新型コロナ以前、先進国の多くでは数十年にわたりインフレ率が低水準でした。
需要の急増、供給面の問題、エネルギー価格の高騰により、インフレ率は大幅に上昇しました。
これは一時的な現象なのでしょうか。それともインフレは定着するのでしょうか。何ができるのでしょうか。
UBSチーフエコノミストのポール・ドノバンが、ポッドキャスト「Radio Davos」で語ります。
世界が新型コロナから抜け出しつつあり、経済は再び活気を取り戻しています。しかし、世界の多くの地域で数十年ぶりとなる現象も再び起きています。インフレです。
では、インフレとは何でしょうか。なぜ今、世界各地で急に高まっているのでしょうか。
UBSチーフエコノミストのポール・ドノバンは、著書『インフレの真実』の著者として、Radio Davosのインタビューに応じました。
インフレとは何か、心配すべきなのか?ポール・ドノバンへのインタビュー
ロビン・ポメロイ:インフレは誰もが話題にしています。あなたも『インフレの真実』という本を書かれました。まさに今回のインタビューで取り上げたいテーマです。インフレとは何か。何が真実で、何が誤りなのか。エコノミストとして、また一個人として、なぜインフレはそれほど重要な問題なのでしょうか。
インフレ率は一つだけあって、それが私たち全員に影響を及ぼす、という考え方があります。しかし、それは正しくありません。
ポール・ドノバン:重要な問題なのは、インフレが非常に誤解されやすいからだと思います。インフレ率は一つだけあって、それが私たち全員に影響を及ぼす、という考え方があります。しかし、それは正しくありません。高齢者が経験するインフレ率は、一般に高くなる傾向があります。低所得者のインフレ率も、購入するものの違いから高くなりがちです。高齢者は医療サービスを利用し、低所得者は食料、エネルギー、住居に不釣り合いなほど多くの支出をします。そのため、彼らのインフレ率は高くなるのです。つまり、インフレを避けたければ、若くて裕福である必要があります。
投資家も、インフレのさまざまな側面について混乱していることが多いと思います。多くの人が注目する消費者物価インフレは、企業の価格決定力を測る指標としては、実はあまり適切ではありません。企業は消費者に販売することが少なく、企業同士で取引するからです。価格決定力をよりよく示すのは、別の指標である生産者物価インフレです。コストを左右するのは賃金インフレです。価格変動について知るべきことをすべて教えてくれる、単一の便利な統計があるという考えは正しくありません。インフレ率の上昇や低下が経済にもたらす影響を適切に評価するには、実際に何が起きているのかを詳しく理解する必要があります。
インフレ率は信頼できるのでしょうか?
ロビン・ポメロイ:私たち個人は、偏見があるために公式のインフレ率を受け入れにくいことがあります。その点を少し説明していただけますか。
ポール・ドノバン:人々は公式のインフレ統計を信じず、実際よりもインフレ率が高いと考えがちです。なぜでしょうか。よく知られている行動経済学の概念が二つあります。一つ目は損失回避です。私たちは遺伝的に、良い知らせより悪い知らせを記憶し、それに反応するようにできています。次の食事にありつくために走る速さに比べ、サーベルタイガーから逃げるときは3倍の速さで走ります。この古くからある行動特性である損失回避のために、人々は値上がりを覚えていても値下がりは忘れてしまいます。その結果、昨年、薄型テレビの価格が下がったことは無視し、スニッカーズの価格がこの1年で上がったことは覚えている、という偏りが生じます。
古くからある行動特性である損失回避のために、人々は値上がりを覚えていても値下がりは忘れてしまいます。
もう一つの行動特性は頻度バイアスで、これは大きな問題です。人々は頻繁に買うもの、つまり食料や燃料の価格を覚えています。その結果、何がインフレを引き起こしているのかについて、非常に歪んだ見方をしてしまいます。たとえば、私が出勤して、ここの自動販売機でスニッカーズの価格が50ペンスから60ペンスに上がったのを見たとします。すると同僚たちがしょっちゅうやって来て、「インフレが制御不能だ。20%のインフレだ」と言うことになるでしょう。どれほど意欲があっても、同僚たちが24時間で食べられるチョコレートバーの数には限りがあります。全体の支出に占める割合は大きくありません。それでも、自動販売機に行くたびに価格が20%上がったと思い出し、そのことが記憶に残ります。こうして、頻繁に購入するものに注目し、値下がりではなく値上がりを覚えているという組み合わせが生まれます。そのため、経済全体の平均価格で何が起きているのかについて、非常に歪んだ見方になりかねません。
現在、インフレはどうなっているのでしょうか?
