中国の小売革命、西へ進出

Employees work at a JD.com logistic centre in Langfang, Hebei province, November 10, 2015.
First China, now the world: China's online retail giants are growing at an unprecedented speed.Image: REUTERS/Jason Lee
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中国最大のオンライン小売グループであるアリババ・グループとJD.comは、米国や欧州ではまだ見られない小売帝国を築いている。ここ数年、コンビニエンスストアから大型ハイパーマーケットまで、従来型小売企業の株式を取得したり、提携を結んだりしてきたこの二大企業は、今や中国のモバイル決済を支配している。また、新しい形態の小売を急速に拡大している。顧客は店内を歩きながら、スマートフォンで商品情報を調べたり、代金を支払ったりできる。

過去20年間、デジタルショッピングを先導してきたのはアマゾンだと広く見られているが、同時期に上海でも小売イノベーションの第二の中心地が育ってきた。中国の小売企業も21世紀の買い物のルールを形作っていることが最もはっきり表れているのは、食品分野だ。オンラインで食料品を買う米国人はわずか3%なのに対し、中国人はほぼ10%に上り、その半数は食料品をオンラインのみで購入している。中国の食料品小売売上高の約10分の1を占めるJD.comとアリババは、オンラインやスーパーマーケットでの購入データを集め、商品需要の予測や供給・配送の効率的な調整を可能にする、情報を基盤としたネットワークへと前例のない速さで変貌している。顧客がどのウェブサイトを好み、どのアプリを使い、ソーシャルメディアで誰をフォローしているかも把握している。

この驚異的な成長の背景には、中国の従来型スーパーマーケットが比較的未発達で、急拡大する中間層の需要に追いつけなくなっていたことがある。中国ではインターネットへのアクセスが急増し、2006年には人口のわずか11%だった利用者が、2017年には半数を超えたことで、電子商取引が自然な代替手段となった。富裕層が暮らす都市の人口密度が高いため、宅配の費用も比較的安い。

今、この二大グループは新たに得た資金力と技術力を生かし、米国や欧州に進出しようとしている。アリババは今後3年間で、世界各地の研究拠点に150億ドルを投資する計画で、欧州の配送拠点の候補地も検討してきた。株主のウォルマート・ストアーズと戦略提携を結ぶJD.comは、10年後には利益の半分を中国以外から得ることを目指している。

中国の小売大手が国内の買い物をどのように再定義し、近く海外でも同様の変化をもたらす可能性があるのか、いくつか見てみよう。

オムニチャネル型の食料品販売

アリババとJD.comは、O2O(オンライン・ツー・オフライン)と呼ばれる新しい買い物の形を先駆けている。これは、世界の大手スーパーマーケットの多くが提供する実店舗とオンラインの並行サービスを超えるものだ。

アマゾンの新しいコンセプト店舗「Amazon Go」は米国版O2Oだが、中国の小売企業はより速いペースで規模を拡大している。今年4月までに47店舗となったアリババの盒馬鮮生(Hema)では、QRコードを読み取るとスマートフォンに商品情報が表示され、商品の選択や支払いも同じ端末でできる。購入品を持ち帰りたくない場合は配達を依頼でき、30分以内の配送が保証される。一方で、顧客は生鮮食品を見て味わうこともでき、シェフがその場で魚介類を調理してくれる。

一部の店舗には、未来的な情報端末が設置されている。ライバルのJD.comが立ち上げた7Freshは、スマートフォンで購入する方法に加え、顔認証技術による自動決済を提供している。さらに、そのデータを使って、カプチーノの泡立てたミルクの上に、チョコレートパウダーで買い物客の顔を描くこともできる。未来的な買い物体験には「魔法の鏡」も含まれる。顧客が野菜を手に取るとそれを感知し、栄養成分や産地などの情報を表示する。ロボット式ショッピングカートは障害物を避けながら、店内で買い物客についていく。

こうした取り組みは食品以外にも広がっている。11月に中国で開催される「独身の日」ショッピングフェスティバルに向けて、アリババは、買い物客が口紅を仮想で試せる化粧品ブティックを設置し、オンライン注文用のQRコードを備えた、ショールームを兼ねるO2O家具店も展開した。

