この1か月の間に、チャドが石油担保融資15億ドルの返済条件変更を求めていると発表された。この資金は2014年、スイスに本拠を置く巨大商品取引会社グレンコアが主導するコンソーシアムから借り入れたもので、 チャドによる国内のシェブロン資産取得の資金に充てられた。融資返済が将来の石油輸出収入に連動していたため、世界的な原油価格の下落を受けて返済条件の変更が求められている。融資契約が発表された2014年半ば以降、原油価格はかなり急激に(約46%)下落した(図参照)。 ブルームバーグによると、融資額が現在135億ドルの国内総生産に比べて非常に大きいため、返済条件の変更によって政府に一定の財政的余地が生まれるという。

多くのアフリカ諸国は、経常支出および資本支出の需要を賄うため、国際的な民間貸し手からの借り入れをますます増やしている。以前は、政府などの公的債権者や世界銀行、IMFのような多国間機関が主な資金源だった。そして、借り入れの大半は広く 厳しい条件とみなされていた枠組みのもとで行われた。過去10年間に重債務貧困国(HIPC) および 多国間債務救済イニシアティブ(MDRI) のもとで債務が帳消しにされ、多くの国の財政状況が改善したが、皮肉にも新たな債務の累積につながった。今度の債権者は民間だった。
2006年以降、多くのアフリカ諸国はドル建て債を発行しており、サハラ以南のアフリカでは初めてのことだった。2006年にはセーシェルだけが2億ドルの債券を発行した。2013年までに、大陸全体で発行されたソブリン債の累計額は少なくとも100億ドルに達した(図参照)。さらに、外国の民間銀行も融資に加わった。たとえば、 ロシアのVTB銀行は2014年、アンゴラ政府に15億ドルの融資を実行した 。

アフリカ諸国政府向けのドル建て融資の多くは、暗黙のうちにコモディティを担保としている。これは、大陸が一次産品の輸出に依存していることから直接生じるものだ。コモディティ価格が下落すると(よくあることだが)、その影響は深刻になりうる。最近の借り入れブームの間に多額の借り入れを行った、コモディティ依存型経済の見通しは明るくない。2年の間にソブリン債を2回発行したザンビア(2012年と 2014年)は、最大の外貨獲得源である銅の不振を受け、すでに 債務の借り換えまたは返済条件の変更 を検討している。銅価格は過去2年間で約20%下落した。ガーナは、 2007年に大々的な注目を集めながら初のソブリン債を発行し 、その後 さらに2回発行したが、今年4月、予算および債務返済の義務を果たすため、 IMFから10億ドルの融資 を受けざるを得なかった。世界銀行が コモディティ市場の低迷を予測しているため、近い将来、多くのアフリカ諸国で同様の事態が繰り返されると予想される。
一部の アナリスト( IMFを含む)は、いくつかの国がHIPCおよびMDRIの取り組み以前と同様の債務の罠に陥る可能性を懸念している。
債務の問題
そして、これこそが債務契約、特にアフリカ諸国政府への債権者に好まれるコモディティ担保型契約の根本的な問題だ。この種の融資では、貸し手(国際銀行であれソブリン債の投資家であれ)が負うリスクは限られている一方、リスクの大部分は借り手が負う。
主要コモディティの価格が下落しても、融資の元本はほとんど変わらず、借り手には融資全額の返済が求められる。借り手にできるのは、せいぜい返済条件の変更を求めるか、借り換えの選択肢を探ることだ。最悪の場合、債務不履行に陥る可能性もある。しかし、その可能性はきわめて低い。IMFやその他の多国間機関は通常、債務危機に陥った国に「救済」パッケージを組む(もちろん無償ではない)。
こうして全体を見れば、債権者はほとんど無傷で済む一方、借り手は後始末を押しつけられる。債務危機は貧困国の社会支出に壊滅的な影響を及ぼしうる。この 研究 によると、債務負担の増加に伴い、教育と保健に充てられる国家予算の割合は最大で3分の1減少する可能性がある。
ある研究によると、債務負担の増加に伴い、教育と保健に充てられる国家予算の割合は最大で3分の1減少する可能性がある。アフリカ諸国政府向けコモディティ担保融資の仕組みを見直すことが急務だ。
株式型の仕組みの利点
一つの選択肢は、契約をより株式に近い形に設計することだ。そうすれば、貸し手と借り手の双方が上振れ(コモディティ価格の上昇)と下振れ(コモディティ価格の下落)を分かち合う。上振れを分かち合う方法としては融資の金利引き上げが考えられ、下振れを分かち合う方法としては融資価値の引き下げが考えられる。
株式市場はこのように機能する。企業の業績が好調なら株価が上昇し、企業は配当を宣言する。業績が振るわなければ株価は下落し、配当は支払われない。
債務をより株式に近い形に設計することには、すぐに得られる利点が2つある。
(1)貸し手は融資を行う際により慎重になる(融資額を小さくしたり、資金の使途を綿密に監視したりする可能性がある)。
(2)債務を抱える国は、主要コモディティの価格が急落しても、社会サービスへの資金提供をおおむね継続できる。経済学者のアティフ・ミアンとアミール・スーフィーは、米国の住宅市場を念頭に、この種の債務契約を 提案し 、「共同責任型住宅ローン」と名付けている。
ノーベル賞を受賞した経済学者ロバート・シラーは、ある国のGDPに連動する債券を 提唱してきた 。国が景気後退に陥れば、それに応じて債券価値または利払いも調整される(ギリシャの債券がGDP連動型だったら「ギリシャ悲劇」がどう展開したかを考えてみてほしい)。しかし、株式型のコモディティ担保融資は、ほとんどのアフリカ諸国が依存するものそのものに直接連動する。GDP統計は 操作される可能性があるのに対し、コモディティ価格は公開かつ透明な仕組みを通じて決まるため、この種の融資はより受け入れられやすい。
チャドのグレンコアに対する未返済融資が、石油市場の新たな現実を反映して単純に調整されていれば、同国の状況はここまで深刻ではなかったかもしれない。
この記事は、 Quartzとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが本稿の見解を支持することを意味しません。
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著者:グリーブ・チェルワはケープタウン大学の経済学博士課程候補者。
画像:1974年にチャド南部で掘削された最初期の試掘油井の一つの坑口が、ニアンドゥム村近くの林間の開けた場所に立っている。ロイター



