気候変動や新型コロナウイルス感染症など、世界的な課題に関する科学研究は、今なおグローバルノースが主導しています。
資金格差も一因となっているこの南北格差により、共通課題への取り組みに世界の知見を結集できていません。
この不均衡に対処するには、助成金へのアクセス拡大、資金の流れの促進、研究協力の改善など、構造的な変革が必要です。
気候変動と新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界中の数え切れない不平等を明らかにし、さらに深刻化させました。その中でも特に顕著なのが、グローバルサウスの科学研究コミュニティへの支援が不平等であることです。
気候変動対策資金であれ、ワクチンの製造・流通であれ、存亡に関わる世界的課題への対応は、今なおグローバルノース発の研究に主導されており、その結果、南半球の地域社会に甚大な影響を及ぼしています。
科学研究開発への資金提供に関する世界的な取り組みに根付く歴史的・構造的不平等に対処する必要があります。そこでは南北間の協力が不均衡で、途上国の研究者はしばしば補助的な役割にとどまり、資金提供者は主にグローバルノースにある一部の機関を支援する傾向があります。
この南北格差は、科学による共同対応の有効性を損なうおそれがあります。また、途上国にある豊かな知的資本を研究コミュニティが活用できなくし、限られた文化的背景や視点に基づく狭い枠組みに科学研究を閉じ込め、知識の創出や政策策定における地域の文脈の根本的な重要性を見落とすことにもつながります。
構造的な変革によって南北間の不均衡に対処し、主要課題に取り組む研究機関同士の連携を改善できると考えています。具体的には、助成金へのアクセス拡大、大学発スタートアップへの資金流入の促進、効果的な南北研究協力モデルの支援が挙げられます。
1. 助成金へのアクセスを改善する
科学分野の世界的な資金提供者は、グローバルサウスの研究者が公平に利用できる助成金に、より多くの資源を配分し、研究者が資金獲得に成功しにくくなる根深い偏りを取り除く必要があります。そのためには、途上国の科学者が大規模な助成金を獲得する競争に参加する力を不当に制限している手続きを見直し、複雑な、あるいは偏りのある申請手続きを進めるための支援を提供し、グローバルサウスの研究機関向けにより多くの資金を確保しなければなりません。途上国の研究者がより多く助成金を利用できるようにすることが、重要な第一歩です。
2. イノベーションの事業化に向けて資金を増やす
グローバルサウスの大学への国際的な資金流入を増やせば、新たな科学的発見の事業化を促し、研究を現実社会へのインパクトへとつなげ、さらなるイノベーションと発見を生み出す大学エコシステムの価値を高めることができます。
コミュニティ・ジャミールでは、こうした取り組みの効果を実際に目の当たりにしてきました。カイロ・アメリカン大学(AUC)で起業家精神分野のアブドゥル・ラティフ・ジャミール寄付講座教授を務めるアイマン・イスマイル氏は、2013年にベンチャーラボ・アクセラレーターを立ち上げ、その後、AUCエンジェルズ投資家ネットワークを設立し、大学内外のスタートアップの育成を支援しました。AUCベンチャーラボの成功事例の一つが、AUC卒業生が共同創業したモビリティ系スタートアップのスウィブルです。同社は15億ドル規模のSPAC合併を通じてナスダックに上場します。科学者が発見を事業化するための資金にアクセスできれば、グローバルサウスの大学は人材を惹きつけて定着させ、現実社会でのインパクトを高めることができます。
3. 南北間の協力を強化する
研究機関や大学の間には南北協力が存在しますが、対等な協力というより、グローバルノース主導となることがあまりにも多くあります。その結果、資金や職業上の機会、さらには成功への評価も、地域間で公平に分配されることはまれです。
新たに立ち上げたジャミール基金は、キング・アブドゥルアズィーズ大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症研究における協力を推進しています。また、ウェルカムの支援を受けるケニア医学研究所とオックスフォード大学の連携事業、KEMRIウェルカム・トラスト・プログラムも、北と南の機関による研究協力をより公平にできることを示す例です。いずれも、私たち全員に影響する課題に取り組むため、北と南の科学者が肩を並べて進める対等な協力を支援しています。
端的に言えば、グローバルサウスの科学者を支援し、同地域の研究機関を強化しなければ、世界の課題、とりわけグローバルサウスの課題に取り組むことはできません。
世界的課題に共に取り組む
科学への資金提供は、失敗を一切容認しない姿勢から「過酷」と評されるエリート競技への資金提供のようであり得ますし、一般にそうあるべきです。しかし資金提供者が、重要な科学的発見を着実に生み出す機関(多くはグローバルノースにあります)に大きく有利なように天秤を傾けると、グローバルサウスの優れた科学者が飛躍的な成果を上げる余地は狭まります。そうした機関は、南の同等の機関には得られなかった潤沢な資金を数十年、時には数世紀にわたって受け、先行してきたからです。グローバルサウスの大学や研究者により多くの資金を投じて科学分野の不平等に対処することは、グローバルサウスの人々にも世界中の人々にも、私たちが直面する課題への取り組みを後押しします。




