世界金融危機を受けて浮上した大きな問いの一つ、とりわけユーロ圏における問いは、健全な財政を回復しながら、各国の潜在成長率をどう引き上げるかということだ。たとえばユーロ圏は、最近いくつか明るいニュースがあったにもかかわらず、高水準の公的債務と並んで、成長見通しが下方修正されている。高債務と低調な潜在成長率の組み合わせは、持続的な成長と安全で強靱な財政の見通しを改善する重要性を浮き彫りにしている。そこで根本的な問いが生じる。財政再建と構造改革の関係はどのようなものか。
明らかに、財政面の構造改革は、健全で強固かつ強靱な、成長に資する財政制度の構築に役立つ。その一例は、自動安定化装置、すなわち財政面の自動ショック吸収装置を、経済活動の変動を和らげるために双方向に機能させることだ。こうした安定性の向上は、ひいては経済成長に驚くほど大きな影響を及ぼす(詳細は、4月8日発行予定のIMF『財政モニター』春季号をご覧いただきたい)。しかし、より一般的に言えば、財政枠組みはマクロ経済リスク管理の重要な一部であり、私が最近のブログ「公的財政のためのダムと堤防」で論じたとおりである。慎重な財政政策運営は、安定的で持続可能な成長の礎である。
成長を支えるうえで、財政政策が果たし得る役割は、さらに少なくとも三つある。第一に、構造改革の実施には財政手段が用いられることがある。第二に、財政政策は構造改革に向けた政治的合意の形成に役立つ。第三に、財政政策は改革の利益が実現する時期を調整し、移行を円滑にすることができる。労働市場改革は、これら三つの役割を示している。
労働市場改革では財政手段が活用されることがある。労働税と社会保険料の引き下げは、雇用と経済活動にプラスの影響を与え得る。直接的な財政コストは生じるものの、対象を特定の集団に絞って減税することで、コストを抑えられる。図1は、対象を絞った雇用主負担の社会保険料引き下げが有効であることを示している。ドイツでは高齢者、スウェーデンでは若年層を対象とし、対象セグメントの雇用増加率は人口全体を上回った。

財政政策は、提案された構造改革によって不利益を受ける集団を補償するためにも活用できる。典型例は、雇用保護の変更が、従業員に利益をもたらす措置と組み合わされる場合である。図2が示すように、1990年代、スウェーデンとフィンランドは雇用保護の縮小と並行して労働税を引き下げた。
財政政策は、改革が短期的にもたらす可能性のある経済への悪影響を相殺することもできる。それにより、長期的な利益が実現するまでの時間を確保できる。
たとえば、生産性の高い公共投資を通じて短期的な需要を下支えできる。そのための条件は、近日発表予定のIMF政策文書「公共投資の効率性向上」で示される。この対応は、金利がゼロ近辺にある場合(しばしばゼロ金利制約と呼ばれる)に特に適切である。このとき財政乗数は大きく、一部の改革がもたらし得るマイナスの影響も、より顕著になる可能性がある。図3は、雇用保護法制を縮小した場合の影響を示している。これは産出量の損失という点で、特にコストが大きい。シミュレーションによれば、財政政策は改革の潜在的な短期経済コストを相殺できるが、短期的には公的債務をわずかに増やすことにもなる。
では、構造改革を支援する財政政策のマクロ経済的な役割を、どのように評価すればよいのだろうか。いくつかの原則を提示できる。
第一に、財政政策は債務の持続可能性と市場の信頼を確保しなければならない。第二に、構造改革を最後まで実行するという信頼できるコミットメントが必要である。第三に、改革の費用と便益、そしてそれらが時間の経過とともにどのように実現するかを適切に見積もる必要がある。第四に、マクロ経済の状況と見通しを総合的に評価しなければならない。
これらは明らかに難しく複雑な課題である。財政政策と構造政策の潜在的な相乗効果を十分に活用するため、私たちは今後も検討を続けていく。
本記事は、 IMF Directとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:ヴィトール・ガスパールは、国際通貨基金の財政局長。
画像:2012年5月11日、東京の証券会社の外にある株価表示板を見る男性。REUTERS/Toru Hanai






