EU閣僚が 先ごろ地中海で起きた惨事を受けて会合を開くなか、焦点は当面の対応に置かれるでしょう。たとえば、地中海での哨戒を強化し、北アフリカ諸国が不規則な移民の流れを管理する能力を支援することで合意する可能性があります。これは当然のことです。今年すでに3万人を超える庇護申請者が欧州に到着したと推定され、1,000人以上がすでに命を落としています。
しかし、こうした短期的な措置やその他の対策が持続的な効果をもたらすには、欧州に向かう不規則な移民の増加を生む根本的な要因にも目を向ける、より広範な取り組みの一環でなければなりません。
第一に、 危険にさらされている人々に、自国で保護と支援を提供するための取り組みを一層強化する必要があります 。そうすれば、そもそも故郷を逃れる必要がなくなります。過去25年間、国内避難民を保護する法的枠組みの整備は大きく進展しました。今後は、国内法や政策を策定し、より広く実施に移す必要があります。
残虐行為を防ぐための国際的介入に対し、主権が従来課してきた制約を克服するための試みも始まっています。今こそ、 保護する責任 の原則を、より体系的かつ一貫して適用する時です。
どうしても自国を逃れる人々は、今後もいるでしょう。しかし、そうした人々が安全な場所にたどり着くために、密航業者に金を払ったり、危険な旅に出たりする必要があってはなりません。
したがって第二に、 地域内でより良い保護を実現する必要があります 。人々が安全と尊厳を保ちながら故郷の近くにとどまれるようにするためです。EUにはすでに地域保護の枠組みがあります。今こそ、それを機能させる時です。
第三に、 移民の密航対策には、はるかに思慮深い対応が求められます。厳罰化や取り締まり強化という、理解できる当面の反応もあります。もちろん、これらは必要ですが、移民の密航が実際にどのように行われているかを過小評価しています。通常、密航は事業者のネットワークに基づいています。船の船長を逮捕しても、ネットワークの他の部分に上流から影響が及ぶ可能性は低いでしょう。これはビジネスであり、密航業者は市場の状況に合わせて提供内容を巧みに調整します。また、密航は状況に応じて変化します。あるルートを閉ざせば、密航は別のルートへ移るだけです。密航を効果的に弱体化させるために必要な多様な対応の一つは、移住を考える人々に、伴うリスクをよりよく伝えることです。
第四に、 より多くの難民に、欧州で永住する機会を提供する必要があります。現在、世界には約1,700万人の難民がいますが、毎年、難民キャンプからより豊かな国々へ移り、そこで定住するプログラムに参加する機会を得るのは約10万人です。そして、その受け入れ枠のほぼすべてを提供しているのは、米国、カナダ、オーストラリアです。この方法で再定住する難民を増やしても、需要を満たす規模には決してなりません。しかし、難民危機の負担を今も担い続ける世界の貧しい地域との連帯を示す方法であることは確かです。
欧州への渡航を求める人々のすべてが命の危険から逃れているわけではありません。かなりの割合の人々が、仕事や機会を求めています。 欧州への労働移民の選択肢を増やすこと は、こうした需要への対処を始める一つの方法であり、労働移民の流れと難民の流れを切り分ける助けにもなります。
これらの提案はいずれも実行が容易ではなく、すぐに効果が出るものでもありません。しかし、EUに実行する力がないわけではありません。すでに、すべての提案について試験的なプログラムや枠組みが設けられています。見出しを飾る即効性のある対応を超えて、今日の会合で取り得る最も重要な一歩は、欧州の難民危機に対する長期的解決策に真摯に取り組むと約束することです。
著者:Khalid Koserは、Global Community Engagement and Resilience Fundの事務局長であり、 Global Agenda Council on Migrationのメンバーです。
画像:2015年4月22日、イタリア海軍の艦船キメラ号の甲板に立つ移民たち。南部のサレルノ港で下船する前に撮影。ロイター/Ciro De Luca