ロビン・ポメロイ:世界では今、インフレに何が起きているのでしょうか。誰もがインフレの再燃について話しています。世界の多くの地域では、問題とみなす水準を超えるインフレは起きていなかったようですが、今はそうした状況になっているのかもしれません。私が言ったように、そうした過去の期間があったというのは事実でしょうか。現在は何が起きているのでしょうか。
これが本当にインフレなのか。まさにそこからエコノミストの意見が分かれ始めます。
ポール・ドノバン:先進国では概して、20~25年にわたりインフレ率がかなり低い状態が続いてきました。時折急上昇することはありましたが、一般的には平均的な指数で、価格は毎年およそ1.5~3~3.5%上昇してきました。もちろん、それはまったく問題ありません。
今、インフレ率はその水準をかなり上回っています。米国では、総合CPI(消費者物価インフレ)の最新値が前年同月比7%で、非常に高い数字です。これは本当にインフレなのでしょうか。ここからエコノミストの意見が少し分かれます。インフレとは、価格全般が上昇すること、つまり多くの価格が同時に大幅に上がることだからです。非常に多くの価格が上昇しているなら、経済全体に不均衡があることを示しており、政策担当者が対処する必要があります。しかし、1つか2つの価格だけが大幅に上がり、ほかの価格がほぼ通常どおりに動いているなら、問題は経済全体ではなく、1つか2つの市場にあることを示しています。経済の大部分ではインフレがやや強まり、1つか2つの商品では非常に異例な値上がりが起きています。これはほぼ世界中で見られるパターンです。総合的な数字の多くを押し上げているのはエネルギーです。また、中古車市場と新車市場では、過去1年の供給問題によってゆがみが生じています。こうした要因が総合インフレ率を大きく押し上げているのです。
インフレと政策担当者
ロビン・ポメロイ:最近、ダボス・アジェンダでの対話で、著名なエコノミストや中央銀行総裁がインフレについて話し合いました。IMF総裁、日本銀行総裁、欧州中央銀行総裁も参加しました。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁が、現在のインフレについて語った映像をお聞きください。
クリスティーヌ・ラガルド(ダボス・アジェンダ2022での発言):私たちは、インフレがどこから来ているのか、自問しなければなりません。長続きする可能性はあるのでしょうか。どれくらい続くのかを見極めようとしています。それが、必要となる政策対応を練るうえで極めて重要だからです。数字の内訳を見ると、エネルギー価格が50%を占めています。要因は景気回復だけではありません。残念ながら、現時点では地政学的要因も極めて重要です。特異な要因や天候に関連する要因もあります。残りについては、来月にはいずれ解消するいくつかのベース効果を除けば、供給が制約されるなかで、それを上回る非常に力強い回復が見られます。その結果、皆さんも私たちも、ボトルネック、港湾の混雑、トラック運転手の不足などについて話しています。そこで、この二つの大きな要因は長期にわたって続くのか、インフレ率に影響し、その状態を持続させるのか、そして金融政策の対応を左右するのか、と自問することになります。
インフレが制御不能なほど加速するような、持続的な動きは見られません。むしろ、慎重さを忘れてはなりませんが、不確実性が非常に大きいなかで、現時点では、エネルギー価格は2022年中に安定し、ボトルネックや港湾の混雑、運転手不足なども同年中に落ち着き、インフレ率は徐々に低下すると想定しています。
ロビン・ポメロイ:欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、挙げた要因は一時的な問題なので、インフレは再び制御できるようになると、慎重ながら楽観視しているようです。彼女の見通しに同意しますか。
ポール・ドノバン:概ね、インフレは低下するというラガルド総裁の見方に同意します。原油価格の上昇が鈍化しており、インフレへの寄与も小さくなるからです。ほかの要因も低下していくと思います。非常に異例な水準にあった需要も、今年を通じて正常化するでしょう。
