テクノロジーが地政学をどう形作るか:7つの見解

A QR code for the "LeaveHomeSafe" COVID-19 contact-tracing app is posted at a shopping mall, following the coronavirus disease (COVID-19) outbreak, in Hong Kong, China February 16, 2021. REUTERS/Tyrone Siu - RC2NTL9XCG3V
What is the biggest impact technology will have on geopolitics in the coming year – and what should be done?Image: REUTERS/Tyrone Siu
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この記事は当初、Forbesに掲載された。

パンデミックによって生まれた新たなデジタル時代が始まって1年、そして第4次産業革命が大きく進展するなか、テクノロジーと地政学の関係をめぐる新たな構図が見え始めている。人工知能、ブロックチェーン、5Gの能力は、世界的な競争や協調の最前線となりつつある。こうした動きにより、これらの新技術の恩恵を広げ、リスクを軽減するための世界的な規範や議定書が必要になっている。

最先端技術の価値は大きい。5Gだけでも、2035年までに世界で生み出す経済価値は13兆ドル、雇用は2,200万件に達すると予測されている。また、人工知能は予測されているように、2030年までに世界経済に15兆ドル超をもたらす。中国と米国がこれらの分野への大規模投資を発表、または検討していることは、近い将来、これらの技術が重要な地政学的役割を果たすことを明確に示している。

重要なのは、テクノロジーが必ずしも世界的な対立の要因になるわけではないということだ。グリーンテクノロジーをめぐり、中東でかつての敵対国同士がパートナーシップを築いていることは、イノベーションが国境を越えた協調を強める基盤となりうる一例にすぎない。

急速なイノベーションと不安定な地政学的情勢が同時に見られるなか、世界経済フォーラムは地政学に関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーに、来年、テクノロジーが地政学に及ぼす影響について見解を求めた。

「規範とルールについて合意する必要がある」

インターネットの自由度はどれほどか?Image: Freedom House/NPR

マーク・レナード、欧州外交問題評議会(ECFR)所長

テクノロジーをめぐる最大の課題は、それが国有化され、兵器化されていることだ。現代世界の権力を示す新たな地図は、もはや地理や領土、海洋の支配によって定義されるのではなく、人々、物資、資金、データの流れを掌握し、テクノロジーが生み出すつながりを利用することで形作られる。この意味で、エネルギーの流れからIT規格に至るまで、国家間のあらゆるつながりが地政学の道具となる。

各国が補助金、規制、輸出管理、エンティティ・リスト、現地化を使って、自国は重要技術へのアクセスを確保する一方、他国のアクセスを制限するなかで、グローバル化の分断が進んでいる。グローバル化がバルカン化すれば、企業は板挟みとなり、余剰能力を計画的に確保するか、市場を選ぶかを迫られる恐れがある。消費者は高価格に直面する。そして国家は脅迫される危険がある。最も懸念されるのは、この技術競争が制御不能なほど激化し、世界の安全保障を脅かすことだ。生活に不可欠なつながりが地政学的な道具にも変えられているのなら、危険性を抑えるための規範とルールに合意する必要がある。

「相互接続性がさらに損なわれる可能性がある」

フョードル・ルキヤノフ、ヴァルダイ・ディスカッション・クラブ研究ディレクター

国際的な地政学秩序に対するテクノロジーの主な影響は、コミュニケーションの国境を越える性質と、国家によるそれへの抵抗の高まりとの間に生じる隔たりが広がることからもたらされる。

世界はますます分断されており、パンデミックによってその傾向は一層強まった。その結果、コミュニケーションは依然としてグローバル化を支える最も重要な要素だ。しかし、コミュニケーションの手段は主に民間の「ビッグテック」企業が提供している。こうした企業は、一方では事業を展開する国に対する説明責任がほとんどなく、他方では国家に根差しており、米国、中国、その他の国の影響を外部に伝える経路と見なされることもある。

地政学的影響力をめぐる主戦場は、誰がテック企業を所有し、どの企業を傘下に置くかをめぐるものになる。Image: Statista/Financial Times/Yahoo! Finance

より高度なコミュニケーション手段が導入されるにつれ、各国政府の疑念は強まるだろう。国家が自国を脆弱だと感じるほど、より厳しい管理を課し、実施しようとする。その結果、経済や政治の分野ですでに見られるように、相互接続性がさらに損なわれ、企業は市場機会の獲得に苦労するかもしれない。これらが重なれば緊張が高まり、グローバル化した世界の一体性を保つことが難しくなる可能性がある。

テック企業:「地政学的影響力をめぐる主戦場」

スサナ・マルコラ、IE大学グローバル・公共問題学部長

2021年以降、テクノロジーが地政学にもたらす最大の影響は、主としてテクノロジーそのものからではなく、それを取り巻くシステムから生じるだろう。世界の捉え方、経済価値の創出方法、イノベーションの推進方法、そして権力の持ち方は、「アテンション・エコノミー」あるいは「監視資本主義」と呼ばれる状況のなかで、少数の「ビッグテック」企業に集中している。

したがって、地政学的影響力をめぐる主戦場は、誰がテック企業を所有し、どの企業を傘下に置くかとなる。同じく重要なのは、誰がそれらを統治し、サプライチェーンをどのように統合するかだ。それだけではない。こうした企業のプラットフォーム上で作られるコンテンツも、対立が続く分野だ。「トロール・ファーム」が検索エンジン最適化や、オンラインで人々が目にするコンテンツに影響を与えようとしている。

