多国籍企業は親になることによる賃金格差の縮小に貢献できる。その方法とは

Closing the gender wage gap is crucial for reducing global gender inequality.
Closing the gender wage gap is crucial for reducing global gender inequality.Image: Unsplash.
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  • 親になることによる賃金格差、すなわち子どものいる従業員といない従業員の賃金水準の違いは、世界各地の男女間賃金格差を生む主な要因の一つです。

  • これまでの研究では、いわゆる「母親ペナルティ」と「父親ボーナス」の存在が指摘されてきました。本稿では企業の役割に焦点を当てます。

  • 私たちの研究によると、とりわけ多国籍企業は母親に賃金を低く払いすぎているだけでなく、父親にも高く払いすぎています。

男女間賃金格差の解消は、広く認識されてきました。それは、世界的なジェンダー不平等を減らし、社会全体の持続可能な発展を実現するうえで不可欠です。こうした目標の達成には企業が決定的な役割を担います。雇用を生み出す重要な経済主体として、企業は採用や昇進の方針を直接決定し、最終的には賃金の格差を左右します。

男女間賃金格差の主な要因の一つは、親になることです。母親は子どものいない女性の同僚より収入が少なく、父親は子どものいない男性の同僚より収入が多いという現実があります。最近の研究では、親になることによる賃金格差の形成に多国籍企業が果たす役割に注目しました。過去30年間で、多国籍企業の国境を越えた事業活動は5倍に増加し、それに伴い国際出張や時差をまたぐ働き方も広がりました。そのため、働く親が直面する仕事と生活の両立の難しさは、多国籍企業でより顕著になると予想しました。

そこで、多国籍企業における親になることによる賃金格差を調べ、国内企業の格差と比較し、多国籍企業がこの社会的不平等への取り組みで他社より優れているのか、あるいは劣っているのかを評価しました。本研究では、次の重要な問いに取り組みました。賃金の面で、親は多国籍企業で働くほうが有利なのか、それとも不利なのか。また、世界規模で見たとき、多国籍企業における母親と父親の報酬に大きな違いはあるのでしょうか。

母親ペナルティ

「母親ペナルティ」とは、子どものいない女性と比べ、女性が母親になった後に収入が減少する、よく知られた現象です。全体として、母親になることによるペナルティは4~13%と推定されています。その幅は国、職種、個人の特性によって異なります。母親ペナルティはさまざまな職業や業種で見られ、仕事と育児の両立の難しさに加え、職場での偏見や固定観念などが原因とされています。

平均すると、家庭内の育児の大半を母親が担っています。そのため、保育所の開所時間や学校の時間、課外活動など、親になることで生じる時間的な制約や予定に合わせながら、有給の仕事を続けることは母親にとって特に困難です。さらに、育児と有給の仕事がエネルギーや集中力を奪い合うことで、母親の職場での生産性が影響を受ける場合もあります。

雇用主が母親に偏見を持ち、その結果、母親は生産性が低く、仕事への熱意も乏しいと見なされることもあります。ノーベル賞を受賞したクラウディア・ゴールディンの研究によると、とりわけ長時間労働や継続性、柔軟性を求める組織では、雇用主は母親であることを、意欲や仕事への献身が乏しいこと、また懸命に働く気がないことの表れと結び付けています。

父親ボーナス

「父親ボーナス」とは、子どものいない男性と比べ、男性が父親になった後に収入が増える現象を指します。これは母親ペナルティに対応する概念であり、父親になることが職場で男性にもたらす潜在的なプラスの影響を示しています。この父親ボーナスは、3~10%と推定されています。

父親ボーナスは、父親であることや家計の担い手であることに結び付いた肯定的な偏見が原因とされています。その結果、雇用主は子どものいない男性より父親を優遇することがあります。父親は、最も意欲的で、熱心に働き、勤勉で、頼りになり、忠誠心の高い従業員だと見なされるのです。そのため父親は、自分の能力を示す機会をより多く与えられたり、子どものいない同僚や女性の同僚より業績に対する報奨を多く受けたり、仕事の不出来を厳しく追及されなかったりする場合があります。

多国籍企業における親になることによる賃金格差

国際的な環境で働くには、別のタイムゾーンにいる人との連絡や、しばしば急な国際出張のために、通常の勤務時間外にも対応できるなど、比較的高い柔軟性が求められます。これにより、多国籍企業では母親ペナルティが拡大すると予想しました。しかし、私たちの調査対象では、母親ペナルティは多国籍企業と地元企業で同程度でした。

一方、私たちの研究では、父親ボーナスは地元企業より多国籍企業でかなり大きいことが示されました。地元企業では、父親は子どものいない男性の同僚と比べ、平均して1時間当たり1ドルのボーナスを得ていますが、多国籍企業ではその額が2倍です。

多国籍企業に特有の特徴が、大きな父親ボーナスにつながっている可能性があります。たとえば、多国籍企業では多くの従業員がグローバルに活躍する専門職です。国境を越えて定期的に他者とやり取りしたり、海外出張をしたり、海外赴任を経験したりしています。とりわけ家族のいる男性は、こうした職務に占める割合が高くなっています。従来の性別役割分担のもとでは、女性より男性のほうが、勤務時間外の仕事や家を離れること、転居を伴う仕事を両立しやすいためです。さらに、前述のように父親は信頼できる責任感のある従業員だと見なされるため、特に父親である男性は、こうした職務に選ばれる可能性が高くなります。

国際的な職務や海外赴任には比較的手厚い報奨・報酬制度があり、家族とともに転居する父親には追加の手当も支給されます。こうした制度により、多国籍企業の子会社で働く父親は、国内企業の同僚より高い賃金プレミアムを得る可能性があります。また、多国籍企業には比較的男性的な企業文化があると考えられており、父親であることなど、男性的な特性を持つ男性への肯定的な偏見が強い可能性があります。

多国籍企業における不利益と特権の源泉

私たちの研究は、多国籍企業がジェンダー不平等に及ぼす影響について、深く考え直す必要性を示しています。得られた結果によると、多国籍企業は、母親であることに伴うよく知られた不利益への対処において、他の企業と同程度にうまく、あるいはうまくいっていません。しかし、多国籍企業の男女間賃金格差を生む重要な要因は、男性、とりわけ子どものいる男性が積み重ねる優位性です。男女平等を実現するには、とりわけ男性を念頭に置いて、自社の方針や慣行を改めて考えることが欠かせません。

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