政策担当者から、サプライチェーンの問題やボトルネックについて多く聞かされます。これは政治の話で、経済の話ではありません。世界の供給に何が起きたかを見ると、昨年は単純に急増しました。世界の製造業生産は過去最高を記録しました。世界の貿易量は世界貿易機関の統計で11%増えました。スエズ運河の輸送量も過去最高を記録しました。船が横向きに進んでいても、輸送量は過去最高だったのです。2021年を通じて、サプライチェーンは見事に機能していました。世界中のサプライチェーンが崩壊して廃墟になっているという考えは、まったくのナンセンスです。
耐久財への需要がこれほど急増したのは、戦時中の配給制が終わった時期までさかのぼらなければなりません。
しかし、昨年の需要水準はまさに異例でした。米国では耐久財への需要が急増し、1946年以来、最も大きな伸びとなりました。耐久財への需要がこれほど急増したのは、戦時中の配給制が終わった時期までさかのぼらなければなりません。なぜでしょうか。パンデミック中、人々はお金を貯めていました。新型コロナの規制が解除され、外出してお金を使えるようになると、実際に外出して使ったのです。こうした非常に大きな需要の急増が、供給側の懸命な対応を圧倒しました。そのため、経済に多少の不均衡が生じています。需要は供給を大きく上回り、一部の商品の価格を押し上げました。しかし、需要の急増は続きません。米国ではすでに勢いが弱まっており、英国でも同様かもしれません。貯蓄を使い切れば、需要は通常の水準に戻るからです。私たちはその方向に向かっているようです。需要が正常化すれば、価格の調整には少し時間がかかるため遅れはありますが、インフレ率も正常化するでしょう。今年、インフレが正常化する可能性は非常に高いと考えています。
ロビン・ポメロイ:では、皆で深呼吸して、この波に乗ればよいということですね。インフレについて気になるのは、加速が止まらなくなるのかどうかです。ダボス・アジェンダの会合に参加した別の方の短い映像をお聞きください。ブラジルのパウロ・ゲデス経済相です。
パウロ・ゲデス(ダボス・アジェンダ2022での発言):インフレが一時的なものだとはまったく思いません。供給に悪影響を及ぼすショックは徐々に消えていくでしょうが、西側諸国が利用できる裁定取引の機会はもうありません。中央銀行は運転中に居眠りをしているようなものです。警戒すべきです。西側諸国にとって、インフレはまもなく現実の深刻な問題になると思います。
インフレと加速の要因
ロビン・ポメロイ:ブラジルのパウロ・ゲデス経済相は異なる見方を示し、事態は制御不能になると述べました。インフレを加速させるリスク要因は何でしょうか。どのような政策手段があり、今回は有効なのでしょうか。
先進国では、労働コストがインフレの約70%を占めます。
ポール・ドノバン:簡単に言えば、労働コストです。先進国では、労働コストがインフレの約70%を占めます。私たちは商品価格のようなものに注目しがちです。商品はインフレにそれほど重要ではなく、商品によるものは約15%です。大きな要因は労働コストです。ここで重要なのは、賃金の話をしているのではないという点です。賃金とは、手取り額のことです。しかし企業が価格を決める際に関心があるのは、「生産量1単位を生み出すために、労働に全体でいくら費やす必要があるか」です。賃金率の上昇だけを考えればよいわけではありません。人々がどれほど懸命に働いているかも考える必要があります。懸命に働く人には、より多く支払うべきです。私はそのことを上司に何度も伝えています。より懸命に働いて生産量を増やしている人に、賃金を多く払っても、必ずしもインフレを招くわけではありません。米国のレストラン業界はその好例です。12月のデータを見ると、米国のレストラン売上高は2020年1月を19%以上上回りました。一方で、その売上増は従業員が2.3%少ない状態で達成されました。この状況では、従業員がより懸命に働いているか、レストランによっては人がコンピューターに置き換えられているのでしょう。レストラン従業員の仕事は、実際には料理を準備することだけです。自動化によって、より少ない人数でより多くを生産できるため、従業員に少し多く支払う余裕が生まれます。エコノミストはこれを単位労働コストと呼びます。単位労働コストの問題は、データが非常によく改定され、率直に言って、統計としてあまり安定していないことです。しかし、私たちが見ているのはまさにこの点です。生産量の伸びを上回るペースで賃金が上昇し始めれば、それは問題になりかねません。賃金コストがより高い価格に転嫁され、労働者が賃上げを求める可能性があるからです。
