デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグが、今こそかつてないほど思いやりが必要な理由を語る

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  • 3月は女性史月間です。今年のテーマは「共に前進する。女性が世代を超えて教え、刺激を与える」です。

  • ファッションデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグは、生涯にわたりジェンダー平等と女性の権利を訴える第一人者として活動してきました。女性のエンパワーメントに貢献したとして、今年クリスタル賞を受賞した文化界のリーダー3人のうちの1人です。

  • ダボス会議2025のセッションで語られた、フォン・ファステンバーグの人生やキャリア、そして分断が深まる世界を歩むための戦略として思いやりを捉える彼女の考えを紹介します。

「私は、強制収容所へ向かうときに笑顔を見せた女性の娘です」

ダイアン・フォン・ファステンバーグの母親が残した段ボールの切れ端には、「笑顔で出発します」という言葉が刻まれていました。アウシュヴィッツ行きの家畜運搬車に無理やり乗せられたとき、両親のもとに届くことを願って、彼女はそれを地面に落としました。

それは届きました。そして、あらゆる困難にもかかわらず、彼女自身も生還しました。

ホロコースト生存者の娘として、フォン・ファステンバーグの人生は、何世代にもわたる大胆で勇敢、そしてしなやかな女性たちによって形づくられてきました。

3月に行われる今年の女性史月間のテーマは「共に前進する。女性が世代を超えて教え、刺激を与える」です。母親の不屈の精神から得た教訓から、女性を支援する息の長い活動まで、フォン・ファステンバーグの人生は、世代を超えて受け継がれるインスピレーションの証しです。

ジェンダー平等に生涯を捧げてきたことが評価され、フォン・ファステンバーグは世界経済フォーラムの第55回年次総会でクリスタル賞を受賞しました。ジェンダー平等は今なお、最も深刻な人権課題の一つです。現在の進展のペースでは、完全なジェンダー平等の実現までに134年かかると、世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report 2024」は示しています。

ダイアン・フォン・ファステンバーグは今年のダボス年次総会に参加し、ジェンダー平等の推進と世界中の女性のエンパワーメントに向けた取り組みについて語りました。Image: 世界経済フォーラム

女性を第一に考える功績

ベルギー生まれのアメリカ人ファッションデザイナー、ダイアン・フォン・ファステンバーグは、22歳でドイツ有数の名門一家の貴族、エゴン・フォン・ファステンバーグ公と結婚し、プリンセスとなりました。しかし、それが彼女の名を世界に知らしめた理由ではありません。

1974年、今やアイコニックな存在となったラップドレスを発表し、一躍有名になりました。このドレスは女性の強さとエンパワーメントを象徴する世界的なアイテムとなっています。

生涯にわたり積極的に慈善活動に取り組み、フォン・ファステンバーグは世代を超えて女性の地位向上に努めてきました。地域社会に変化をもたらす傑出した女性を表彰するDVFアワードは、ジェンダー平等の実現に向けた取り組みに意義深く、長く続く影響を与えてきた功績を象徴しています。

78歳になったフォン・ファステンバーグは、自身の功績について改めて考えています。最近公開されたドキュメンタリー作品、『Woman in Charge』は、アカデミー賞受賞監督のシャルミーン・オベイド=チノイが手がけ、彼女の人生の歩みや、男性優位の業界を切り開き、数百万ドル規模の事業を築き上げ、女性をその中心に据えた過程を描いています。

シャルミーン・オベイド=チノイ監督の『Woman in Charge』は、フォン・ファステンバーグの人生と功績を描くドキュメンタリーです。Image: 世界経済フォーラム

今年のダボス会議で、ダイアンはオベイド=チノイと親密な対談を行いました。ドキュメンタリーの先行上映から始まったこの対談では、彼女の人生、得た教訓、そして功績がもたらした影響について語られました。

ダボス会議2025での対談全編は、以下からご覧いただけます。

母の物語

フォン・ファステンバーグの母、リリー・ハルフィンはホロコーストの生存者でした。

1944年、ブリュッセルでレジスタンスに参加していたとして逮捕され、強制収容所へ送られました。

「アウシュヴィッツへの移送には4日、5日とかかりました。明かりも水も食べ物もない。どんな状況だったか想像できるでしょう」

アウシュヴィッツに到着したリリーは、列の分岐点で右に進む友人についていこうとしました。しかし、後にヨーゼフ・ゲッベルスと判明した兵士に鞭打たれ、左へ進む列に無理やり入れられました。

「彼女は彼を憎しみを込めて見つめました」とフォン・ファステンバーグは振り返ります。後になって初めて、彼が命を救ってくれたと気づきました。「右へ進んだ人たちはガス室に送られた」のです。

