企業における障害者インクルージョンは、リーダーの真摯なコミットメントがあって初めて実現する。
職場における障害者をめぐる変化の機運を高めるには、データに基づく知見と透明性の高い報告が必要だ。
Valuable 500の「Generation Valuable Mentoring Programme」は、インクルーシブなリーダーシップへの道を切り開く取り組みの一つだ。
イノベーションの推進や製品設計の向上から、顧客サービスの改善、市場の拡大まで、障害のある従業員は企業の競争力と業績全体を大きく高めることができる。先見性のある企業は、障害者インクルージョンにおける変革は、リーダーの真摯なコミットメントがあって初めて実現すると認識し始めている。しかし、この重要な課題で変化をもたらすには、企業のリーダーに何が求められるのだろうか。
経営幹部が障害者インクルージョンを優先すると、その波及効果によってあらゆる階層の意識や慣行が変わる。しかし、こうしたコミットメントには、リーダーが多大な資源と個人的なエネルギーを注ぐ必要がある。この分野で真にインクルーシブなリーダーシップを発揮するには、明確な目標を設定し、障害者インクルージョンの重要性を一貫して伝え、目に見える進展について自らとチームに責任を持たせなければならない。障害者インクルージョンを受け入れるだけでなく、組織の戦略に積極的に組み込み、強みやイノベーションの源として活用する文化をつくることが重要だ。
マイクロソフト:リーダー主導のインクルージョンとイノベーション
2014年にサティア・ナデラがマイクロソフトのCEOに就任した際、同社をインクルーシブなイノベーションのリーダーへと導く道筋を示した。障害との個人的なつながりも一因となり、ナデラはアクセシビリティをマイクロソフトの使命の中核に据え、テクノロジー大手である同社の存在意義と企業文化に欠かせないものとした。
現在、マイクロソフトのアクセシビリティへの取り組みはかつてないほど強化されており、職場のインクルージョンに新たな基準を打ち立て、多様性を重視する優秀な人材を引きつけている。同社には、チーフ・アクセシビリティ・オフィサーのジェニー・レイ=フラリーを筆頭に、多くのアクセシビリティ専門家が在籍し、インクルージョンを企業文化や慣行に根付かせるために取り組んでいる。アクセシビリティを戦略上の優先事項として位置づけ、経営幹部の全面的な支援と資源提供のもとで組織の能力構築に投資することで、マイクロソフトはインクルージョンが単なる流行語ではなく、企業文化と事業運営の根幹となる環境を築いた。
Sky:リーダーの後押しを受けた報告の好例
障害者インクルージョンを効果的に進めるには、データに基づく知見と透明性の高い報告が欠かせない。障害者インクルージョンに関する確かなデータ収集と報告に取り組む企業のリーダーは、これが単なるイメージ向上のための取り組みではなく、測定可能な行動と成果に裏打ちされた事業上の優先事項であることをステークホルダーに示せる。結局のところ、データなしに進展はなく、データを効果的に収集・活用するというリーダーのコミットメントなしにデータは得られない。
メディア・通信企業のSkyは、従業員の障害に関するデータ収集にこのアプローチを取り入れている。人事システム内の一連の質問を通じて、従業員は自身の障害を任意で申告するよう促され、複数の状態を選択できる。Skyは影響報告書でこれらの指標を毎年公表し、年間を通じて随時、啓発キャンペーンを実施している。現在、Skyの従業員の9%が障害のある人として自ら申告している。
Skyのリーダーは、自ら申告することを積極的に促し、その結果を透明性高く報告することで、信頼とインクルージョンの文化を育んでいる。また、障害のある従業員向けの能力開発プログラムや、神経多様性のあるチームメンバーをより適切に支援するための管理職向け専門研修など、対象を絞った取り組みを推進するために知見を活用している。2025年に施行される新たなアクセシビリティ法制に備えるSkyでは、データに基づきリーダーが後押しするこのインクルージョンのアプローチにより、将来の設計プロセスにアクセシビリティを組み込み、障害のある人々に公平な機会を確保するための態勢が整いつつある。
企業のリーダーが障害者インクルージョンを進めるための主な行動
残念ながら、経営幹部が障害者インクルージョンに自信を持って取り組むことは、まだ一般的ではない。そして、調査によると、障害者インクルージョンは、経営幹部や取締役会の議論や意思決定で依然としてほとんど取り上げられていない。多くのリーダーにとって、この分野で意義ある変化を推進することは複雑で、手に負えないように思えるかもしれない。しかし、企業のリーダーが変化をもたらすために実行できる、そして実行すべき具体的な行動がある。