そうなる可能性は非常に低いと思います。1970年代には起きましたが、当時は今とは大きく異なる世界でした。米国大統領のニクソンは、賃金と価格を自ら決めていました。国家統制だったのです。米国のハンバーガーの価格は、ニクソン大統領が大統領執務室で自ら決めていました。驚くべきことです。その価格統制の仕組みが全面的に崩壊し、インフレが起きました。賃金交渉が労働組合によって行われていたことも、インフレ圧力を高めました。今は、そうした状況からはほど遠いのです。
インフレ、賃金、生産性
ロビン・ポメロイ:今、「生産性」という言葉を使われましたね。エコノミストが使う用語です。「生産性が上がれば賃上げしてもよい」ということですね。ハンバーガー店なら当てはまるかもしれませんが、生産量を測るのが難しい分野ではどうでしょうか。学校や病院で働く何百万人もの人々はどうでしょう。教師や看護師の生産性はどう測るのでしょうか。パンデミックを通じて骨身を惜しまず働き、昇給に値する看護師が、こうしたインフレ圧力に対処しなければなりません。世界中で、何百万人もの人々、しばしば低賃金で厳しい仕事をしている人々の賃金を上げる圧力がかかるでしょう。しかし、そうした人々の生産性の伸びを測るのは非常に難しいと思います。
ポール・ドノバン:そうです。測る方法はいくつかあります。「医療の価値とは何か」「教育の価値とは何か」を考えなければなりません。議論の余地があります。たとえば英国は、教えた生徒数をもとに教育の価値を測ります。一方、フランスは教師に支払う賃金をもとに測ります。生産量を測る方法はますます高度になっており、それは有益です。経済で人々が生産するものの生産性や価値について、より多くを把握できます。しかし、パンデミックが構造変化を大幅に加速させ、統計データはその変化に追いつこうとしていることを認識しなければなりません。在宅勤務のような変化は、生産性や効率性を変えます。パンデミック後、多くの先進国で自営業者が大幅に増えました。これはデータに捉えられていないかもしれませんが、生産量、生産性、所得には反映されています。経済がこうした構造的な激変を経験するなか、状況ははるかに複雑になっています。
インフレ対策の政策手段
ロビン・ポメロイ:では、政策について少し話しましょう。金利設定を担う中央銀行の話が出ました。基本に立ち返り、政策担当者が何に注目し、理論上はインフレを抑えるために何ができるのか、説明していただけますか。
中央銀行総裁にできることには限界があります。価格によっては、座ってこう言うしかありません。「12か月間やり過ごしてください。そうすれば問題ではなくなります」。
ポール・ドノバン:財政政策があり、金融政策があります。インフレは一般に金融政策担当者の責任とされますが、それが必ずしも現実的とは限りません。現在のインフレの一部について言えば、パウエルFRB議長に世界の原油価格を変える手段はありません。彼は中古車販売業者ではありません。2001年型ホンダ・シビックの価格を変えることもできません。中央銀行総裁にできることには限界があります。価格によっては、こう言うしかありません。「12か月間やり過ごしてください。そうすれば問題ではなくなります」。実際に中央銀行総裁がしなければならないのは、そういうことです。しかし、中央銀行が影響を及ぼせる価格もあります。賃金の伸びに間接的に影響を及ぼしたり、経済における信用コストを動かすことで、景気循環の影響を受けるほかの価格にある程度影響を与えたりできます。信用コストを上げ、金利を引き上げると、人々が商品を求める力を抑えられ、供給と需要の均衡を促し、インフレ圧力の緩和につながります。金利を上げれば、支出ではなく貯蓄を促すこともあります。ただし、限界があることを認識しなければなりません。まずはこの需要を消化し、その後の状況を見る必要があります。今起きているのはそういうことだと思います。中央銀行は、技術的な要因が薄れるため、今年インフレ率が低下すると知っています。彼らが目指しているのは、経済システムからインフレを無理に絞り出すことではありません。不況を引き起こそうとしているのでもありません。需要急増の後に成長がより正常なパターンに戻るような水準に金利を設定しようとしているのです。インフレを実際に押し下げようとする場合より、かなり穏やかな政策です。中央銀行はこう言っています。「インフレは低下しています。低下した後は、その水準を維持したい」。これは中央銀行が取ろうとしている、少し異なるアプローチです。