「母は、私たちには想像すらできない恐怖を生き抜きました。

「だからこそ、母は私に大きな人生を送ってほしいと願い、私はそのような人生を送りました。そして母はこうも言いました。決して被害者になってはいけない。何があっても、決して被害者になってはいけない、と」

思いやりについて

ホロコースト生存者の娘であり、ファッション業界で働く女性として、ダイアンの人生は、憎しみではなく思いやりを選ぶ力を常に思い起こさせてくれます。

分断が深まる世界で、フォン・ファステンバーグにとって思いやりは、もはや個人の美徳にとどまらず、リーダーシップの戦略となっています。

「今は怒りの波、マッチョイズムの波が押し寄せています。だからこそ、それに対して怒ることだけは避けなければなりません……できる限り女性らしくある必要があります。それは、思いやりを持つということです」と彼女は説明しました。

「責任ある立場に就くと、新たな力があることに気づきます……思いやりの力です」

彼女のリーダーシップ観は、従来の常識に反しています。自己主張、決断力、しなやかさは長く成功の要と見なされてきましたが、フォン・ファステンバーグは、思いやりこそリーダーシップの真の強みだと考えています。

「思いやりは通貨です。お金のように使うことができ、使えば使うほど増えていきます」

シンプルでありながら、革新的な考え方です。分断が広がる今、フォン・ファステンバーグの哲学は、より良い世界への希望を確かに与えてくれます。

世界経済フォーラムは、多様性、公平性、包摂性に向けてどのような取り組みをしていますか?

新経済・社会センターは、経済と技術の変化が仕事、スキル、機会をどのように再形成しているかを理解するため、リーダー同士をつなぎます。

知見の共有と協働を通じて、同センターは、移行期に人々と社会を支える包摂的な経済モデルをパートナーが探求できるよう支援します。

同センターの取り組みを見る

2025年を表す3つの言葉

フォン・ファステンバーグはダボスの聴衆に、毎年初めに新しい日記を開き、その先の数カ月に向けた意図を定める3つの言葉を書き留めると話しました。何十年も続けてきた習慣です。

「私は12月31日生まれで、いつも日記を書きます。だから1月1日の新しい日記はとても大切です。新しい日記で、真っ白なページなど、すべてが新しい。そして毎年、その年を表す言葉を見つけます」

年によっては、「感謝と明晰さ」や「意図と実現」のように、言葉が個人の成長を表します。しかし今年の言葉は、彼女を取り巻く世界に特に呼応しているようです。それは、強さ、思いやり、そして機敏さです。

「『機敏さ』という言葉を使ったのは初めてですが、今の世界では最も大切な言葉だと思います。もう何も予測できません。これまで以上に、変化に備え、柔軟に対応し、何より自分自身としっかり向き合う必要があります」

強さ、思いやり、機敏さが、フォン・ファステンバーグの2025年を表す言葉です。Image: 世界経済フォーラム

「機敏さ」という言葉は、フォン・ファステンバーグがキャリアを通じて大きな影響力を保ち続けてきた理由を示しています。彼女は生涯にわたり、自らを刷新することを受け入れてきました。

次の大きな変化である人工知能(AI)は、彼女の機敏さを試す最新の課題です。産業を再編し、新たな形へと変えるAIにどう向き合うかについて、彼女は機会と責任の両方を見ています。

「人工知能を恐れている人がいるのは分かります。でも、もうここにあります。そして私は個人的に大好きです。ChatGPTは親友の一人になりました」

「AIに質問するだけではないと気づきました。議論することもできます。AIがあなたについて学べば学ぶほど、会話ができるようになります。私にとって、もちろんAIは女性です!」

自らの功績について

自分の人生を描いたドキュメンタリーが公開されるとしたら、最初に見たいと思いますか?

フォン・ファステンバーグの場合、答えは「いいえ」でした。最近のドキュメンタリーの制作過程からは身を引き、初日まで関わらないことを選びました。しかし78歳になった今、自らの功績を世界と分かち合うことへの答えは「はい」でした。

「年を重ねて大切なのは、功績について考えることです。でも、功績とは何でしょうか?」

「功績とは何よりもまず、自分が成し遂げた善いこと、心を通わせた人々、そして築いた家族です」

ファッション界への影響にとどまらず、フォン・ファステンバーグは慈善活動、メンタリング、社会的責任を通じて女性を支援することに人生を捧げてきました。この献身が評価され、今年、デビッド・ベッカム、山本理顕とともにクリスタル賞を受賞しました。

ファッションデザイナーであり、慈善活動家であり、女性の権利を擁護してきた彼女は、今年の年次総会でクリスタル賞を受賞しました。Image: 世界経済フォーラム

ドキュメンタリーの制作から距離を置くという決断は、自身の物語から離れて眺める機会となり、その過程で彼女は新たな発見をしました。

「初めて、誰かの目を通して自分の人生を見ました。そして78歳になった今も、自分は成長し続けていると気づきました」

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