中東戦争により、世界の石油供給に歴史的な混乱が生じ、価格が急騰するとともに、広範なエネルギー危機が起きている。
世界各国の政府は、燃料需要の抑制と消費者保護に向けた措置を実施している。
今回の危機は、地経学的緊張がグローバルなエネルギーシステムやより広範な経済の安定に及ぼす影響が拡大していることを浮き彫りにしている。
中東での戦争は、国際エネルギー機関(IEA)が「世界の石油供給における史上最大の混乱」と表現する事態を引き起こし、世界各国の政府に対し、需要を抑制し消費者を守るための緊急措置を速やかに講じるよう迫っている。
危機の中心にあるのは、通常、世界の石油供給の20%が通過する重要な要衝であるホルムズ海峡である。戦争の勃発後、同海峡を通過する流量は通常時のごく一部にまで減少し、世界のエネルギー供給は大きく制約されている。
影響は即座に、かつ深刻に表れた。世界の石油供給量が落ち込み、3月には1日当たり1,000万バレル以上の減少となった。原油価格は1バレル当たり100ドルを超えて急騰し、ディーゼルやジェット燃料などの精製燃料の価格はさらに速いペースで上昇したと、IEAは述べている。
「中東での戦争は、世界の石油市場の歴史上最大の供給途絶を含む大規模なエネルギー危機を引き起こしている」とIEAのファティ・ビロル事務局長は声明で述べた。「早期の解決が見込めない場合、エネルギー市場と経済への影響は今後さらに深刻になる見通しだ。」
こうした状況を受け、各国政府はエネルギーの節約と国内需要の抑制に向けて行動を起こしている。IEAのエネルギー危機政策トラッカーを基に、各国で最も多く見られる6つの対応策を紹介する。
1. 在宅勤務と在宅学習の導入
リモートワークやリモート学習の奨励・義務化は、通勤と事業所施設の利用を減らすことで消費を抑えられるため、燃料需要を減らす主要な手段として浮上している。
例えばインドネシアは、金曜日に公共部門の従業員に在宅勤務を義務付けており、ミャンマーは水曜日のリモートワークを義務付けている。パキスタンやフィリピンなど他の国々は、公務員に週4日勤務制を導入している。
一方、スリランカ、ペルー、バングラデシュなどの国々は、学校の週授業日数を短縮したり、遠隔学習を拡大したりしている。
2. 建物の冷房を制限
各国政府は、エネルギー消費を抑えるため、建物や施設の利用に目を向けている。
タイ、バングラデシュ、カンボジアは、公共機関でのエアコン使用に温度制限を課すか、その導入を奨励している。ヨルダンは政府機関でのエアコン使用を全面的に禁止した。
冷房の制限は、電力需要が急増して既に逼迫しているエネルギーシステムに負荷がかかりうる温暖な気候の国々において、特に重要である。
3. 公共交通機関の利用促進
輸送は石油需要を削減する最大の手段の一つであり、各国政府は私的な移動を減らし、公共交通機関の利用を増やす取り組みを進めている。
例えばリトアニアは、2か月間にわたり地域鉄道の運賃を50%引き下げた。フィリピンは、選ばれた都市で学生と労働者に無料のバス乗車を提供している。一方、フランスは、通勤に私用車へ頼る低所得者向けの電気自動車のソーシャルリース制度を更新した。チリはまた、電気自動車を購入するタクシー運転手への財政支援も提供している。
タイやアルゼンチンなど他の国々は、ガソリンのブレンドにおけるバイオエタノールの含有率を高めることを認めるよう規制を変更している。
4. 政府による出張の制限
燃料消費を減らし、模範を示すため、公共部門の出張は縮小されつつある。
韓国は公共部門の職員に対する運転制限を義務付けており、ヨルダンとパキスタンは公務員の海外出張を禁止している。ヨルダンはまた、外国代表団の受け入れも制限している。
スリランカも政府職員の移動を制限し、公共交通機関の利用を促している。
5. 価格上限の設定と補助金の支給
一部の政府は、家計と企業を上昇するコストから守るため、燃料市場に直接介入している。
例えばクロアチアとハンガリーは燃料価格の上限を設定し、チェコは小売業者の利益率を制限した。中国は国内の精製石油価格に上限を設け、日本は補助金を活用した燃料価格の上限制度を導入した。
これらの措置は即時的な救済をもたらすものの、財政上のトレードオフを伴い、消費削減へのインセンティブを弱める可能性がある。
6. 全国的な省エネキャンペーンの展開
政策による義務付けと並行して、各国政府は国民に行動変容を直接呼びかけている。
オーストラリアは「Every Little Bit Helps」キャンペーンを通じて燃料使用とエネルギー消費の自主的な削減を呼びかけ、エジプトは国民に私的・商業用の照明を制限し、週末の店舗営業時間を短縮するよう求めている。
モザンビーク、ラオス(Lao PDR)、エチオピア、ベトナムなど、その他のいくつかの国々も、国民に省エネ行動を取るよう促している。
地経学的対立と世界的リスク
世界的な省エネ措置は、数十年で最も広範な需要抑制の取り組みの一つである。さらに、地政学的・地経学的な対立が世界経済に及ぼす重大な影響が、ますます強まっていることを浮き彫りにしている。
1月、世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2026』は、短期的にリスク専門家が最も懸念する事項として地経学的対立を第1位に挙げた。調査回答者は、2026年に世界的な深刻な危機を引き起こす可能性が最も高いリスクとしてこれを挙げた。国家を主体とする武力紛争が2位に続いた。
「地経学的対立は、相互につながった世界経済の中核を脅かしている」と報告書は述べ、そうした対立は多国間システムの弱体化の原因であると同時に結果でもあると指摘している。「一方的な行動に対する多国間的な制約が減る中、国家間の障壁の高まりと利害の衝突は、世界中で経済的・社会的な悪影響をもたらしかねない。」