ハイパーインフレーション
ロビン・ポメロイ:一部の人が恐れる脅威としてのインフレに、もう一度戻りましょう。国によっては、さらにひどいハイパーインフレの記憶が共有されています。ドイツでは、当時を記憶できる年齢ではない人たちの間にも、社会にハイパーインフレの記憶が残っています。ハイパーインフレとは何か、インフレがどれほど深刻になり得るのか、そうした状況でなぜこれほど恐れるべきなのか、改めて説明していただけますか。
ハイパーインフレが起きると、人々はすべてを失うことがあります。
ポール・ドノバン:ハイパーインフレに正式な定義があるわけではありません。インフレ率が50%に達するような状況なら、ハイパーインフレにかなり近いと言えるでしょう。物価が絶えず変動する状態です。これは社会に混乱をもたらします。人々の社会的地位が変わり、仕事や社会での役割、所得の相対的な価値も変化します。通常、ハイパーインフレが起きると、貯蓄者から借り手へ巨額の富が移転します。借り手は利益を得る一方、貯蓄者は損失を被ります。そして、人々の記憶に残るのはそのことです。ここにも、損失回避の心理があります。ハイパーインフレのさなか、人々はすべてを失うことがあります。社会的地位も所得も失うのです。だからこそ、ハイパーインフレは何世代にもわたって記憶に残る傾向があります。ドイツでは、1923年と第二次世界大戦直後の2度、ハイパーインフレが起きました。シンガポールも興味深い例です。インフレへの強い懸念がありますが、それはシンガポール自身のハイパーインフレによるものではありません。戦後の中国国民党政権下で起きたハイパーインフレが原因です。その後、中国国民党政権下の中国から多くの移民がシンガポールに移り住み、極めて高いインフレ率がもたらす、非常に破壊的な力の記憶を持ち込みました。そのため、ハイパーインフレは大きな懸念を引き起こす傾向があります。
中央銀行を経済学者が運営していれば、ハイパーインフレは起きません。
率直に言えば、これは意図的に起こるものです。中央銀行を経済学者が運営していれば、ハイパーインフレは起きません。ハイパーインフレは本質的に、紙幣を過剰に印刷することで起きるからです。1923年、ライヒスバンク総裁ハーフェンシュタインはドイツで、経済学者ではなく弁護士でした。ドイツの経済状況に対して、ただひたすら、さらに多くの紙幣を印刷するという対応を取りました。有名な出来事として、彼は演説でこう述べています。「心配はいりません。印刷機を追加で発注しました。さらに多くのお金を印刷できるようになります。すべてうまくいくでしょう。これでインフレはなくなります」。何が起きているのかをまったく理解していませんでした。ハイパーインフレの終わり頃には、中央銀行は紙幣の片面だけを印刷し、もう片面は白紙のままにしていたほどです。紙幣の価値が下がり、価値を失う前に両面を印刷する時間がなかったのです。
近年では、ジンバブエのような場所でも同じことが起きています。史上最悪のハイパーインフレは、第二次世界大戦後のチェコスロバキアで起きました。このような事例はほかにもあります。経済の法則を完全に無視した結果です。経済の法則を守っている限り、貨幣供給と貨幣需要の間に、ある程度の均衡を保てます。
ロビン・ポメロイ:最後を締めくくるには、少し安心できるお話かもしれません。ポール・ドノバンさん、インフレについて解説していただき、ありがとうございました。これからも注意深く見ていきます。Radio Davosにご出演いただき、ありがとうございました。
ポール・ドノバン:お時間をいただき、ありがとうございました。
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