第四次産業革命と、その技術の進歩が個人や集団の暮らし方、働き方、交流のあり方をどのように変えているかについては、多くの議論が交わされています。こうした技術が社会に及ぼす影響を統治する責任を従来担ってきた政府、企業、市民社会組織は、急速な変化と指数関数的な影響への対応に苦慮し、より機敏になろうとしています。
意思決定者が既存のイノベーションに効果的に対応するだけでも十分難しそうですが、私たちはさらに高い目標を掲げるべきだと考えます。意図と先見性、目的意識を持って未来を形づくることです。今日の統治のあり方にとどまり、技術変化の力に受動的に対応するだけであってはなりません。むしろ、私たちが目指す民間と公共の双方の価値をより多く実現できるよう、先を見越して統治する必要があります。私たちはデザインによって統治する必要があります。それには何が求められるのでしょうか。
2018年12月、コペンハーゲンのデンマーク・デザイン・センターは、デンマーク・イノベーション基金およびデンマーク企業庁と協力し、さまざまな職業的背景を持つ世界各地の関係者100人を集め、「デザインによる統治」をどのように実現できるかを議論しました。参加者は、幅広い国際的な経験を踏まえ、より未来志向の統治を前進させるためのアプローチや手法、考え方を探りました。ここでは、4つの重要なヒントを紹介します。
1. 言葉遣いに気を配る
実験、政策ラボ、スクラム、デザインスプリント……イノベーターやデザイナーが魅力を感じるこうした言葉に、多くの政策立案者は身構えます。適切な説明や枠組みなしに、人々を「実験」したり、「実験室のような環境」に置いたりすることはできません。人々は実験の対象にされることを望みませんが、政策決定に役立てるために、意義ある形で参加することは望んでいます。
社会全体の利益を最大化するにあたって、性急になりすぎてはいけません。デザイン原則の価値については広く合意が得られていますが、すべての関係者がこのアプローチを受け入れるよう、適切な言葉を使う必要があります。「実験」の代わりに「学習」、「デザインスプリント」の代わりに「フィードバックループ」を使えば、大きな効果が期待できます。速さに焦点を当てるのではなく、協働的で包摂的なアプローチの特性に目を向ける必要があります。
2. 話し合いを減らし、行動を増やす
何事も実際にやってみなければ分かりません。政策は現実世界と関わって初めて実効性を持ちます。しかし政策立案者にとって、政策が最終決定と見なされる前に、現実の環境で共有し、試すことは容易ではありません。解決しようとする課題の相互依存性と複雑さが増すほど、政策の成果を予測する不確実性も高まるため、これは問題です。その結果、行動を起こすことに伴う政治的リスクも高まります。
政策イノベーションのための安全な場を設ける取り組みは、リスクを軽減し、失敗の影響を小さくするとともに、政策立案者が安心して率先して行動できるようにします。政策の専門家が創造性を発揮できると感じる考え方を育むには、話し合いを減らし、行動を増やすことが最善の方法かもしれません。
3. 政策立案者ではなく、政策のファシリテーターになる
従来、政策立案を担ってきた機関への信頼が低下するなか、政策の策定はもはや政府や企業(産業規制の場合)だけに限られず、ますます多様な関係者が参加する取り組みになっているとの認識が強まっています。これには、政策立案者の考え方を変える必要があります。政策立案者は、真に革新的なアイデアを取り入れられるよう、政策策定のプロセスを開かなければなりません。
そのためには、政策立案者やデザイナーが主役の座を降り、イノベーション・エコシステムの各主体が、意見を提供するだけでなく、成果を共に設計する立場として、プロセスに積極的に関わる、徹底して開かれたプロセスやアプローチを受け入れる必要があります。さらに政府は、公共調達など、通常はプロセスも成果物も過度に細かく指定される分野で、政府以外の主体や「意外な担い手」が参加できるよう、仕組みを開く必要があります。
公共の課題に対する最も有力な未来の解決策は、既存の大手テクノロジー企業ではなく小規模なデジタル・スタートアップから、あるいは従来の産業組織ではなく新しい形の社会的協働組織から生まれるかもしれません。こうした新たな担い手を、どうすればこの分野に迎え入れられるでしょうか。
4. 新たな政策ツールの実態を明らかにする
規制サンドボックスや政策ラボなど、新たな政策ツールや手法は今、大きな注目を集めています。しかし、政策プロセスを主導していない関係者には、まだ十分に理解されていないことが少なくありません。こうしたツールは、制度変革を促す方法ではなく、単なる手法として捉えられがちです。「規制サンドボックスとはルールのない場所、アジャイル・ガバナンスとは迅速かつ低コストで進めること、政策ラボとは『イノベーションにどう取り組んでいるのか』という問いに答えるために設けられるもの」といった具合です。
革新的な政策ツールが次々と登場することで、政策立案者が対応に追われ、政策の中核的なプロセスがほとんど変わらないままになる恐れがあります。また、ほぼすべてのツールや手法は多様な関係者の交流を促すために設計されていますが、専門家でない人々が参加しにくくなる可能性もあります。
政策立案者の力を引き出し、関係者が新たなアジャイル・ガバナンスのツールを使いこなせるよう、より良い方法を設計する必要があります。これは、世界経済フォーラムのアジャイル・ガバナンスに関するグローバル・フューチャー・カウンシルが取り組んでいる課題です。私たちは、政策策定を充実させながら過負荷を避けられるよう、明確な類型と意思決定の指針を示すことを目指しています。ツールの実態を明らかにすれば、アジャイル・ガバナンスのアプローチへの需要が高まり、より広く活用されるでしょう。


