エネルギー革新に投資する必要がある理由

エネルギー革新に投資する必要がある理由
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約250年前、当時グラスゴー大学の科学機器製作者だったジェームズ・ワットは、 1765年5月のある春の朝、グラスゴー・グリーンを散策中に分離式蒸気復水器を考案し ました。化石燃料消費の拡大の起点を一つの瞬間にたどれるとすれば、まさにこの時だったと言えるでしょう。

ワットの実に見事な着想は、蒸気動力の効率を3倍に高め、英国を60年先の未来へ押し進めたと言っても過言ではありません。しかし、ワットの新しい機械は生産現場の人間労働を代替できただけでなく、鉱山から効率よく水をくみ出し、それによって石炭の採掘と消費を加速させました。18世紀の産業や暖房に使われる、まだ主に限られた用途の燃料だった石炭は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、産業化した英国を動かす主要燃料となりました。

長期的な化石燃料消費に伴う21世紀の気候リスクを受け、投資撤退運動は機関投資家に対し、化石燃料産業から 投資を引き揚げる よう求めています。しかし、あらゆる化石燃料から一律に投資を引き揚げるよう最も声高に主張する人々は、過去のエネルギー転換の微妙な事情をしばしば無視し、課題の規模を過小評価しています。中には、原子力のような実証済みの低炭素技術の拡大に反対する人さえいます。

問題が気候で、原因が炭素なら、エネルギー経済が実際には何世紀にもわたり相対的に脱炭素化してきたことは、意外に思えるかもしれません。燃料はすべて同じではなく、木材から石炭へ、さらに石油、メタン、原子力へと至る歴史的なエネルギー転換によって、供給されるエネルギー単位当たりの炭素排出量は 着実に減少 してきました。

こうした過去のエネルギー転換に共通する根本的なつながりは、燃料のエネルギー密度が着実に高まってきたことです。たとえば、炭素を多く含む石炭から水素を多く含むメタンへの移行が挙げられます。メタンは 同じ重量でより多くのエネルギーを生み出します。もちろん、この期間に累積排出量は着実に増えてきましたが、それは急速な工業化の間、 経済成長とエネルギー消費が密接に 結びついていたためです。

したがって、現実的なエネルギー政策は、エネルギー密度の向上をもたらしてきた、歴史上の長期的な波を加速させるべきです。その計画では、炭素を多く含む石炭から、水素を多く含むメタンおよび炭素を含まない原子力への大規模な移行を進めます。どちらも需要に応じた電力供給が可能です。

再生可能エネルギーが将来重要な役割を果たすことは間違いありませんが、エネルギーが分散しているため出力密度が低く、断続的にしか機能せず、長期的な歴史の傾向に逆行します。原子力は石炭を直接置き換えられることが多い一方、風力と太陽光では、風のない曇天の日にも電力供給を維持するため、依然として化石燃料を使う発電所が必要です。

産業規模の蓄電池やその他のエネルギー貯蔵システムは部分的な解決策になり得ますが、断続性に対処するための追加の資本コストがかかり、必要な貯蔵規模は 膨大です。

しかし、変化は化石燃料産業そのものから生じることもあります。石炭を炭素回収・貯留によってよりクリーンにしたり、炭素を多く含む石炭を水素を多く含むメタンで部分的に置き換えたりするための資本と工学的専門知識を兼ね備えているのは、石油・ガス産業だけです。実際、燃料を石炭からメタンへ移行することは、近い将来に実現できる最も容易で費用対効果の高いエネルギー転換の一つです。これは近年の米国の排出量の大幅な 減少 から明らかです。その主な要因は、安価なシェールガスが石炭に取って代わったことです。

投資撤退を求める人々への問い

米国のシェールガス産業が経済面でも排出量の面でも収めた、紛れもない成功は、あらゆる化石燃料を対象とする投資撤退運動の妥協を許さない立場に問題があることを浮き彫りにしています。

実際の投資撤退の動きを見ると、ノルウェーの巨大な政府系ファンドはエネルギー・ポートフォリオの配分を調整し、石炭からは全面的に投資を引き揚げる一方、石油とガスには慎重に再投資している点に注目する価値があります。同様に、シェルが最近、天然ガス企業BGグループを買収したことは、炭素を多く含む燃料から水素を多く含む燃料へという長い歴史的傾向に沿って、石炭をガスに置き換えようとする動きを示しています。

投資撤退運動は、原子力に対するしばしば極めて矛盾した見解にも正面から向き合う必要があります。ベテラン気候科学者のジム・ハンセンは、再生可能エネルギーだけを使って化石燃料から急速に移行できると信じるのは、「イースターバニーを信じる」ようなものだと述べています。また、妥協を許さない反原子力の姿勢によって、主要な環境団体の多くが排出削減にとって最大級の障害の一つになっていると批判しています。

あらゆる化石燃料からの投資撤退と低炭素の原子力エネルギーの終結を同時に訴えることは、少なくとも一部の人々にとって、投資撤退運動が単に気候問題を扱うものではなく、はるかに広範な議題を掲げていることを示しています。

エネルギー革新への投資

すべての人に現代的なエネルギーサービスを提供しながら炭素排出量を削減することに本気で取り組むなら、私たちはイノベーションに注力する必要があります。ジェームズ・ワットの効率的な新型蒸気機関がトーマス・ニューコメンの旧式機関に取って代わり始めたとき、新技術の普及を促すための上意下達の政治目標も、政府の奨励策も必要なかったことを思い起こすべきです。同じ量の機械的仕事を生み出すのに必要な石炭が3分の1で済んだため、ワットの着想は成功したのです。

今後数十年のうちに、真に拡張可能な、化石燃料に代わるより安価でクリーンな選択肢を開発できれば、その後のエネルギー価格の低下は、慢性的なエネルギー不足の影響を受けて暮らす途上国の人々にも行き渡るでしょう。そして副次的な効果として、気候問題は最終的に自ずと解決するでしょう。

最後に、ジェームズ・ワットの発明から250周年を迎えた今、未来を見据えるにあたり、啓蒙時代の彼の創意工夫を早急に再発見し、人間を中心とする進歩的な未来という概念を取り戻す必要があります。ジェームズ・ワット以前の、木を燃やしていた時代の長い黄昏の中では、私たちはエネルギーを得るために働いていました。しかし今やエネルギーが私たちのために働き、現代文明の価値あるものすべてを追求できるようにしてくれています。

また、長期的には、エネルギーと気候という深く絡み合った問題は気候科学によって解決されるのではなく、工学によって解決されることを明確にする必要があります。一方、世界のエネルギー貧困は、エネルギー価格を引き上げるのではなく、引き下げることで解決されます。

ジェームズ・ワットのイニシャルは、電球が供給する電力を測る単位に刻まれています。それは同時に、彼が世界にもたらした知的な光と大きな進歩を私たちに思い起こさせます。投資撤退の象徴性に執着するのではなく、私たちが投資すべきなのはこれです。

本記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。 元の記事を読む。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:コリン・マキネスは、グラスゴー大学のジェームズ・ワット工学科学講座教授です。

画像:イルミネーションで覆われた木が写っています。REUTERS。

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