工学分野は英国の成功を支えてきました。しかし、より多くの女性エンジニアを育成し、採用し、定着させられなければ、その将来は危ういものになります。
この分野は、インド、中国、東欧からエンジニアを受け入れることで存続し、さらには発展してきました。しかし、先進国はどこも同じ人材を求めて競い合っています。現在、英国の工学系卒業生の5人に1人は海外出身です。これは持続可能なモデルとは言えません。唯一現実的な解決策は、より多くの女性を工学分野に呼び込み、専門職として働き続けられるようにすることです。
成功例はあります。とはいえ、ラトビアやブルガリアのモデルをそのまま再現することはできませんし、スウェーデンの例でさえ同様です。Engineering UKによると、スウェーデンではエンジニアの26%が女性であるのに対し、英国ではわずか9%です。
かつての鉄のカーテン諸国では、実際には指令型の統治体制があったことの結果として男女比が均衡しています。またスウェーデンが男女比を適正化するには、国レベルの政府の取り組みに30年を要しました。英国には後者の方法をとる時間がありませんし、共産主義国家のもとで暮らしたいという意欲もあまりないでしょう。
STEMの種をまく
その代わりに、ブルネル大学で私たちが実施する「Women in Engineering」プログラムのような取り組みが鍵になると期待しています。工学教育からキャリアまでの全過程を見渡すアプローチを確立し、最終的には科学・技術・工学・数学(STEM)分野の女子学部生を増やすことが狙いです。
私たちの試験プログラムでは、大学院に在籍する女性に、産業界の上級エンジニアを12か月間メンターとしてつけ、リーダーシップ、プレゼンテーション、コミュニケーションのスキルを学ぶコーチングも提供しています。次の学年度には、対象をさらに多くの学生へ広げる予定です。ただし、このアプローチの重要な要素の一つは、カリキュラムの外にあります。
研究によると、児童、とりわけ女子は、学び始めて早い段階で科学への関心を失うことがあり、そうした意識を変えるには繰り返し働きかける必要があります。
だからこそ、学生が将来、自分の専門職のアンバサダーとなるよう後押しするアウトリーチ活動が重要なのです。イングランド高等教育資金配分機関からの400万ポンドの助成金は、STEMを学ぶ女性を増やすとともに、2020年までに学部生の数を25%増やすことを目的としています。この取り組みの一環として、学内外のさまざまなセッションを通じ、学生が毎年、11歳から14歳の児童30,000人と交流することを目指しています。
今は重大な局面です。英国経済が回復を続けるには、工学分野の男女格差を今、大きく縮め、経済成長を支える国内育成エンジニアを輩出する英国の能力を高めなければなりません。
隔たりを埋める
そこで、工学のキャリアのごく初期から関わる好循環を生み出す必要があります。チョコレートを使った溶接から水フィルターの製作、ロボットレースの開催まで、工学系の学生が通常の学校の理科授業で実施できる一連の活動を開発しました。
工学系の学生であるSTEMアンバサダーが学校を訪れ、数日かけて児童にチョコレート溶接を教えます。その後、刺激的で楽しい科学・工学の活動をともに楽しんだ若者たちに、工学分野のキャリアについて話しに戻ってきます。(実際に試してみないと信じられないかもしれませんが、チョコレートの棒4本で作った簡単な橋が3.8kgの荷重に耐えられるのです。)
学生たちは、児童が刺激的なセッションに触れられるよう、ほかの活動も行うために定期的に学校を再訪します。児童がGCSEの科目選択を始める前に、素晴らしいロールモデルに何度も出会えるようにするためです。
実際に働くエンジニアこそ、この職業の最良の宣伝役です。英国の大学で学ぶ女性工学系学生には、旗振り役やアンバサダーとなる機会があり、そうする責任もあるかもしれません。同じ志を持つ専門職の仲間を熱心に勧誘する役割も担えます。
私たちが接点を持てた児童を追跡調査し、若者全般、特に女性をAレベル以降のSTEM科目へ進ませるうえで、どの活動が最も効果的かを把握します。
試験プログラムの学生たちは冗談めかしてこう言います。15年後、世界の主要な工学企業すべてのCEOになったら会議を開き、議題の一番目にこう掲げるのだ、と。「さて、どうすればもっと多くの男性を工学分野に呼び込めるだろう?」
夢物語かもしれませんが、目標としてはよいものです。
この記事は、 The Conversationとの共同掲載です。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Geoff J Rodgersは、1989年にブルネル大学ロンドン校の物理学講師に任命され、2001年に数理物理学の上級講師、2003年に理論物理学教授となりました。
画像:従業員が、UMMCウラル鉱山・冶金会社の一部門であるクズバスラズレズゴル社所有のクラスノブロツカヤ・コークス炭選炭工場で、スパナを手に作業している。2012年7月23日、シベリアの都市ケメロヴォから南へ約150 km(93マイル)。REUTERS。
