データが腐敗との闘いを変えつつある。パナマとブラジルの事例が、その様子を示している。
2016年4月、パナマ文書はタックスヘイブンを利用して世界のエリート層の資産を隠していた、オフショア企業、信託、財団の不透明な取引を明らかにした。データ分析のスタートアップ企業は、調査報道記者が1,150万件を超える文書を精査し、点と点を結び付けるのを支援した。
その余波は深刻だった。公表から数日のうちに、世界各地の高官数十人が窮地に立たされた。データの出所は、パナマに拠点を置く法律事務所モサック・フォンセカの内部からの情報漏えいだった。
わずか数カ月後の2016年8月、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領が弾劾された。同国は国有石油会社に関連する汚職スキャンダルに巻き込まれていたが、弾劾の法的根拠は限定的な技術上の問題だった。要するに、公的財政の実態を覆い隠すために会計上の操作を行ったとして、有罪と判断されたのである。
不正は、市民社会組織のコンタス・アベルタスによって最初に発見された。同組織は、ブラジルの情報公開法に基づいて公開され、主要な透明性ポータルを通じて開示された予算データを精査していた。コンタス・アベルタスは不正について会計検査院に通報し、同院は調査を開始し、政治はその後の展開をたどった。この事例で使われた情報は、一般に公開されている政府データだった。

ビッグデータもオープンデータも、確かに腐敗対策の状況を変えつつある。だが、こうした出来事は状況を一変させる転機と言えるのだろうか?
まず、ビッグデータについて。ビッグデータは、量(データセットが巨大であること)、速度(データが頻繁に生成されること)、多様性(データの出所や形式が多岐にわたること)を特徴とする。一方、データの正確さ、つまり真実性への懸念もしばしば生じる。データは膨大にある。私たちの行動、交流、取引によって、毎日250京バイトものデータが生み出されている。デジタル革命を追い風に、政府も行政の仕組みや公共サービスの質に関するデータをますます蓄積している。こうしたデータの一部を高度なアルゴリズムで処理することで、分析者はパターンを特定し、行動を予測できる。
次に、オープンデータについて。1990年代以降、各国政府は情報公開法やウェブポータルを導入し、市民が政府情報を請求し、入手する権利を認めてきた。しかし、データの透明性を定める法律の制定には、改革を志す政府の勇気が求められることが多く、情報は権力であるため、その施行も容易ではない。
2011年以降、70カ国が世界的なオープン・ガバメント・パートナーシップに参加し、市民に使いやすいオープンデータツールの例もある。たとえば、ニューヨーク市のCheckbook NYC 2.0は市の予算を公開し、コロンビアのMaparegalíasは鉱業ロイヤルティを公開している。しかし、全体としても世界的にも、政府データは依然として隠されたままだ。Global Open Data Indexによると、政府データセットのうちオープン形式で公開されているものは10%未満である。汚職のリスクが特に高い公共調達のデータは、とりわけ不透明だ。Open Contracting Partnershipが調査した120カ国のうち、入札や落札に関する質の高いタイムリーなデータを提供している国は10%未満にとどまる。
データが公開されていれば、とりわけビッグデータであれば、分析によって汚職を発見し、防止し、抑止できる。データサイエンティストは腐敗対策の取り組みと連携し、技術を活用したアプリケーションや強力な腐敗対策分析ツールの開発に取り組んでいる。
インドでは、アプリの「I paid a bribe(賄賂を払った)」が市民に、政府職員とのやり取りで起きた贈収賄や詐欺を報告する手段を提供している。このプラットフォームは、創設者のスワティ・ラマナサンが「小口汚職」と呼ぶ問題、つまり最貧困層に最も大きな打撃を与える、官僚による些細な賄賂の要求に立ち向かう助けとなる。
しかし、これらは通報の仕組みにすぎず、救済措置にはつながらない。ブラジルでは、公共支出監視機関が政府の透明性ポータルで公開された、約5兆ドルの支出を追跡している。同機関は分析を用い、受給者リストと連邦自動車登録簿を照合して、同国最大の社会福祉プログラム「ボルサ・ファミリア」における不正を明らかにし、受給資格のない人々を数千人特定した。
ジョージアでは、トランスペアレンシー・インターナショナルがオープンソースの公共契約ポータルを立ち上げた。政府の電子調達ウェブサイトからデータを抽出し、競争性のない契約やその他の疑わしい取引を調査できる。同様にコロンビアでは、大統領府の透明性事務局が、市民が未完成または過大請求の公共事業を通報できるアプリを開発した。2015年末までに、このような事業を83件特定し、その総額は約5億ドルに上った。これを受け、法執行当局は刑事手続きを開始した。
ビッグデータとオープンデータには期待が寄せられているが、汚職対策の万能薬ではない。政府機関にも市民社会にも共通する、汚職との闘いにデータを最大限活用するための重要な点は4つある。
有益な知見を得るには、腐敗対策分析に良質なデータと分析能力が必要である。分析には、公式統計から行政登録簿まで、信頼できるデータが欠かせない。そうでなければ、「ゴミを入れればゴミが出てくる」ことになる。ここから、国の統計機関が果たす重要な役割が分かる。効果的な分析には、組織内に十分な分析能力を備えることも必要だ。データサイエンティストの需要は高く、公共部門が採用するのは難しい。データに精通した人材を引き付け、データを活用し、イノベーションを育むため、研究拠点を設置する国や都市もある。
成果を上げるには、腐敗対策分析を国のインテグリティ制度に組み込む必要がある。訴追につなげ、汚職を未然に防ぐ是正措置を生み出すには、苦情申立ての仕組みや腐敗対策機関と連携させなければならない。また、データ分析を政策サイクルに組み込んでこそ意味を持つ。データに適切な問いを投げかけ、政策立案にフィードバックし、腐敗対策改革を可能にするためだ。分析は政府の監督能力や洞察力を高めるが、経験豊かな政策立案者の直感や先見性に取って代わることはできない。
腐敗対策分析そのものも透明でなければならない。高度に専門的な技能を必要とするツールは、少数の人々に支配される恐れがあり、ビッグデータも例外ではない。私たちは「アルゴリズムに説明責任を持たせ」なければならない。また、データの欠落には特に注意を払う必要がある。とりわけ、インターネット普及率の低い地域に関する意思決定では、不平等を助長しないよう慎重さが求められる。
透明性の領域でほとんど顧みられてこなかった企業データも公開しなければならない。パナマ文書の内部告発者であるジョン・ドウによれば、「データ革命は始まったばかり」だ。それは「汚職のゲーム」を変え、違法行為の温床となることが多い政府の不透明さや情報の非対称性を減らしている。パナマ文書は、企業界にどれほど多くのものが隠されているか、そして不透明さがどれほど大きな害をもたらし得るかを示唆した。Open CorporatesやOpen Oilなどのプロジェクトは実態に光を当てようとしているが、取り組むべきことはまだ多い。
こうした状況において、世界経済フォーラムの「信頼とインテグリティの基盤構築に向けた腐敗対策パートナーシップ・イニシアチブ」のプラットフォームは、リスクを軽減し、透明性を高め、政府と企業の関係に変化をもたらす、革新的でデジタル技術を活用したデータ主導のソリューションを促進するうえで、重要な貢献を果たし得る。
この記事は、Stanford Social Innovation Reviewに掲載された記事の一部である。


