今年初め、ボツワナ共和国の外務大臣ペロノミ・ベンソン=モイトイ博士は、呼びかけた。アフリカに「イノベーション革命」を起こそうと。
「アフリカのイノベーターは、イノベーションへの膨大なニーズがある、新たな事業機会の時代に生きています」と同氏は述べ、世界で最も人口増加の速いアフリカには、巨大な人的資本の潜在力があると付け加えた。
しかし同氏は、イノベーションを促進するための多額の研究開発費が障壁となり、これまでイノベーションは豊かな国々の特権となりがちだったとも指摘した。
私は、アフリカを活気にあふれ、急速に発展する、多くの機会に満ちた大陸と捉えている。もちろん、他の大陸と同様、アフリカにも独自の課題がある。
富の不平等
アフリカのイノベーターは、研究開発費だけでなく、ほかの困難にも直面している。
人口の大半が暮らす都市部と農村部との間で、富の分配には依然として偏りがある。教育制度への投資が必要であり、とりわけ重要なSTEM分野ではその必要性が高い。また、大陸には50を超える国があり、経済、法制度、政治の成熟度も国ごとに異なるため、非常に分断されている。アフリカ域内の貿易と商取引がGDPに占める割合はわずか15%にとどまる。
インフラ整備も重要な重点分野とすべきだ。インフラ整備は経済成長と正の相関があることが示されている。
しかし、サハラ以南のアフリカでは、インフラの不足によって経済成長率が毎年2パーセントポイント押し下げられていると推定される。
「アフリカ・インフラ国別診断」調査は、サハラ以南のアフリカのインフラ需要を年間930億ドル強と推定したが、その半分にも満たない額しか資金が確保されておらず、500億ドルを超える資金不足を埋める必要がある。
また、サハラ以南のアフリカで計画されたインフラ事業の72%が、完了に至らないことも懸念される。インフラ整備の青写真を策定し、商業的に成立しやすい事業を増やし、契約管理を強化するとともに、プロジェクト管理を改善する必要がある。
インフラ不足の影響は現実のものだ。アフリカの起業家にとって、物流は大きな課題になり得る。道路の状態が悪く、信頼できる輸送業者も不足しているため、大都市圏以外への注文を履行するのは難しい。

国境検問所での通関障壁は貿易をさらに妨げ、為替規制によって国境を越えた資金移動も困難になっている。
では、何ができるだろうか。
テクノロジーが金融包摂を促す方法
しかし、こうした課題がある一方で、ボツワナの大臣が呼びかけたイノベーション革命は、実現がそう遠くないことを示す兆しも現れている。
同氏自身が指摘したように、スタートアップの数が最も多い上位10カ国のうち、5カ国がアフリカにある。
さまざまな国でテックハブも生まれており、特にガーナ、ケニア、ナイジェリア、モロッコ、セネガル、南アフリカで存在感が大きい。
これらの国の多くが、当社の最新の「アフリカの魅力度」調査で上位にランクインした理由の一端は、ここにあるのだろう。同調査では、2016年にエジプト、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカが、アフリカ大陸全体の対内直接投資案件の58%を集めたことが分かった。
スマートフォンと電子商取引
もう一つの重要な進展は、アフリカ全域でスマートフォンの普及が進んだことだ。GSMAが発表した報告書によると、2014年から2016年にかけて、大陸全体のスマートフォン接続数は2倍の2億2,600万件となり、スマートフォンの価格は2012年の平均230ドルから2015年には160ドルに下がった。
2021年までに、さらに5億件のスマートフォン接続が加わると予想され、地域内の総接続数に占める普及率は半数を超える見込みだ。特に電子商取引への影響は計り知れない。
金融サービス分野では、イノベーターが携帯電話の普及と煩雑な旧来型システムの不在を生かし、金融包摂を支える新たなソリューションを生み出してきた。
アフリカにおけるモバイル決済サービスの成功は広く知られており、複数の事業者が年間数十億件の取引を処理している。
一方、西アフリカ経済通貨同盟の加盟国では、ブロックチェーンが活用されており、分散型台帳技術を新たなデジタル通貨「eCFA」の基盤として利用している。
ガーナのスタートアップも、土地の権利を記録する手段としてブロックチェーンを活用する実験を進めている。これにより、人々は土地の所有者であることを証明し、その土地を担保に借り入れができるようになる。
重要なのは、低所得者や小規模事業者に金融サービスを提供するマイクロファイナンス事業の成長を、テクノロジーが後押ししてきたことだ。
2012年に当社の「EY ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー™」を受賞したケニアのエクイティ・バンク・リミテッドは、まさにこの取り組みを実践した。同行は、人口のわずか6%にしか届かない既存の銀行サービスを利用できなかった一般市民や事業主の支援に乗り出した。
幸い、マイクロファイナンス団体は増えているが、さらに柔軟な資金調達が必要だ。
変化を受け入れる
人工知能(AI)やロボティック・プロセス・オートメーションが、自動車から専門サービスに至るまで、幅広い産業分野に変革をもたらすことは明らかだ。先進国の労働市場にも大きな影響が及ぶ。
賃金コストが比較的低いアフリカでは、AIを導入する事業上の意義が小さいように見えるかもしれない。しかし実際には、農業、教育、医療、製造、輸送などの分野に適用すれば、経済発展を大きく後押しする可能性がある。
実際、アフリカの先駆者の中には、すでにAIの可能性を探っている人々もいる。
過去150年間、アフリカは経済発展と成熟の段階を歩んできた。農耕社会から採掘産業の発展へ、そして現在は製造業と情報サービスへと移行している。
経済発展と成熟が進むにつれ、大陸の一部地域ではデジタル基盤の経済への移行が始まるはずだ。これは「第4次産業革命」と呼ばれている。
しかし、この移行が自動的に起こると考えてはならない。
アフリカのイノベーションを支えるうえで、政策立案者と企業はともに役割を担う。政策立案者はテックハブの成長を促し、強固な法的枠組みを整え、教育制度の質を高める。企業はアフリカ市場のインフラと事業運営に投資する。
確かに、デジタル革命は手の届くところにある。しかし、その成長を誰もが恩恵を受けられる形で支えるため、リーダーたちが包摂的に取り組んで初めて実現する。

