最新の四半期決算が相次いで発表され、 Apple や Boeing などが大幅な増益を発表した。一方、 Sainsbury’s や Samsung などはそれほど振るわなかった。大手多国籍企業の中には、なぜこれほど成功する企業があるのだろうか。その答えの一つは、ネットワークを支配する能力にある。
世界経済は、世界各地の顧客と供給者を結ぶ一連のネットワークで成り立っている。こうしたネットワークは、商品を私たちの玄関先まで届ける企業の連鎖から成る。たとえば、コロンビアのコーヒー生産者から、物流会社、ネスレのコーヒー焙煎業者、そして近所の店へとつながっていく。企業はネットワーク内で強固な地位を築くと、自社の事業に合うようにそれを強化し、改変できる。
成功する企業は、こうしたネットワークの中心に位置し、その構造や基盤を操る。起業家精神の基礎となるネットワーク形成には、主に三つの形がある。参加しているネットワークを支配すること、ほかのネットワークと橋渡しすること、そして新たなネットワークをつくることだ。
支配力を得る
優れた起業家は、自らが活動する経済ネットワークにおいて、支配力と権力を持つ立場を占めようとする。世界経済を構成するネットワークで、生産者と顧客の間に立つ、収益性の高い「仲介者」の地位を得ることでそれを実現する。
こうした仲介者の地位は、ネットワーク内の取引の流れに対して行使できる支配力を基盤とするため、非常に収益性が高い。企業は競合他社を戦略的に買収することで、この地位を築き、維持できる。過去10年間に数多くの合併・買収が行われたのはそのためだ。 Apple、 Facebook 、Googleによる買収戦略は、合併や買収が潜在的な競合相手の出現を先回りして阻止するためにも使われることを示している。
仲介者の地位が重要であることは、企業が自社のサプライチェーン・ネットワークにおける取引条件を支配する仕組みも説明している。供給業者に厳しいコスト削減を課すと、 企業製品の多くが生産される工場で搾取的な労働環境を招く 可能性がある。しかし、それによって企業はコストを最小限に抑えられる。
Walmart、Amazon、Tescoのような小売大手は、サプライチェーンを 厳しく管理し 、競合他社より 低いコストで事業を運営できるような取引条件を供給業者に課すことでよく知られている。同じことはAppleにも当てはまる。同社は中国のFoxconnのような巨大企業に端末の生産を委託している。これによりAppleは大幅に低いコストで事業を運営でき、利益率を高めている。
最後に、適切なパートナーとの関係を通じて自社をネットワーク内に位置づけることは、事業環境に影響を及ぼすための支配力と権力をもたらす。ジョン・D・ロックフェラーのような歴史上の起業家は、こうした戦略を発展させる達人だった。ロックフェラーは19世紀末、米国の競合する石油生産者を買収し、スタンダード・オイル社に統合することで、石油市場における支配的な地位を築いた。
ネットワークを橋渡しする
成功企業は、共通点を活用して自社のネットワークを世界経済のほかのネットワークと結びつけることに長けている。ロナルド・バートが説明した 「構造的空隙」理論によれば、異なる集団間をつなげる人や企業は、より創造的で革新的になり得る。
Appleは、異なる製品や活動を顧客向けの包括的なサービスパッケージにまとめることができる。パソコンやそのオペレーティングソフトウェアだけを作るのではなく、ハードウェアとソフトウェアを一体にしたパッケージ全体を顧客に提供するという構想を先駆けて打ち出した。デザインにも細心の注意を払っている。1980年代と1990年代にはこの戦略はあまり効果を上げず、Microsoftのほうが成功していたが、スティーブ・ジョブズは自身の構想を追い続け、最終的に成功を収めた。実際、Appleの構想は21世紀に最も成功したものとなった。世界経済がネットワークで結ばれているという性質に、このアプローチが根差しているからだ。
新たなネットワークをつくる
最も成功している企業は、時代を支配する人生哲学に合致した事業戦略を実行する革新的な構想を通じて、新たなネットワークをつくることができる。起業家精神のこの側面を示す最も顕著な例もAppleだ。同社は、ハードウェア端末とコンテンツの提供を美しいデザインのもとに結びつけた世界観を売り出している。Appleは、友人とのソーシャルネットワーク上の交流、音楽鑑賞、写真の撮影や編集、ゲーム、そして「格好よく見えること」を、21世紀に成功する人が目指す姿という一つの構想の中で私たちに提供している。
Appleは、iTunes、App Store、iPod、iPhone、iPadを導入して新たな経済ネットワークをつくり、人々が受け入れる世界観を生み出した。これらのサービスに最近加わったのは、iCloudストレージサービスとApple Watchだ。Apple Watchは、身体や健康状態に関する情報をほかの端末に伝えることができる。さらにApple Payによって、顧客はApple端末を通じて自分の財務をますます管理できるようになる。
ほかの人々が提案し、先駆けた面もあるが、21世紀に成功する人生とはどのようなものかというAppleの包括的な構想があるからこそ、同社は製品から利益を得て、私たちを製品に 「夢中」 にさせることができる。
ネットワーク経済における起業家精神のこの第三の側面でAppleが成功したことが、同社を競合他社と際立たせている。そして、これから成功を目指す企業はその先例に倣うべきだ。
本記事は当初、 The Conversationに掲載された。
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掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。
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著者:ロブ・ジルズ。クイーンズ大学ベルファストの理論経済学教授。
画像:モスクワで計画されている公園プロジェクトに関する情報を提供するショールームで、QRコードのパネルの前に立つ来場者。REUTERS




