欧州は中小企業向け融資をどう拡大できるか?

欧州は中小企業向け融資をどう拡大できるか?
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欧州企業、とりわけ周辺国の企業は、外部資金調達の約80%を銀行に依存しているため、資金を呼び込むのに苦労している。しかし同時に、欧州には投資可能な資本が不足しているわけではなく、貯蓄者は投資先の選択肢が乏しく、リターンも低迷している。

問題は、欧州には複数形でいう資本市場は存在するものの、統一された欧州の資金調達システムが存在しないことだ。

この停滞を解消することを目指すのが資本市場同盟(CMU)である。余剰資源を持つ人々から、それを最も有効に活用できる人々へ資金を効率的に流す、新しく革新的な方法を見つけることが狙いだ。

多様な税制と各国の法制度は、CMUの実現に根本的な課題を突きつけている。この課題を解決するために必要な条約や指令は、まだ見通しが立っていない。主な論点の概要については、例えばVéron(2014)および欧州委員会の最近の2015年グリーンペーパーを参照されたい。

税制・法制度の抜本改革がない中でも、真に欧州規模の資金調達システムの実現を妨げる無数の他の障害の一部を取り除くことで、CMUに向けて一定の進展が得られると期待されている。そのためには、EUと各国当局が規制制度を適応させ、とりわけミクロ・プルーデンス規制を見直し、破壊的技術を受け入れる必要がある。

CMUが形成されれば、銀行やその他の高度に集中した資金調達経路への依存を減らし、システミックリスクの内部化や将来の救済に伴う規制コストを削減することで、システミックリスクを低下させる。しかし新たなシステミックリスクも生じるため、関係当局はそれらを理解し、対処できるようマクロ・プルーデンス規制を適応させる必要がある。

中小企業の課題

欧州の中小企業(SME)向け資金調達の80%超は銀行からのものだ。SMEはEU域内企業の99.8%、民間部門の雇用の67%を占めるため、銀行融資の不足は懸念事項である。これは、Giovannini et al.(2015)が論じた組織構造やガバナンスの欠陥など、SMEが直面する他の問題をさらに深刻化させる。

銀行システムは非効率なのか?

欧州のSMEの資金調達問題は、銀行が規制、とりわけバーゼルIIIの圧力を受け、自己資本を積み増すとともに、SMEのようなリスクの高い投資に対するリスク賦課を強めていることから生じている。銀行業界の競争が限られていること、さらには寡占状態にあることも、欧州の資金調達コストを押し上げている。

新たな仲介手段は役立つだろうか。銀行が他の仲介形態より本質的に非効率だと考える理由はなく、特にリレーションシップ・バンキングなど、銀行には確かな強みがある。そう考えると、新たな代替手段の余地はほとんどないように見える。しかし、もしそうなら、CMUがこれほど議論されることもないだろう。

システム上重要な存在であるため、銀行には個々の安全性を高めることがますます求められている。その安全性の確保にはコストがかかるため、資本バッファーを引き上げるバーゼルIIIは、CMUを推進する主な要因となっている。新たな代替手段はまだシステム上重要とは見なされておらず、この保険コストを負担する必要がない。その結果、銀行の相対的な非効率性が、CMUの存在意義となっている可能性がある。

しかし、新たな代替手段が銀行融資の不足を補えていないのは、障壁があまりにも多く残されているからだ。

課題

CMUの成功を阻む可能性のある要因は数多い。重要なものは多いが、とりわけ重大なのは法律、税制、規制であり、その一部は資金の国際的な流れを意図的に制限している。こうした課題は非常に機微で対処が難しく、長年議論されてきたものもある。

欧州当局が、立法や税制上の課題に効率的に対処するための優先度をCMUに十分与えるとは考えにくい。

むしろ、CMUに向けた具体的な動きは、より柔軟な規制プロセスから生まれる可能性が高い。CMUの出現を妨げる明示的な障壁はないが、個々には小さくても、積み重なるとイノベーションを阻害する規制上の制約が数多く存在する。

