かつて私は、英国や他国の選挙をかなり正確に予測する人物だと思われていた。何しろ、以前は政党の党首を務めたこともある。
今なら、私の方法を打ち明けられる。目新しい政治的洞察に基づくものではなかった。経済的要因と投票意向を結び付ける魔法のアルゴリズムを持っていたわけでもない――ただ、可処分所得の純額と人々の通常の投票行動には、ある程度の相関があるとは考えている。だが、今も使っている私独自の手法は、各選挙区の政治情勢を徹底的に探るよりも、確かな結果を出してきた。
私のやり方はそれほど複雑ではない。ブックメーカーのオッズを見るのだ。昨年9月のスコットランド独立住民投票でも、それが大いに役立った。開票の2日前には、ブックメーカーはスコットランドが独立に「反対」票を投じると賭けた人々に払い戻しを始めていた。実際にスコットランドがどちらに投票したか、想像できるだろう。
私の方法は、まず、腕の悪い賭け屋の話はめったに聞かないという観察に基づいている。そこで、米国の作家デイモン・ラニヨンの有名な格言を当てはめる。「競走で常に勝つのは俊足とは限らず、戦いで常に勝つのは強者とは限らない。だが、賭けるならそういう相手だ。」
今の問題は、5月の英国総選挙の結果を予測できないほど接戦だということだ。そのためブックメーカーは、どの政党も単独過半数を獲得しない方に2対5、労働党または保守党が最多議席を獲得する方に10対11のオッズを付けている。
だから私は結果を予測できないし、政治的不確実性にいつも神経を尖らせるロンドン金融街の「世界を動かす人々」にも予測できない。私にできるのは、なぜこれほど不確実なのかを説明することだ。
第一に、他の多くの民主主義国と同様、英国の二大政党への支持が低下している。私が政治に関心を持ち始めた約50年前、労働党と保守党は合わせて得票率のおよそ90%を集めていた。5月には、両党の合計得票率は約65~70%になるだろう。
これにはいくつかの理由がある。一つは、伝統的な労働者階級の縮小と、より豊かな中産階級の拡大だ。その背景には、職業や住宅をめぐる変化がある。労働組合への加入者数と公共部門の雇用は減少した。左右いずれかのイデオロギーへの帰属意識が薄れるにつれて、政党に入党する人の数も大幅に減った。
さらに、英国ではポピュリスト政党やナショナリスト政党が台頭している。これは一部には、グローバル化や経済的困難から生じた政治的・経済的疎外の結果だ。労働党と保守党は、縮小する支持をめぐって争っている。最新の世論調査では、労働党の支持率は34%、保守党は32%だ。労働党の支持率はここ数年、30%台後半から低下傾向にある一方、保守党は約30%で伸び悩んでいる。
結果の予測をさらに難しくする要因もいくつかある。まず、選挙制度は労働党に大きく有利に傾いている。英国の都市部や労働党が多数を占める地域の一部が過大に代表されているため、保守党の議員を一人当選させるには、労働党の議員の場合より多くの票が必要だ。その結果、選挙学者の計算では、保守党が労働党より多くの議席を得るには、得票率で少なくとも4ポイント上回る必要がある。
第二に、反移民・反欧州連合を掲げる英国独立党(UKIP)は、労働党からよりも保守党から多くの票――おそらく最大50%――を奪っている。UKIPの支持はピークに達し、党の勢いがいくらか弱まっているようだ。しかし、UKIPが保守党の勝算にどれほどの打撃を与えるのか、本当のところは誰にも分からない。
第三に、反対側ではスコットランド国民党が、労働党の支持者だった人々を大勢取り込んでいるようだ。スコットランド西部の労働者階級の有権者の多くは、スコットランド議会選挙では以前からスコットランド国民党に投票していたが、英国総選挙になると労働党に戻っていた。しかし、労働党が伝統的な支持者を当然視してきたという感覚から、このパターンが崩れたと考える人もいる。労働党党首のエド・ミリバンドは、保守党の党首であるデービッド・キャメロン首相と同じくらい、スコットランドで不人気のようだ。
指導力の面では、保守党はすでに世論調査で優位に立っている。経済問題でも大きくリードしており、成長と雇用の回復、そして低インフレが今や国全体に恩恵をもたらしているという党の主張を、ニュースが引き続き裏付けている。保守党は経済を前面に押し出すだろう。単独で選挙に勝った最後の年である1992年にもそうしたように。
一方、労働党は国民の注意を、国民保健サービスのように政府にとって不利と考えられる争点に向けようとするだろう。選挙戦はすでに始まっている。主要な当事者が、今後数週間でこれまで掲げてきた論点から大きく離れると考えるべきではない。
ブックメーカーの予想どおりの結果になったら、どうなるだろうか。おそらく、実現しそうにない連携から連立政権を組もうとする試みが何か月も続くだろう。その後、また選挙が行われるかもしれない(議会が5年任期を定める法律を改正できるとすれば)。
そうならないことを願っている。そして戦いの煙が晴れたときには、当然そうあるべきように、キャメロンだけが立っていることを願う。だが、その賭けに出る前に、ブックメーカーの見解を確かめるつもりだ。
本記事は、 プロジェクト・シンジケートとの協力のもとに掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:香港最後の英国総督で、欧州委員会の対外関係担当委員も務めたクリス・パッテンは、オックスフォード大学総長である。
画像:2014年10月4日、ロンドンのビッグベン時計塔(右)と国会議事堂を背景に、ユニオンフラッグ柄の傘を持つ女性。ロイター/ルーク・マクレガー。



