジネスリーダーの割合は31%に達した一方、現地企業から外国企業へ移った人は約10%にとどまりました。多くの国内企業が外国の多国籍企業で経験を積んだリーダーを求めるのは、MNCの研修プログラムが優れた技術力とマネジメント能力を育成すると評価されているためです。
同時に、成功している現地企業は、マネージャーにより大きな権限と裁量を与えるようになっています。現地企業は、戦略的な変革の機会を提供するだけでなく、キャリア形成の選択肢も広げるため、より魅力的な雇用先となっています。しかし、大手中国企業が躍進する一方、小規模な中国企業にとって人材の獲得は依然として課題です。中国で今後10年間に成功を目指す企業にとって、適切な人材の獲得と定着は引き続き重要な優先課題となるでしょう。
最後に、そしておそらく国内企業が大きくシェアを伸ばした最も重要な理由として、中国の上位100社の非国有企業の実に90%は、今も創業者が経営を主導しています(創業者本人またはその二代目が率いています)。その多くは、一国に焦点を絞る明確な戦略、ファミリー所有、そして変化する消費者のニーズに素早く対応できる機敏な組織の利点を組み合わせています。そのため、経営コンサルティング会社のBain & Companyが「創業者精神」と呼ぶ原則が、組織と企業文化に根付いています。
こうした原則には、コストと成果の実現を重視するオーナーシップ意識、競合より速く市場の変化に対応できる反骨精神、顧客と接する従業員に権限を与える現場重視、そして迅速な意思決定を可能にする比較的フラットな組織構造が含まれます。
その結果、中国市場における中国企業と多国籍企業の競争は、多くのグローバル企業を悩ませる階層的な組織や遅い意思決定プロセスと、こうした原則との争いという側面を持っています。
ここまで述べた点から、外国企業は中国でどうすれば巻き返せるのかという問いが浮かびます。私たちからの助言は次のとおりです。
1.まず中国を第二の本国市場として捉え、中国がすでに多くのイノベーションで世界をリードしていると認識しましょう。そのためには粘り強さと忍耐が必要ですが、取り組む価値があります。中国は世界で最も有望な消費市場であり、これからもそうあり続けるからです。今後10年間、中国の消費は平均6%成長すると予測され、その次の10年間でほぼ倍増し、2016年の29兆人民元(4.3兆ドル)から2027年には56兆人民元(8.2兆ドル)に達する見込みです。
2. 必要に応じてビジネスモデルを何度でも変えられるだけの機敏さと柔軟性を備えましょう。そのためには、現地チームにより大きな権限を与え、起業家のように行動できるようにする必要があります。
3. 事業と企業文化に「創業者精神」を根付かせるため、迅速に行動しましょう。
4. 短期的な利益だけを追うのではなく、長期的な展望を持って中国社会に溶け込みましょう。現地化を進め、中国企業として行動するには、現地で成功している企業との提携も考えられます。そうすることで、外国企業と中国企業は中国国内でも、その先でも共に成長できます。
このブログは、世界経済フォーラムの最新レポート『急成長する消費者市場における消費の未来:中国』をもとにしています

