トランプ大統領の「仮想の壁」がもたらす影響

U.S. President-elect Donald Trump speaks at his election night rally in Manhattan, New York, U.S., November 9, 2016. REUTERS/Carlo Allegri TPX IMAGES OF THE DAY - RTX2SPX6
In many ways, the Republican Party’s plan to implement a “border adjustment tax” in the United States is the virtual complement of the physical wall President Donald Trump plans to erect.Image: REUTERS/Carlo Allegri
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さまざまな意味で、米国に「国境調整税」を導入するという共和党の計画は、ドナルド・トランプ大統領が米国とメキシコの国境に築こうとしている物理的な壁を、仮想空間に置き換えたものと言える。国境調整税は、トランプ氏の物理的な壁と同じほど人々の意識に浸透してはいないものの、平均的な米国人にはるかに大きな影響を及ぼす可能性があり、その影響は必ずしも好ましいものとは限らない。

表面的には、基本的な発想は、輸入品に、たとえば20%の税を課し、輸出には同程度の税控除を与えるというものだ。ポピュリストの多くは、輸入を抑え輸出を促すのだから、米国の雇用にとって素晴らしいはずだと直感的に考える。残念ながら、多くの人が指摘しているように、この論理には見落としがある。米国は変動相場制を採用しているのだ。

ドル高は、国境調整税の導入によって起こり得る結果だが、米国人が輸入品をより安く買えるようにする(1ドルでより多くの外貨を買えるため)。逆に、ドル高は米国の輸出品を外国人にとって割高にする。実際、標準的な教科書の結論では、為替レートの影響が税を完全に相殺し、貿易収支は変わらない。共和党の提案はまやかしのように聞こえると思うなら、その見方は正しいかもしれないが、その点はひとまず脇に置こう。

評価の高い学術経済学者の中にも、まったく別の理由から国境調整税の考えを支持する人がいる。彼らは、為替レートが上昇し、実際に国境調整税の貿易への影響を打ち消すと信じて疑わない。それでも、この税を支持している。

第一に、米国は輸出より輸入がはるかに多いため、大幅な貿易赤字を抱えている。最も広義の指標である「経常収支」は、GDPの約2.5%に上る。これは、10年前に米国が抱えていたGDP比6%の赤字に比べれば大幅な改善だが、米国は依然として輸出をかなり上回る額を輸入している。そのため政府は、輸出業者に税控除として与える額よりも、輸入に対する20%の税からはるかに多くの税収を得ることになる。実際、税と補助金の仕組みは、少なくとも帳簿上は、年間およそ900億ドルの収入をもたらし得る。

その効果はそれだけではない。輸入と輸出を単純な「こちら対あちら」の現象と捉えがちな人には意外かもしれないが、実際には貿易の約半分が企業内取引、つまり同一企業の海外部門と米国内部門の間の取引だ。また、米国の法人税率は世界でも特に高いため、企業はできる限り多くの価値を海外子会社に、できる限り少なく米国内の会社に帰属させようと、あらゆる手を尽くす。

その方法の一つは、企業内輸入の帳簿上の価格を人為的に高くし、輸出の帳簿上の価格を人為的に低くすることだ。過少・過大請求は、税や規制を回避するために長年使われてきた手法である。取引がすべて「社内」で行われる場合、実質的には会計上の小細工によって、税率の低い地域に利益を計上するだけで済む。

カリフォルニア大学バークレー校のアラン・アウアーバックが最初に指摘したように、国境税調整は、米国のような高税率の国・地域における過少・過大請求を抑える手段である。したがって、国境調整税が米国製品の競争力を直接高めないとしても、効率的な歳入確保策となり、ほかの減税を可能にする余地を生み出す可能性がある。

では、技術官僚的に見て理にかなったこの案に、いったいどんな問題があるのだろうか。第一に、いくつかの大胆な前提に依存している。たとえば、人々が迷路のように複雑な制度を容易に悪用できず、外国政府も報復を自制するという前提だ。第二に、移行に伴う数多くの難題を無視している。

まず、米国の輸入品の圧倒的多数は外貨ではなくドル建てで価格設定されている。そのため、たとえ外貨が安くなっても、ドル建て契約に縛られた輸入業者には役立たないかもしれない。輸入税によってコストは単純に20%上昇する。また、最近のニューヨーク連邦準備銀行の報告書が指摘するように、輸出業者の中には、製品の生産に輸入中間財を使っているため、税補助があっても損失を被るところがある。

もう一つの問題は、ドル高によって米国人が巨額の資産価値の損失を被ることだ。多くの海外資産の価値が下落するためであり、同僚のエマニュエル・ファルヒ、ギータ・ゴピナート、オレグ・イツコーキが論じている。しかし最大の問題は、税と補助金の仕組みを相殺するようにドルの為替レートが都合よく動くという、あまりに楽観的な前提である。

過去40年間の為替レート研究が教えてくれることがあるとすれば、それは為替レートが長年にわたってファンダメンタルズから大きく乖離し得るということだ。国境税の導入によってドルがすぐに大幅な相殺方向への変動を起こすと考えるのは、まったく現実的ではない。その過程には何年もかかる可能性があり、短期的には米国の失業率に悪影響を及ぼしかねない。

確かに、高い国境税は米国の雇用を増やす可能性がある。この制度には税関職員の大幅な増員が必要となり、人々が税を逃れようとすることで、地下経済が大きく拡大する可能性も高い。しかし、国境税の支持者が念頭に置いているのは、本当にそうした種類の雇用なのだろうか。

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