政府と同様に、企業も地経学を習得しなければならない

政府と同様に、企業も地経学を習得しなければならない
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ベルリンの壁崩壊と、紀元前431~404年のペロポネソス戦争には、共通点がほとんどないように思えるかもしれない。しかし、この二つを合わせると、世界が入りつつある不安定な時代の複雑さ、そして何より、それをうまく乗り切るために何をすべきかを考えるうえで、有用な参照点となる。

ソビエト帝国の崩壊と、古代アテネおよびその同盟国が宿敵スパルタに対して繰り広げた壮大ながら最終的に破滅を招いた遠征は、21世紀の地政学的景観が持つ多極的な複雑さを鮮明に際立たせる対照例である。

今日、対立する政治・経済イデオロギー間に、激烈な二国間の衝突はない。その代わり、国際安全保障、管轄権、グローバル・ガバナンス、外交など、ますます緊密に相互接続する多くの要因を包含する地政学に直面している。さらに、世界経済の状況において、指導者たちは、金融・財政制度、通貨ショック、変化する国際貿易の枠組み、世界的な投資、人材の移動、その他多くのグローバル化したマクロ経済要因が相互につながる複雑さを解釈しようと苦闘している。

こうしたテーマは、別々の専門家や関係者によって個別に扱われがちだ。しかし、最近の出来事が痛切に思い起こさせたように、それらはしばしば複雑に結びついており、今日の現実を乗り切るうえで重要なのは、諸力が相互に作用する仕組みを理解することである。地政学と経済学をもはや別々に論じることはできない。代わりに、地経学へのより深い理解を育まなければならない。

これは古代アテネの勢力同士の戦いではない。これは複雑なワルツであり、一方のパートナーが、もう一方の動き、要請、戦略に応じる。踊りの成否は主観的で、時とともに変わるものであり、音楽が再び始まる時点で参加者が置かれている状況に照らしてのみ意味を持つ。

新たな世界の文脈

今日の現実とは何だろうか。驚くほど多くのことについて、確かなことはほとんどない。ある有名紙は最近、2015年には力強い景気回復か、世界的な景気後退への回帰のいずれかが訪れると予測した。リスクを回避する試みとしては見事だが、今日の世界が直面する異例の不確実性を正確に描写してもいる。

企業にとって、この不確実性は大きなリスクをもたらす。地政学的な出来事がそれぞれの業界に及ぼす影響を理解できない企業は、敗れるだろう。しかし、情報を得て積極的に関与する企業にとっては、機会が優勢となる。

地経学のワルツを動かす段取りとテンポを理解し、それに適応することは、あらゆる国際企業に不可欠である。同様に、経済へのより深い理解は、安全保障や地政学の専門家にとって、かつてないほど重要になっている。

歴史上の類比に戻れば、ソビエト連邦の崩壊は、軍事的敗北ではなく、経済の衰退と孤立の物語である。同様に、古代アテネの軍事的敗北は、長期にわたる経済衰退を招いた。地経学的な均衡が崩れると、その安定と安全保障への影響は長期に及び、深刻で、軍事力の大小にかかわらず回復は困難となる。いまだに商品に依存するロシア経済が、二度目の大規模な通貨危機に直面し、厳しい制裁を受けるなかで、必要不可欠な投資が大量に流出するという悪循環を見ればよい。

しかし、戦略立案者や政策立案者にとって大きな問題となるのは、地経学的変化の数の多さそのものでもある。たとえば、シェールガスなどの非在来型資源によるエネルギー生産の地理的な移動は、従来の産油国と消費国の関係をすでに変えつつある。同様に、中国の減速は新興市場から購入する原材料の量を減らし、多くの場合、若く不満を抱える人々を擁するそれらの国々に、新たな経済的課題をもたらしている。各国が協調せずに金融政策を行えば、世界の権力構造を変える可能性もある。

世界経済を結びつける重要な配管を脅かす破壊的な力がこれほど多いなか、関係者間の信頼の必要性はかつてないほど高まっている。ところが実際には、世界的な信頼の危機が起きている。昨日まで国際協力を可能にしていた力が、今日ではさらなる不安定化の要因となり得る。したがって、2015年の世界的な最優先課題は信頼の回復でなければならない。これは政府にとっても当てはまるが、私たちは、誰もが依存する国際的な結びつきを育み、強化するうえで、企業もはるかに中心的な役割を担うべきだと固く信じている。

最近閉幕した世界経済フォーラムの ダボス年次総会 から得られた教訓の一つは、企業のリーダーたちは、より大きな役割を果たせると認める一方で、長期的な戦略計画に地政学的リスクを織り込むための手段を持っていないということだった。私たちの 『Global Risks 2015』 報告書によると、企業は地政学的な動向を、短期から中期にかけて成長と安定を脅かす可能性が最も高いリスクの一つと見ていた一方、長期的には懸念事項から外れていた。おそらく、何かを知る、あるいは何かをするための分析能力が不足していたためだ。

地政学的な力と経済的な力の相互関係への理解を深め、有意義な対話を可能にし、行動を促し、最終的には信頼を再構築することは、企業、政府、市民社会が、将来に向けてつまずくのではなく、ワルツを踊る助けとなる。

著者:ジェニファー・ブランケ、世界経済フォーラム主任エコノミスト、アニャ・カスペルセン、世界経済フォーラム地政学・国際安全保障部門責任者

画像:2006年12月13日、上海の港でコンテナのそばを自転車で通る作業員。REUTERS/Aly Song

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