シリコンバレーの調査会社Constellation Researchによると、ヒルトン・ホテルズが60万室の客室在庫を築くのに93年かかった。Airbnbは4年足らずでこの規模に達した。宿泊を希望する人と、利用可能な空き家をつなぐアプリを開発したことで、創業7年の同社は今や世界中に100万室を超える「在庫」を持つ。しかも、その一室も建設したり購入したりしていない。しかし、こうした成長に対する監視の目は避けられない。同社は進出するほぼすべての新たな都市で 規制上の課題に直面している 。
Airbnbのようにデジタルを介した取引は、規制当局が想定していなかった形で、製品の所有やサービスの提供のあり方を再定義する。さらに、デジタル(物理的なものではなく)製品やサービスを拡大するコストはわずかだ。そのため、規制対象となる取引量が指数関数的に増える一方で、規制制度は漸進的にしか進まず、新たな規則が古い規則の上に行き当たりばったりに積み重ねられることも多い。
出典: CIO Insight
業界を超えて公正で開かれた市場と経済成長の実現を促す最善の方法は、既存企業、破壊的イノベーター、そしてそれらを規制する政策立案者が、起業家精神を促しながら公共の利益を守る規制のバランスを見いだすことだ。それは決して容易ではない。技術変化の速度が増す一方で、政策立案の速度はデジタル以前のままという今、なおさら難しい。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの最近の調査は、規制当局がイノベーターと同じ機敏さを示し、自らもデジタルソリューションを活用し始めるための3つの方法を示唆している。
より包括的な政策をつくり、対話の窓口を開く
規制当局が新しい技術やスタートアップの一つひとつに対応して法律を制定・改正するのは、ほぼ不可能だ。細かな規制で絶えず後追いするのではなく、安全管理と公正な競争を確保する幅広く柔軟な政策をつくれば、業界がどのように変化しても指針となり得る。
ニューヨーク市の最高技術責任者(CTO)であるミネルバ・タンココ氏は、今日の理想的な規制について、「新しいビジネスモデルが生まれたり、既存業界でサービスの提供方法が新しくなったりする状況でも、規制の趣旨は変わらない」と説明する。銃規制など公共の安全に関する規制や、 3Dプリンター製の銃にどう適用すべきかについては、これは直感的に理解しやすい。一方、 ネット中立性のような技術的なテーマに関する規制では、規制がどれほど広く書かれていても、その趣旨を解釈するのが難しいことがある。そのため、開かれた対話の窓口が必要だ。「うまくいっているのを見たのは、事業を立ち上げようとする企業と、それを管轄する規制当局との間に双方向の対話がある場合です」とタンココ氏は付け加える。
政府職員の技術リテラシーを高める
技術分野の専門家を追加採用すれば、政府機関は業界の変化を把握し続けやすくなる。今日の最も大きな業界変革や消費者行動の変化を技術が支えているにもかかわらず、米国政治の専門誌CQ Roll Callによると、第113議会(2013年と2014年に在任)の議員のうち、科学または技術分野の経歴を持つのはわずか10%だった。科学関連の課題を担当する特別委員会でさえ、 STEM分野の経歴を持つ人はほとんどいない 。
「技術は非常に速く変化しています。導入は指数関数的に広がり、私たちは皆、ネットワークでつながっています。さらに多くの指数関数的な変化が訪れます」と、Havas Mediaの戦略・イノベーション担当上級副社長、トム・グッドウィン氏は言う。「政府機関には、これに対応できる適切な人員配置が必要です。」
幸い、政府も対応している。米国エネルギー省や国防総省など、多くの米国政府機関は、技術的な専門知識を政策立案者に提供するため、エンジニア、開発者、技術の将来を見通す専門家を活用する先端研究計画局(ARPA)モデルを取り入れている。さらにオバマ大統領は、healthcare.govの公開が期待外れに終わった後、米国デジタルサービス(US Digital Service)も設立した。同組織は政府サービスをデジタル時代に対応させるため、優秀な技術人材を急速に採用している。
企業を信頼できるパートナーとして扱う
デジタル分野の規制課題の多くは、政府以外の大規模な利害関係者(すなわち消費者や企業)がルールの策定と執行に参加する、委任型の解決策に適している。実際、デジタル企業はしばしば規制上の仲介者として機能したり、インセンティブの仕組みや利用規約を通じて自らのマーケットプレイスを管理したりする。こうした企業は、特にユーザーとの接点やデータを厳格に管理することで、市場の失敗を是正する監督を政府より適切に担える。
これはシェアリングエコノミーで特に顕著だ。オンデマンドの配車サービスであるLyftとUberは、運転手の最善の行動を促すため、利用者から運転手に関する情報を直接集めている。規制上の仲介者の例であり、都市政府の協力者としての立場を目指すAirbnbは、米国の一部の都市で利用者に代わって宿泊税を徴収し始めた。
航空、食品、医薬品などの業界では、公共の安全を守るための規制監督が極めて重要だ。しかし企業がデジタル手段を通じてマーケットプレイスをますます管理するようになるにつれ、規制当局と企業は共通の利害を通じて利益を得られる。「私の考えでは、[企業]は規制上の解決策の一部であるべきです」と、ニューヨーク大学スターン経営大学院の教授兼NEC学部フェロー、アルン・スンダララジャン氏は言う。「市場をよりよく機能させるための提供に、担い手として関与すべきです。」
デジタル製品やサービスの監督に必要な、急速に変化するニーズに対処したり、それを予測したりできる単一の規則体系はない。必要なのは、急速に変わる環境の中でも有効性を保つ、柔軟で先を見据えた政策だ。そうしたアプローチは、民間部門とのコミュニケーションと協力を深め、政策立案者自身が技術を活用して初めて可能になる。
ニューヨーク州の最高デジタル責任者、レイチェル・ハオット氏は、これを実現する日は遠くないと考えている。「政府と[イノベーター]は、初めは異なる言語を話しているように感じるかもしれません。しかし共通の目標があります。人々に影響を与えたい、しばしば何らかの形で世界をより良くしたいという思いがあります。一緒に取り組めば、はるかに多くのことを成し遂げられます。」
詳細については、 「公平な競争環境を探る」調査プログラムをご覧ください。ニューヨーク市に拠点を置く投資運用会社Two Sigmaが協賛しています。
本記事の掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Sunmin Kimは、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの副編集長兼Pro Journoのディレクターであり、 グローバル・シェイパーです。
画像:シンガポールの南洋理工大学(NTU)で、乗客が自動運転の電気自動車に乗る。REUTERS/Edgar Su





