貿易協定は通貨操作を止められるか?

貿易協定は通貨操作を止められるか?
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貿易と為替レートが密接に結びついていることは否定できません。しかし、それは、通貨価値に影響を及ぼす各国の政策を規律する条項を国際貿易協定に盛り込むべきだということなのでしょうか。

そう考える経済学者は確かにいます。たとえばサイモン・ジョンソンは最近、環太平洋パートナーシップのようなメガ地域協定を、為替レートの上昇を防ぐために各国が通貨市場に介入することを抑制する手段として活用すべきだと論じました。フレッド・バーグステンも同様の主張をしています。しかし、米国財務省と米国通商代表部は、マクロ経済問題は貿易交渉と切り離して扱うべきだとの立場を引き続き主張しています。

現状では、関連する国際機関である世界貿易機関(WTO)と国際通貨基金(IMF)は、通貨操作の可能性に独力で効果的に対応できる体制になっていません。為替レートに影響するマクロ経済政策を貿易交渉に組み込むには、WTOが関連する各国政策を分析し裁定する技術的能力(および権限)を得るか、あるいはIMFが貿易協定に伴う紛争解決の仕組みに加わる必要があります。

確かにIMFは2007年以来、「為替市場における一方向への大規模な介入」を禁じています。これは「二国間サーベイランス」に関する決定であり、「大規模かつ長期にわたる」経常収支の不均衡も審査の理由として特定しています。しかし、この決定も、その後の多国間サーベイランスに関するIMFの政策文書も、個別事例ごとの判断を不要にするような具体的かつ比較可能な数量指標を示してはいません。

財務省や中央銀行が貿易上の競争優位を得るために為替レートを引き下げる手段は多岐にわたり、状況を複雑にしています。最も直接的な方法は外国資産の購入です。しかし、短期資本が大量に流動する世界では、中央銀行の政策金利、あるいは将来の金利見通しに関する発表だけでも、大きな影響があります。さらに、中央銀行が国内資産だけを購入する場合でも、量的緩和は為替レートと貿易に影響します。最近のドル、ユーロ、円の為替レートの変動がそれを示しています。

さらに踏み込んで考えることもできます。所得税の引き上げは、(完全なリカードの等価命題を信じない限り)民間需要を減らし、他国の輸出品への需要も減少させます。あらゆる種類のその他のマクロ経済政策も、経常収支に影響します。

要するに、「為替レートに影響する政策」を貿易協定の一部とするなら、金融政策と財政政策も貿易協定に組み込まなければなりません。そうなれば、貿易協定そのものが成立しなくなるでしょう。
ユーロ圏を考えてみてください。そこでは、加盟国間で異なる金融、財政、為替レート上のニーズを調整するという大きな課題に直面しています。ドイツの経常黒字は2年間にわたりGDPの約7%で推移し、中国を上回っています。最近のユーロ安により、さらに拡大する可能性もあります。一方、他のユーロ圏諸国の大半は近年、財政引き締めを余儀なくされ、経常赤字を縮小、あるいは解消しています。

その結果、ユーロ圏全体の貿易黒字は現在、巨額に上っています。ユーロ圏の個々の加盟国には金融政策の手段がないため、ユーロ圏にとどまりながらドイツが黒字を減らす唯一の方法は、拡張的な財政政策を実施することです。経済学者のステファン・カワレツは、ユーロ圏の現在の政策の組み合わせを明確に「通貨操作」と呼んでいます。

貿易交渉をまとめるだけでも十分に困難です。マクロ経済政策の問題に取り組む必要が加われば、交渉が行き詰まり、保護主義的なロビー団体に必要な政治的材料を与えてしまうおそれがあります。だからこそ通商代表部は、米議会の有力者から要求があるにもかかわらず、交渉にマクロ経済政策を加えないよう賢明にも努めているのです。

これは、為替レートに影響するマクロ経済政策に問題がないという意味ではありません。問題はあります。しかし、経常収支の不均衡の原因と結果を議論し、マクロ経済政策の協調について合意する場として、貿易交渉は適切ではありません。その役割を担うのはIMFとG20です。実際、経常収支の不均衡に表れる、各国または通貨圏における総貯蓄と総投資の大幅な実際の乖離、あるいはその可能性という問題は、IMFが発展させつつある多国間サーベイランスの役割の中核にあります。また、G20でも焦点となってきました。

各国の経済政策が他国や世界の成長に及ぼす影響を分析し、各国ごとの調整約束を策定することを目的に設けられたG20の「相互評価プロセス」は、大きな波及効果をもたらすマクロ経済政策について合意に達する難しさを浮き彫りにしました。実際、関税、数量制限、品質基準、特定部門の規制体制、関連するミクロ経済問題などを扱わなければならない貿易協定よりも、合意はさらに難しいのです。こうした難題をすべて一つの交渉プロセスにまとめるのは、行き詰まりを招くやり方です。

より良い方法は、IMFの多国間サーベイランスの役割を強化することでしょう。そうすればマクロ経済政策に関する議論の範囲が広がり、雇用問題、特に大規模な貿易黒字が国内雇用に及ぼし得る影響も含まれるようになります。そして、貿易交渉が成功する機会も生まれます。

本記事は、 プロジェクト・シンジケートとの協力により掲載されています。掲載された見解は、世界経済フォーラムによる支持を意味するものではありません。

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著者:トルコ元経済担当大臣、国連開発計画(UNDP)元総裁のケマル・デルヴィシュは、ブルッキングス研究所の副所長です。

画像:2009年3月6日、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのバラード入り江を出航するコンテナ船。ロイター/アンディ・クラーク。

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