資産・信用のブームやバブルは歴史的に、銀行危機や金融危機、深刻な景気後退、公的債務の急増を招く破綻や暴落へと転じてきた。金融システムの救済や実体経済の急落防止には、大きな財政コストが伴う。
2007~09年の世界金融危機は、大恐慌以降で最新かつ最も深刻な事例である。危機は米国のサブプライム住宅・住宅ローンのバブル崩壊で始まったが、英国、アイルランド、スペイン、アイスランド、ドバイなど、他の国・地域でも住宅ブームが崩壊した。金融危機の余波は住宅市場の急激な落ち込みを招き、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、オランダなど、過熱度が比較的低かった欧州市場でも同様だった。
現在、先進国と新興市場の双方で、カナダ、英国、スイス、フランス、スウェーデン、ノルウェー、中国、香港、シンガポールなど、複数の住宅市場に過熱の兆候が強まっていることを示す証拠が増えている。また、世界各地の複数の信用市場や株式市場でも、過熱の初期兆候が見られる。
実際、低成長、高失業率、低インフレ率を根拠に正当化されてきた非伝統的金融政策(量的緩和や政策金利ゼロなど)は、実体経済向け信用の大幅な増加にはつながっていない。一方で、資産価格の再膨張をもたらし、それが時間の経過とともに資産・信用市場の過熱や、明白なバブルへと発展する可能性がある。
中央銀行は今や、金融安定(リスクの高いバブルを回避すること)が、従来の経済安定(インフレを低く保ちながら力強い成長を実現すること)という目標に加え、政策の中心的な目標になったと認識している。目標が二つある一方で、手段も二つあると主張する。すなわち、経済安定を目指す金融政策に加え、バブルを回避し金融安定を実現するためのマクロプルーデンス規制と金融システムの監督である。しかし、マクロプルーデンスのアプローチは過去に機能せず、今も効果がない可能性があり、規制されていないシャドーバンキングが存在する限り機能し得ない。米連邦準備制度理事会(FRB)の元理事ジェレミー・スタインの言葉を借りれば、金融システムのあらゆる隙間にまで行き渡り得るのは金融政策だけかもしれない。
マクロプルーデンス規制が機能しなければ、中央銀行は実施してもしなくても非難される。実体経済の回復が弱いまま政策金利ゼロから脱却すれば、あらゆるバブルの中でも最大のものを引き起こす危険がある。そして、金融政策でバブルをはじけさせようとすれば、債券市場の暴落と実体経済の急激な失速を招く危険がある。したがって、規制が機能するか、また景気の急激な失速を伴わずにバブルを抑制できるかは、今後数年間、先進国と新興市場の中央銀行が直面する最も難しい課題となる。
グローバルリスク2015年報告書が公開されました。
著者:ニューヨーク大学スターン経営大学院の教授で、Roubini Global Economics会長を務めるヌリエル・ルービニは、クリントン政権下でホワイトハウス経済諮問委員会の国際問題担当シニアエコノミストを務めた。
ヌリエル・ルービニはダボスで開催される2015年年次総会に出席し、セッション「 インドの次の10年」のパネリストを務める。1月23日11am CET。
画像:2011年1月18日、ザグレブで撮影。10ドル紙幣と100クーナ紙幣の上に置かれた各国の硬貨を写したイメージ写真。REUTERS/Nikola Solic
