世界は、グローバル化への反発に直面している。その反発は一部の先進国から生じており、同時に世界の貿易体制は、その存続にとってかつてない最大の脅威にさらされている。
米中包括経済対話や、オーストラリアとペルーによる自由貿易交渉の開始など、いくつかの協定や合意を促進する重要な取り組みが行われてきた。
より深い地域統合を推進する取り組みもあり、たとえば米州開発銀行(IDB)の調査は、ラテンアメリカ・カリブ海自由貿易地域の実現可能性を検討している。
しかし、長年にわたる他の協定や交渉は危機にさらされている。TPPやNAFTAがその例だ。
世界の貿易体制の行方が不透明ななか、貿易円滑化改革は世界貿易を加速させる機会となる。
マルチステークホルダーのアプローチ
貿易円滑化とは、取引コストを削減し、効率性の標準化を図る政策と定義できる。
こうした改革を効果的に実施するには、世界各国の政府と民間部門の双方が関与する必要があることを踏まえ、世界経済フォーラムは他の関係者とともに、貿易円滑化のためのグローバル・アライアンスを設立した。
同アライアンスは、実行可能なデータに基づいて測定される貿易円滑化の取り組みを支援することを目指している。旗艦出版物である『グローバル・イネーブリング・トレード・レポート』を通じて、エビデンスに基づく対話と政策立案の促進にも取り組んでいる。
『グローバル・イネーブリング・トレード・レポート』は2008年から刊行されており、貿易円滑化をイネーブリング・トレード指数(ETI)を用いて測定する。ETIは、各経済圏が市場アクセス政策、国境関連機関、インフラ、さらに幅広いビジネス政策や規制政策を整備しているかを評価する。これらは、貨物が国境を越えて目的地に届くまでの円滑な流れを促す。
下の図はETIの概念的枠組みを示している。貿易を可能にする57の指標を集約して総合指標を作成し、4つのサブ指数と7つの柱に配分している。指標には、さまざまな国際機関のデータベースの情報に加え、世界経済フォーラムが141の経済圏で実施したエグゼクティブ意識調査に由来する指標も含まれる。

最新のETIデータを用いた最近の研究によると、ETIの改善は二国間貿易の流れの増加と関連している。
分析では国際貿易の重力モデルを用いて、ETIのサブ指数が国際貿易を左右する要因をどの程度捉えているかも検討した。
推計結果によると、ETIで輸送インフラとサービスの利用可能性および質によって測定されるインフラが、国際貿易を左右する最大の要因である。
下の図は、インフラの改善が二国間貿易の流れのより大きな増加と関連していることを示す。貿易を左右する主要因としてのインフラの重要性は、中国の「一帯一路」という貿易政策のアプローチと、輸送の連結性が高まる重要性を反映していると考えられる。

中国は、競争力を高めるうえでインフラが重要な役割を果たすことを理解している。
このことは、歴史的なシルクロードを基盤に国際貿易のルートを再構築する、野心的な「一帯一路」戦略に表れている。
多様なプロジェクトへの投資(鉄道、港湾、道路、ガスパイプラインなど)はすでに1兆ドルを超えており、約60カ国を網羅する陸上・海上輸送の改善が見込まれている。これらの国々は世界のGDPの30%、世界貿易の35%を占める。
コストの削減
中国は「一帯一路」構想を進めることで、19世紀に米国が貿易コストを削減した道をたどろうとしている。
構想の範囲と課題に関する研究で、ローレンス氏とトゥーヒー氏は、技術の進歩と鉄道への投資によって輸送コストが大幅に削減され、英国のトウモロコシ関税の引き下げと相まって、米国経済が開放され、物価が下がったと論じている。
著者らは、中国の構想が成功し、参加者全員に利益をもたらすには、中国および世界各地の輸出市場へのアクセスが伴わなければならないと指摘する。
貿易障壁の削減と競争力の向上という主目的と同じく、この構想がもたらす副次的な影響も重要である。
中国のソフトパワーは、同様の発展を目指す新興市場で高まる可能性がある。国際的な研究協力も引き続き増加傾向をたどり、ロシア、ポーランド、サウジアラビア、シンガポールなどの国々を結びつけるだろう。
最後に、「一帯一路」構想が適切に実施されれば、保護主義に反論しながら包摂的成長を促進する可能性がある。

