難しい隣国との商業関係を管理するための4つの原則

Image: Kyle Glenn/Unsplash
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  • 世界が紛争の増加に直面するなか、地政学と外交はこれまで以上に重要になっています。

  • 難しい隣国との商業関係を管理するには、外交、現実主義、戦略的先見性の繊細なバランスが求められます。

  • このバランスを導く原則として、中核となる方向性に多角化と関与を据え、透明性とコンプライアンスを道しるべとすることが挙げられます。

「太古の昔、友好的な隣国など存在しなかった。どの国の領土も、その境界を越えれば、そこには命を脅かす敵の土地が広がっていた」

イマヌエル・カント『永遠平和のために』M・キャンベル・スミス訳

現代の国際関係は、カントの言葉が示す時代とは異なります。グローバル化によって地理の役割は小さくなりましたが、商業活動も紛争も、今なお主に隣国間で起きています。

Image: 世界平和度指数

によると、2023年版世界平和度指数(GPI)世界の平和度は2008年以降、悪化しています。近年の悪化をもたらした主な要因は、国家間の紛争です。ロシアによるウクライナ侵攻とその広範な影響は大きな役割を果たしましたが、この侵攻以前から、世界的に紛争の激しさは増していました。

2023年版GPIは、中東・北アフリカ(MENA)を平和度が2番目に大きく改善した地域と位置づける一方、この地域では紛争も大幅に激化しています。他の地域でも緊張が高まり、各国政府による軍事力の増強が続いています。GPIによると、暴力が世界経済に与えた影響は、2022年に17.5兆ドルと推計されました。これは世界のGDPの12.9%、または1人当たり2,200ドルに相当します。

そこで問われるのは、地域紛争が拡大する世界で、商業関係をどのように管理できるかということです。とりわけ、世界最大の経済大国であり軍事大国でもある国々の間で、地政学的な競争が続き、さらに多くの国々が外交・経済政策において、価値観に基づく非貿易目的を追求するなかで、その問いは重要です。

難しい隣国との商業関係を管理するには、外交、現実主義、戦略的先見性の繊細なバランスが求められます。原則に基づくアプローチは、政治指導者がこの難局を乗り越えるための道しるべ、つまり北極星となるべきです。

このような原則に基づくアプローチを導く、4つの原則を紹介します。

1)市場の多角化:「デリスキング」とも呼ばれるこの考え方は、緊張した関係に陥る可能性のある隣国への依存を減らすため、企業に輸出市場と調達先の両方を多角化するよう促します。そのためには、政府が主導して、産業界によるリスク軽減策の策定を支援する必要があります。具体的には、サプライチェーンの多角化、代替輸送ルートの確保、政治リスク保険への投資などが挙げられます。これらの取り組みによって、政治的不安定が商業活動に及ぼす影響を最小限に抑えられます。

例えば、2006年以前、ジョージアは隣国ロシアの市場に大きく依存していました。ロシアはこの依存関係を利用してジョージアの国内政治に影響を及ぼすとともに、ワインやミネラルウォーターなど主要なジョージア産輸出品を禁輸しました。

これはジョージア経済に短期的な悪影響を明確にもたらしましたが、ジョージア政府が企業への支援を拡大し、新たな市場を目指す、世界で競争力のある製品の開発を促すきっかけにもなりました。その結果、2005年から2023年にかけて、ジョージアの輸出に占めるロシア市場の割合は約40%低下しました。現在、ジョージアは自由貿易協定のネットワークが世界でも最大級の国の一つであり、EU加盟候補国です。

Image: ジョージア国家統計局
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2)経済協力の再構築を通じた関与:多角化は、問題を抱える隣国との商業関係を完全に断つことを意味しません。むしろ、その逆です。双方に利益をもたらす経済協力の取り組みを促進し、平和的な関係を維持する動機となる相互依存を築く方法を見いだすことです。互いに全面的に依存する状態から脱することで、信頼の構築と緊張の緩和に向けた取り組みを後押しします。

オーストラリアは、中国との関係について、ペニー・ウォン豪外相によれば、「安定的で、生産的かつ成熟した」関係を望んでおり、「対話によって相違を管理できる」としています。ウォン氏は最近、貿易、地域の安全保障、人権をめぐり、中国側の外相とキャンベラで「率直な」協議を行った後、この発言をしました。

マーティンらは軍事紛争と貿易の関係を、理論と実証の両面から分析しました。二国間貿易と多国間貿易が戦争の可能性に及ぼす影響は、互いに逆方向であると指摘しています。二国間貿易は、二国間戦争の機会費用を高め、それによって戦争の可能性を抑えると結論づけています。一方、多国間貿易の開放性は、特定の国との関係におけるこの機会費用を低下させます。その結果、緊張緩和に向けた交渉で譲歩する動機が弱まり、国家間の戦争の可能性が高まります。

3)市民社会の関与を通じた透明性:市民社会は、政府の政策や意思決定プロセスの透明性を求めます。透明性のある統治慣行は、関係者間の信頼を築き、政治的な配慮が商業関係に不当に影響しているという疑念を減らすのに役立ちます。市民社会は、国際協定や制裁制度の実施を監視するうえで重要な役割を果たし、各国政府が国際的な約束を守り、人権を尊重し、脆弱な立場にある人々を保護するよう促すことができます。政府は、表現の自由や結社の自由など、標準的な保護を憲法に盛り込むことで、市民社会が活動できる十分な余地を確保しなければなりません。また、国内裁判所がこうした保護を支持できるよう、その能力と権限を強化する必要があります。

4)国際規範の遵守:容易ではない場合もありますが、政府は政治的な紛争と経済的な交流を明確に区別する法的枠組みと手続きを整える必要があります。その方法の一つは、人権、不拡散、テロ対策などに関する国際規範と義務を守ることです。これにより信頼が築かれ、国際社会における信用が確保されます。また、政治的な紛争に関与した特定の個人、団体、部門に対象を絞り、予測可能かつ的を絞った選択的な制裁を実施することも含まれます。同様に、制裁制度に人道上の適用除外を設ければ、食料、医薬品、人道支援など不可欠な物資やサービスが、影響を受ける人々に滞りなく届くようになります。

難しい隣国との商業関係を管理するには、経済的利益と地政学的現実のバランスを取る、きめ細かく原則に基づいたアプローチが必要です。世界情勢が変化するなか、上記の原則は複雑な関係を乗り越えるための道筋を示します。

中核となる方向性としての多角化と関与、そして道しるべとしての透明性とコンプライアンスは、経済的利益を守り、世界の平和と安定に寄与します。

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