実店舗

規模を拡大することで、JD.comとアリババはサプライチェーンや配送サービスを最適化し、日々の数百万件の取引からデータを収集できるようになる。こうして得た力を武器に、両社は従来型の実店舗小売に進出し、デジタル物流と全国的に知名度のあるブランドでその事業を強化している。アリババは最近、オンライン食料品サービス「Tmall Supermarket」の商品をスーパーマーケットチェーンのRT-Martに導入し、近隣の顧客への宅配も支援している。JD.comはウォルマートの中国法人にオンラインサービス基盤を提供し、ウォルマート商品の一部については1時間配送も行っている。

2017年初め以降、両社の提携は、中国にある700万を超える家族経営の店舗の一部を、TmallまたはJD.com傘下のコンビニエンスストア・フランチャイズに転換する取り組みも進めてきた。店舗には知名度の高いブランドの商品が並び、簡単に会計できるモバイル決済システムが導入される。店長はスマートフォンのアプリから商品を補充できる。商品は、これまで小規模な商店が頼ってきた旧来の多層的な流通網を通すより、はるかに速く届く。

モバイル決済

これらの店舗では、携帯電話による決済の割合が高まっており、この分野でも二大企業が市場を支配している。両社を合わせると、中国のモバイル決済の92%を処理している。アリババの決済システムはAlipayと呼ばれ、ライバルのJD.comは、中国最大のソーシャルアプリWeChatの運営元であるテンセントと提携している。テンセントはWeChat Payを所有する。中国では、スーパーマーケットでの購入の35%ですでに携帯電話決済が使われている。持ち帰りの食事などを個人経営の店で買う場合でさえ、取引データは消費者が何を、どこで、いつ購入するかを知る貴重な情報源となる。電子商取引大手はこの知識を活用し、より魅力的な商品や販売形態を開発できる。こうした専門知識によって、さらに多くの小売企業が両社との提携に加わるだろう。

今後の展望

アリババとJD.comの小売帝国は、今や世界展開に向けた準備を進めている。米国と欧州で数年前からオンライン販売を行っているアリババは、欧州に配送センターを設置する計画だ。また、オンライン販売からクラウドコンピューティング事業まで幅広く支えるため、米国にあるデータセンターに加え、欧州とアジアにもデータセンターを設置したい考えだ。アジアでは、アリババは東南アジアの電子商取引企業Lazada Groupへの投資を倍増し、40億ドルとすると発表し、自社の幹部の一人を同社の経営に充てることも明らかにした。

JD.comは今年、オンライン販売を開始して米国と欧州でアリババやアマゾンに挑む。米国では当初、ウォルマートの物流支援を活用する。6月には、グーグルが同社の株式1%を5億5,000万ドルで取得すると発表した。この取引により、JD.comの商品はGoogle Shoppingを通じて米国と欧州で購入できるようになる。2017年には、JD.comはタイの小売企業Central Groupと、5億ドル規模の電子商取引・金融テクノロジー合弁事業を発表した。また、ベトナムの電子商取引プラットフォームTikiに出資し、インドネシアでは自社の電子商取引プラットフォームを立ち上げた。

小売企業が国内市場の外へ進出するのは非常に難しく、中国の小売帝国も同国特有の小売業の発展を基盤としている。しかし、アリババとJD.comは中国で大規模な技術基盤を築いており、オンライン食料品販売を軌道に乗せる手段も含め、規模を確立しているため、比較的容易に進出できる可能性がある。

さらに、アリババとJD.comには、事業の不足部分を補う企業を買収できるだけの資金力がある。アリババの時価総額は約5,000億ドル、JD.comの企業価値も約600億ドルに上る。両社は過去4年間の買収・提携の波を通じて、中国で数多くの提携関係を築いてきた。アリババは直近2年間だけで、小売分野に総額210億ドルの戦略投資を行っている。大規模な買収攻勢の次の段階は、中国国外で展開されるかもしれない。

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