あらゆる段階で障害のある人を積極的に受け入れる:採用し、雇用し、支援し、昇進させ、あらゆる意思決定プロセスでその視点に耳を傾ける。
障害者インクルージョンを戦略上の優先事項にする:中核的な事業戦略とKPIに組み込む。
アクセシビリティの取り組みに資源を割り当てる:誰もが利用しやすい職場をつくるため、ツール、テクノロジー、研修に投資する。
障害に関する指標の透明性の高い報告を主導する:障害者インクルージョンの進捗に関するデータを定期的に収集、分析し、共有する。
障害に関する啓発イベントに積極的に参加する:出席し、登壇することで、リーダーとして目に見える支援を示す。
従業員が匿名かどうかにかかわらず、安心して自ら申告できる文化を育む:障害の開示をめぐる信頼と率直さのある環境をつくる。
データの知見を活用して対象を絞ったインクルージョン・プログラムを推進する:収集したデータをもとに、インクルージョン戦略を策定し、改善する。
進捗について自らとチームに責任を持たせる:明確な目標を設定し、障害者インクルージョンの目標に照らして実績を定期的に確認する。
マイクロソフトとSkyの事例は、職場で障害者インクルージョンを進めるうえで、リーダーのコミットメントが鍵となることを示している。しかし、取り組みはそこで終わらない。真のインクルージョンには、継続的なコミットメントと学び、現状に異議を唱える意欲が必要だ。
未来を見据えると、Valuable 500の「Generation Valuable Mentoring Programme」のような取り組みが、インクルーシブなリーダーシップの新時代への道を切り開いている。この画期的なグローバル・メンタリング・プログラムでは、経営幹部と、台頭する障害のある人材を独自の形で組み合わせ、6カ月間にわたりメンタリングを行う。次世代のインクルーシブな企業リーダーを育てるだけでなく、相互メンタリングを通じて、現在と将来の意思決定者双方のインクルーシブなリーダーシップのスキルを高めることを目指している。この取り組みは、企業がリーダーシップのあり方を積極的に変革し、障害者インクルージョンを今後長年にわたる事業戦略と企業文化の礎にできることを示している。
世界経済フォーラムは、職場の公平性をどのように推進しているのか?
「Future of Jobs Report」2023年版によると、調査対象企業の75%が今後5年間でAI、ビッグデータ、クラウド技術を導入する見込みだ。
「Centre for the New Economy and Society」は、リーダーが新技術の導入や有効性、そして労働者の活用準備について知見を共有する場を提供している。私たちは、成長、雇用、スキル、公平性、リスクに関する知見の創出と対話の促進に取り組んでいる。
私たちの活動の成果について詳しく知る:
ジェンダー平等:2006年以降、毎年、101の経済圏におけるジェンダー平等の現状と変化を測定し、ジェンダー格差を解消する最も効果的な政策を意思決定者が特定できるよう支援している。チリでは、ジェンダー平等加速プログラムの設立を支援し、72万8,000人の女性に恩恵をもたらした。参加企業ではジェンダー格差が37%縮小した。
リスキリング革命:パートナーとともに、世界の労働者が将来に備えてキャリアを築けるよう支援している。350を超える組織と連携し、2030年までに10億人に、より良い教育、スキル、経済機会を提供する。
障害者インクルージョン:Valuable500と連携し、障害者インクルージョンの格差解消に取り組むCEOの世界最大のネットワークと協働している。参加企業は、デジタル・アクセシビリティのベストプラクティスの導入を拡大し、多様性、公平性、インクルージョン戦略に障害者インクルージョンを組み込むことで前進している。
人種的公正:私たちは、13業界にまたがる55組織のグローバル連合と協働している。連合の参加組織は、人種的・民族的アイデンティティを理由に十分に代表されていない専門職の人々にとって、公平で公正な職場づくりに取り組んでいる。
私たちのセンターの活動について詳しく知りたい方、または参加をご希望の方は、お問い合わせください。
私たちは、障害者インクルージョンがビジネス上の合理性を持つことを示す段階をすでに超えている。障害者インクルージョンを重大な戦略課題と捉えない企業やリーダーはリスクにさらされており、その真の可能性は、大胆で揺るぎないリーダーシップがあって初めて引き出される。今後、最も成功するのは、障害者インクルージョンを独立した取り組みとしてではなく、事業のDNAに不可欠な要素として位置づけるリーダーを擁する企業だろう。すべての経営幹部が問うべきなのは、「取り組むかどうか」ではなく、「無関心から行動へいつ移るのか」だ。
