長期停滞論の問題点

長期停滞論の問題点
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最近の 意見交換 では、米連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ前議長とラリー・サマーズ元米財務長官が長期停滞論の妥当性について論じ、世界的な視点が必要だという点で一致した。しかし、その視点から見ると、2008年の世界金融危機に至る時期に長期停滞が起きていたという仮説は、ある重要な事実と相いれない。世界の成長率は平均で4%を超え、記録上最も高い水準に達していた。

バーナンキ氏の「世界的な貯蓄過剰」が低成長をもたらしたという仮説にも、同じ問題がある。ケインズ主義の観点からすれば、貯蓄の増加では、2000年代初頭に世界が目の当たりにした経済活動の急拡大を説明できない。

長期停滞 仮説の支持者たちは、どうやら問題を取り違えている。真に長期的かつ世界的な視点に立てば、説明すべき課題は危機前の好況である。より正確に言えば、世界的な三つの大きな動きが同時に起きたことを説明しなければならない。すなわち、成長の加速(停滞ではない)、インフレの低下、そして実質金利(インフレ調整後)の低下である。この三つを説得力ある形で説明するには、純粋な総需要の枠組みを重視しすぎず、新興市場、とりわけ中国の台頭に焦点を当てる必要がある。

本質的には、新興市場から大規模な正の生産性ショックが生じ、世界の成長を加速させる一方で、いわゆる 大いなる安定 によって景気循環の変動が抑えられ、すでに始まっていたディスインフレ圧力が強まった。この重要な動きは、世界的な三つの大きな動きのうち、成長の加速とインフレの低下という二つを整合的に説明する。

では、実質金利が低下するなか、世界の生産性成長が高まったことをどう説明するかが、本当の謎となる。バーナンキ氏は、長期実質金利は実質成長によって決まると 正しく強調した 。したがって、正の生産性ショックは資本収益率を押し上げ、ひいては均衡実質金利を上昇させるはずだった。さらに、生産性ショックは、中国とインドの労働者が世界経済に組み込まれたことで世界の資本・労働比率が低下したことを反映しており、この傾向は強まるはずだった。しかし、そうはならなかった。逆に、世界の実質金利は低下した。

この謎を理解するうえで重要なのは、新興市場の生産性ショックに特徴的な二つの点である。その起源と帰結には、資源集約性と重商主義的性格があった。どちらの特徴も世界の貯蓄を増やした。

まず、比較的貧しいものの人口規模の大きいインド、そしてとりわけ中国が世界の成長を牽引し、資源を大量に必要としたため、世界の原油価格は急騰した。その結果、所得は、貯蓄性向の高い国々、すなわち産油国へと再分配された。

さらに重要だったのは重商主義的な政策である。中国などの新興市場国は、成長・開発理論の標準的な原則に反する経済戦略をとった。重商主義的な成長は、資本を呼び込むのではなく、国外へ押し出すことを基盤としており、ある程度それを必要としていた。海外からの資金流入を制限し、国内金利を低く抑えることで、中国は相対的に通貨安を維持し、輸出主導型の成長モデルを支えることができた。その結果、巨額の経常黒字(ある時点ではGDPの10%超)が生じ、資本が世界の他の地域へ流れていった。

この戦略の重要性を認識すれば、世界的な貯蓄過剰は、新興市場国が金融混乱に備えてドル準備を積み増そうとしたことに起因する、というよくある誤謬が明らかになる。1990年代後半のアジア金融危機直後には、確かにそうだったかもしれない。しかし、その動機は成長の必要性によってすぐに取って代わられた。言い換えれば、自衛目的での準備保有は、中国が最初に積み上げた1兆ドルの説明にはなるかもしれないが、その後の3兆ドルとは何の関係もない。

貯蓄過剰をさらにもたらしたのは、成長そのものだった。所得が増えるにつれて、もともと慎重だったアジアの人々はさらに慎重になり、収益を上げていた企業はさらに高収益になった。急速な生産性成長に対するこの内生的な反応は、貯蓄過剰の一因となった重要な要素である。貯蓄が成長を促すという従来の開発論の定説は、見直す必要があった。新興市場では、ある程度、成長が貯蓄を生み出したからだ。

ここに金利の謎を解く鍵がある。貯蓄(したがって、世界の貸付可能資金の供給)が増えるにつれて、実質金利には低下圧力がかかった。そして低金利は、米国などで資産バブルを資金面から支える潤滑油となった。サマーズ氏によれば、貯蓄の多さが成長の弱さを招いた。これに対し、ここで示す別の説明では、主として急速な成長とその特有の特徴が、貯蓄の増加をもたらした。

今日、世界の成長が減速するなか、長期停滞が再びもっともらしく見えている。しかし、長期停滞は経済の最先端にある国々の病である。その他の発展途上国にとって本当に懸念すべきなのは需要不足ではなく、先進国に追いつけるよう、高い生産性成長率を維持する必要性だ。今週、政策担当者たちが恒例の協議のためワシントンに集まるが、この重要な違いを見失ってはならない。

この記事は、 Project Syndicateとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。

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著者:アルヴィンド・スブラマニアンは、インド財務省の首席経済顧問。

画像:シンガポールの中央ビジネス地区で建物の前を歩く男性。REUTERS/Nicky Loh。

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