自社の会議室にいるところを想像してみてください。プロジェクターを使うためにブラインドが下ろされ、自然光はすべて遮られています。ビスケットがあった場所には、食べかすの残る皿。コーヒーマグは空です。人々の心は打ち砕かれています。
それは、あなたの会社のマーケティング部門による戦略発表です。次の5カ年計画をPowerPointのプレゼン資料にまとめるまでに、2年の計画期間と、あまりにも多くの会議を要しました。そして、部屋を出られるまでにはさらに2年かかりそうです。空虚な自明の理を次々と述べる箱と線の図で埋め尽くされた資料は、モンドリアンへの稚拙なオマージュのようです。
そこで描かれる顧客像は、あなたの知っている誰にも似ていませんし、知り合いたいと思う人にも似ていません。発表の終わりには、マーケティング部門全体をただ解雇するのが最善かもしれない、と思い至ります。きっと、誰にとってもそのほうが幸せでしょう?
少々厳しい言い方かもしれませんが、かなり真実を突いてもいます。
骨組みから始める
GEの会長兼CEOを20年間務めた ジャック・ウェルチが、アラステア・キャンベルの近著 『Winners: And How They Succeed』についてキャンベルに語ったように、重要なのは 「何もしない状態になるほど、物事を頭で考えすぎないこと」です。2015年になっても、あまりにも多くの企業に、あまりにも多くの部門があり、まだこのメッセージを理解していないようです。最高マーケティング・戦略責任者もその一人です。
2011年、 エリック・リースは『The Lean Startup』を出版し、 今日の新興企業はまず骨組みから始め、成功するにつれて筋肉や組織を重ねていく必要があると論じました。ただし、ぜい肉は避けましょう。2時間のマーケティング会議にまで至っているなら、ジムに通う頃合いかもしれません。リーン・スタートアップは俊敏で、柔軟に対応し、実験を重ねます。大企業のマーケティングチームが変わり果てた姿とは正反対です。
『 Harvard Business Review』で、 スティーブ・ブランクは、従来のアプローチ ――綿密な計画、売り込み、そして最後に製品という流れ――は、「ビジネスモデル・キャンバス」に取って代わられたと論じています。これは、長々と時間をかけ、委員会で決めるマーケティング計画を、「実用最小限の製品」に向けた一連の仮説へと置き換える、はるかに柔軟な手法です。給与に見合う仕事を正当化しようとする中間管理職が最善策を決めるのではなく、最も大きな影響力を持つのは顧客の意見です。 MVP というアプローチが広がるにつれ、進むべき道が見えてきます。
つまり、2年かけて計画を立てた末に、それがうまくいかないと知る必要はありません。さまざまな反応を探り、知識に基づく推測を試し、その結果を見て、フィードバックに応じ、そして「必要十分」な製品をすばやく市場に出すのです。
試行と反復
企業に必要なのは、動きが遅く扱いにくいマーケティング部門ではなく、実験するチームです。試行、そして業界用語をもう一つ使えば反復を重ねる文化の中で、素早く構想を練り実行できる、権限を与えられた少人数のグループです。
自分で事業を立ち上げたとき、私はこれを学びました。図表も図解も、無駄な飾りもありませんでした。何年も計画作りに費やすより、実験し、検証し、改良し、再び試すことのほうがはるかに重要です。まずは試してみる。実験する。うまくいけば改善する。うまくいかなければ捨てる。私が何かにリソースや予算を投じるのは、データに基づいている場合だけです。よく言われるように、「神は信じる。その他のものにはデータを持ってきてもらう」。
この手法を使えるのは新興企業だけではありません。Googleはウェルチのメッセージを真摯に受け止め、余分なぜい肉をそぎ落としました。マーケティングチームはごく小規模で、世界の従業員数の1%未満にすぎません。それでも、はるかに大規模なMicrosoftのチームと同じ水準の認知度を実現しています。
GoogleのEMEA事業・オペレーション担当プレジデント、マット・ブリッティンはこう述べています。「かつて、世界規模の流通、マーケティング、人材は多国籍企業だけのものでした。しかし今日では、携帯電話を通じて誰もが利用できます。これらを最も速く活用する方法を学んでいるのは中小企業です。試し、学び、規模を拡大していきます。」
このモデルの実例は至るところにあります。史上最も売れた腕時計、 Pebbleを見てください。また、3年間で500万台以上を販売した Raspberry Piもあります。そして、少女たちが科学技術に自信を持てるよう後押しすることを目指したスタートアップ、 Roominate にも注目してください。テストと反復を経て、そのドールハウスキットが市場に登場するまで、わずか3週間でした。
この新しい世界では、余分なものをそぎ落とし、より俊敏で、柔軟性があり、実験的な手法を目指す必要があります。マーケティング部門の時代は終わりました。実験の時代は始まっています。
著者:ベルリンダ・パーマーOBEは、 Lady GeekのCEOであり、『The Empathy Era』の著者、そして ヤング・グローバル・リーダーです。Twitterでは @belindaparmar
画像:2014年11月19日、ニューヨークのタイムズスクエアで、新設された巨大広告スクリーンの下を歩く歩行者。REUTERS/Lucas Jackson