民主主義国にはデータ共有、「共通規格」、「技術インフラ」が必要

ロビン・ニブルット、チャタムハウス(王立国際問題研究所)所長兼最高経営責任者

各国が新型コロナウイルス感染症のパンデミックから立ち直る速度は、将来の世界経済・政治権力の均衡に重大な影響を及ぼす。迅速なゲノム解析ができる国は、パンデミックへの対応で一歩先を行ける。最先端のブロードバンドを備える国は、新たなオンライン経済活動に最も速く適応する。そして、国民の健康データと医療対応を統合できる国は、再び感染が拡大することなく経済を再始動できる。

中国はパンデミックの間に、技術力と経済規模を高め、西側諸国に比べて台頭を加速させてきた。民主主義国が相対的な地政学的影響力のさらなる低下を避けるには、国民の健康データ共有を妨げる障壁を取り除き、ワクチン開発と試験に関する共通規格を策定し、将来の繁栄と安全保障を支える技術インフラに共同で投資する必要がある。

中国と米国は、5Gへの大規模投資を発表、または検討している。Image: REUTERS/Ivan Alvarado

課題には「共同で、国境を越えて」取り組まなければならない

サミール・サラン、オブザーバー研究財団(ORF)総裁

この1年は、世界規模で前例のない混乱が起きた年だった。同時に、テクノロジーが従来の地政学を打ち破る存在として台頭した年でもあった。パンデミック後の世界は、テクノロジーに関する既知および未知の課題に対処しなければならない。課題は、AIやロボット工学など新たな領域がもたらす影響から、サイバー攻撃の増加、そして国家主権に挑む「ビッグテック」まで多岐にわたる。

先の見通せない状況は、持続的な経済成長の追求、国家安全保障上の懸念の高まり、個人の権利を求める声の拡大を三辺とする、いわゆる「不可能な三角形」を形作る。どの政府、共同体、国も、三つすべての利害を全員が満足する形で満たせないからこそ、不可能な三角形なのだ。

この不可能な三角形の中心に、テクノロジーと地政学の交差点がある。国家だけを唯一の対話主体とする考え方は時代遅れだ。政府、企業、個人は、テクノロジーの台頭がもたらす政治的課題に、共同で、国境を越えて取り組まなければならない。これはひいては、地政学的な動向、さらには世界政治を調整する枠組みや制度にも深い影響を及ぼす。

「データがもたらす計り知れない恩恵と甚大なリスクの双方に対処するため、協力しなければならない」

データは、共同体と公益に関わる問題だ。Image: REUTERS/Jason Cairnduff/イラスト

ベラ・ソングウェ、国連事務次長兼アフリカ経済委員会(UNECA)事務局長

現在のインターネットの分断、HuaweiとZTEの禁止、プライバシー重視は、いずれもデータをめぐる問題だ。

今日、データは最も価値の高い資産の一つだ。公的・民間の主体によるデータの広範な収集と利用は、個人の意思決定、人権、集団行動、社会的結束に影響を及ぼす。データの生成、利用、管理は、将来の経済を左右する重要な要因となる。

データは、個人対大企業対国家主権という問題にとどまらない。共同体と公益に関わる問題だ。価値あるデータの多くは容易に入手・移転でき、人口の大集団に影響を及ぼすために利用される。そのため、すべての人々の公平性を確保できるのは、世界および地域の機関と協定だけだ。WTOやAfCFTAを含む多くの機関や仕組みは、データ問題の変化に追いつき、対処するうえで課題を抱えている。しかし、新型コロナウイルス感染症への国際的な対応が示したように、データがもたらす計り知れない恩恵と甚大なリスクの双方に対処するため、私たちは協力しなければならない。世界全体への影響があまりにも大きく、ほかの選択肢はない。

「不必要で危険な地政学的対立の根拠」

ダニー・クア、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院長、経済学リー・カ・シン教授

差し迫った影響として、政治体制ごとの技術規範の違いに反応し、地政学的対立が激化するだろう。確かに、技術規格が一つだけなら世界はより効率的になるかもしれない。しかし、新型コロナウイルス感染症後の世界に必要なのは、効率性だけでなくレジリエンスだ。規格が競合すれば、堅牢性が高まる。

安全性と信頼は問題になるだろうか。なるだろう。システムによってプライバシーや管理のあり方は異なる。したがって、技術構造は分けておき、地域ごとの人々が望むものを選べるようにするのが最善だ。そうしなければ、全員に適した唯一のシステムを誰が決めるのだろうか。

トーマス・ジェファーソンの言葉を言い換えれば、テクノロジーと思想は闇を払う。競合しないため、私の道を暗くすることなく、あなたの道を照らす。しかし、地政学的な議論は、技術競争をめぐるゼロサムの対立姿勢に落ち着いてしまった。

では、最大の影響とは何か。テクノロジーを差異の象徴として過度に神格化した結果、それを不必要で危険な地政学的対立の根拠にしてしまったことだ。

詳しくは、世界経済フォーラムの地政学に関するグローバル・フューチャー・カウンシルをご覧ください。

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