米中冷戦が世界にもたらす影響

Containers are stacked up at PSA's Tanjong Pagar container terminal in Singapore July 24, 2015. When Singapore celebrated its 50th birthday as an independent country in August, the city state bore little resemblance to the tiny island nation that was expelled from Malaysia in 1965. Its physical stature has swollen by 20 percent thanks to one of the world’s most aggressive land reclamation drives. REUTERS/Edgar SuPICTURE 4 OF 31 FOR WIDER IMAGE STORY 'EARTHPRINTS: SINGAPORE' SEARCH 'EARTHPRINTS SINGAPORE' FOR ALL IMAGES
A cold war is becoming more likelyImage: REUTERS/Edgar Su
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米中間の貿易戦争として始まったものは、世界の経済、技術、軍事の覇権をめぐる死闘へと急速にエスカレートしている。両国の指導者が21世紀を規定する関係を責任を持って管理できなければ、その失敗の代償を世界全体が負うことになる。

数年前、中国を訪問する西側代表団の一員として、北京の人民大会堂で習近平国家主席に会った。私たちに向けて話すなかで、習主席は中国の台頭は平和的なものになると主張し、他国、すなわち米国は「トゥキディデスの罠」を心配する必要はないと述べた。この名は、台頭するアテネへのスパルタの恐れが両国間の戦争を不可避にした経緯を記した古代ギリシャの歴史家にちなむ。ハーバード大学のグレアム・アリソンが2017年に出版した著書『Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?(戦争への運命――米国と中国はトゥキディデスの罠から逃れられるか)』では、台頭する大国と既存の大国との過去の対立16例を検証し、そのうち12例が戦争に至ったと結論づけている。疑いなく、習主席は残る4例に私たちの目を向けさせたかったのだろう。Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?(戦争への運命――米国と中国はトゥキディデスの罠から逃れられるか)ハーバード大学のグレアム・アリソンは、台頭する大国と既存の大国との過去の対立16例を検証し、そのうち12例が戦争に至ったと結論づけている。疑いなく、習主席は残る4例に私たちの目を向けさせたかったのだろう。

トゥキディデスの罠は双方が認識しており、歴史は決定論的ではないと理解しているにもかかわらず、米中は結局その罠に陥りつつあるようだ。世界の二大国による熱い戦争はいまだ現実味に乏しいものの、冷戦の可能性は高まっている。

米国は現在の緊張の原因を中国に求めている。2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、中国は世界の貿易・投資体制の恩恵を享受する一方で、義務を果たさず、そのルールにただ乗りしてきた。米国によれば、中国は知的財産の窃取、強制的な技術移転、国内企業への補助金、その他の国家資本主義的手段によって不当な優位を得てきた。同時に、中国政府はますます権威主義的になり、中国をオーウェル的な監視国家へと変えつつある。

一方、中国側は、米国の真の狙いは中国のさらなる台頭や、海外で正当な力と影響力を行使することを阻止することだと疑っている。中国側からすれば、世界第2位の経済大国(GDPベース)が国際舞台で存在感を高めようとするのは当然のことだ。さらに指導者たちは、自国の体制は、政治が停滞する西側諸国の制度では決してできなかったほど、14億人の中国国民の物質的な豊かさを向上させたと主張するだろう。

どちらの主張により説得力があるかにかかわらず、経済、貿易、技術、地政学をめぐる緊張の高まりは避けられなかったのかもしれない。貿易戦争として始まったものは今や、相互の敵意が恒常化する事態へと発展する恐れがある。それは、トランプ政権の国家安全保障戦略にも表れている。同戦略は、中国をあらゆる面で封じ込めるべき戦略的「競争相手」と位置づけている。

これを受け、米国は機微な分野における中国の対内直接投資を大幅に制限し、人工知能や5Gなどの戦略産業で西側の優位を確保するため、ほかの措置も講じている。また、ユーラシア大陸全域でインフラ事業を建設する中国の大規模計画「一帯一路」への参加を見送るよう、パートナー国や同盟国に圧力をかけている。さらに、増加させているのが、東シナ海と南シナ海における米海軍の哨戒活動だ。これらの海域では、中国が根拠の乏しい領有権主張をより強硬に押し通すようになっている。

米中冷戦が世界にもたらす影響は、米ソ冷戦の影響をさらに上回る深刻なものとなるだろう。ソ連は経済モデルが破綻しつつある衰退国だったが、中国は間もなく世界最大の経済大国となり、その後も成長を続ける。さらに、米ソ間の貿易はごくわずかだった一方、中国は世界の貿易・投資体制に完全に組み込まれ、とりわけ米国と深く結びついている。

したがって、本格的な冷戦は脱グローバル化の新たな段階を引き起こすか、少なくとも世界経済を両立不可能な二つの経済圏に分断する可能性がある。どちらの場合も、財、サービス、資本、労働力、技術、データの取引は大幅に制限され、デジタル領域は西側と中国のノードが互いにつながらない「スプリンターネット」となるだろう。米国がZTEとHuaweiに制裁を科した今、中国は自国の巨大テック企業が不可欠な部品を国内で、あるいは少なくとも米国に依存しない友好国の貿易相手から調達できるよう、急いで手を打つことになる。

この分断された世界では、中国も米国も他のすべての国に陣営を選ぶよう求める一方、多くの政府は両国との良好な経済関係を保つため、難しい舵取りを試みるだろう。実際、現在、多くの米国の同盟国は、貿易や投資の面で米国よりも中国との取引が多い。しかし、AIや5Gなどの重要技術へのアクセスを中国と米国がそれぞれ別個に管理する将来の経済では、中間の立場を維持することはおそらく不可能になる。すべての国が選択を迫られ、世界は長期にわたる脱グローバル化の過程に入る可能性が十分にある。

何が起きようとも、米中関係は今世紀の地政学上の最重要課題となる。ある程度の競争は避けられない。だが理想的には、双方が建設的に競争を管理し、ある問題では協力し、別の問題では健全に競い合えるようにするだろう。つまり、台頭が避けられない新興大国には、世界のルールや制度の形成において役割を与えるべきだとの認識に基づき、中国と米国が新たな国際秩序を築くことになる。

米中関係が適切に管理されず、米国が中国の発展を妨げ、その台頭を封じ込めようとし、中国がアジアや世界各地で強引に力を行使すれば、本格的な冷戦が起こり、熱い戦争(あるいは一連の代理戦争)も排除できない。21世紀のトゥキディデスの罠は、米国と中国だけでなく、世界全体をのみ込むことになる。

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