CMUの成功には破壊的イノベーションの受容が欠かせない

問題の根源は、現状維持を重視する規制上の要請にある。そしてその現状こそ、既存市場を破壊し、新たな市場を生み出す革新的技術によって脅かされている。

規制当局には、CMUを構成する代替的な仲介形態の誕生を促進する明確な使命が必要だ。大手銀行により適した、複雑でコストのかかるミクロ・プルーデンス規制を撤廃すべきである。

また、CMUを構成する新たな仕組みや構造に適した斬新な規制を策定すべきだ。これには、清算、決済、保管サービスに関する各国の障壁を取り除き、資本調達コストを削減することも含まれる。一例を挙げれば、一部の国は、欧州の金融商品市場指令(MiFID)が義務づける競争を排除するため、清算や登録に関する技術的障害を持ち出している。

妥当な取り組みの例は、英国金融行為規制機構(FCA)が採用するものだ。同機構の使命である「消費者と企業にとって市場が適切に機能するようにする」は、イノベーションと破壊的技術を歓迎している。こうした姿勢は、英国がクラウドファンディングなどの代替的な資金調達モデルで年間約200%の成長を実現する一助となった可能性がある。その規模は2014年に17億4,000万ポンドを超え、2015年には倍増すると予測されている(Nesta 2014)。

成功するCMUを規制によって成立させることはできない。しかし、市場の力を通じてCMUが出現できるよう、規制を再設計することは可能だ。

システミックリスク

銀行の主要な機能の一つであり、またシステミックリスクの主な発生源でもあるのが、満期変換である。このシステミックリスクへのヘッジが、CMUを動機づける要因の一つとなっている。

満期変換が代替的な投資形態へ移行しても、システミックリスクが消えるわけではない。むしろ、新たな機関に再び現れる可能性が高い。新技術はより分散的で多様であり、適切な証券化に依拠し、システム上重要な金融機関(SIFIs)を介さないため、こうした影響は部分的に緩和される。

しかし、危機の際に初めて顕在化する群集行動や相関したリスクテイクの危険は依然としてある。Danielsson et al.(2009)が論じたとおりだ。こうした突然の協調行動は、新興セクターでは検知がより難しい可能性がある。そのため、監督に十分な資金を投じるとともに、不透明性を促すほど過度な負担とならないようにすることが重要だ。

さらに、CMUが成功すれば、国や事業体の間に新たなつながりが生まれ、新たなシステミックリスクが生じる。そこには、重大なストレス時に初めて顕在化する可能性のある脆弱な接点が存在する。生産的な投資に資金を供給するCMUは、欧州全域での投機的投資も容易にし、モメンタムの蓄積や景気循環を増幅するシステミックリスクに寄与する。

システミックリスクの観点から、適切に機能するCMUは、既存の銀行中心の体制にとって有益な追加要素となり、システムの強靱性を高める。ただし、資本の流れが監視され、ルールが堅牢で、景気循環増幅性が抑制されることが条件だ。多様な資金調達経路を広げ、銀行への依存を減らすことで、CMUは、債務の水準が同じであればシステミックリスクを低下させるはずである。

結論

欧州にCMUが必要なのは、銀行システムがSMEに十分な資金を供給できないためだ。現行の規制、法制度、税制の枠組みは既存事業者を優遇しており、法制度や税制を実質的に変えるのはほぼ不可能だろう。

したがって、CMUを実現するには、EU、そして特に各国当局が既存の規制構造を改め、破壊的技術を促進するとともに、市場の力によって貯蓄と投資機会をより効率的に結びつける必要がある。

CMUが成功すれば、資金を最も有効に活用できる企業の資金調達へのアクセスが改善する。そしてイノベーション、競争力、システミックリスクの低減、ひいては成長をもたらす。

本記事は Vox EUとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Jon Danielssonは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのESRC資金提供によるSystemic Risk Centreのディレクター。Eva MichelerはLSEの法学准教授。Katja NeugebauerはLSEのSystemic Risk Centreの博士研究員。Andreas UthemannはLSEのSystemic Risk Centreのリサーチ・オフィサー。Jean-Pierre Zigrandは金融学准教授で、LSEのSystemic Risk Centreの共同ディレクター。

画像:カメラの多重露光機能を使って撮影した合成写真。1ユーロ硬貨と欧州地図が写っている。REUTERS/Kai Pfaffenbach

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