ジョージ・グオチアン・チェン氏とシュリクマール・スリヤナラヤナン氏は、持続可能な未来に必要となる大量のバイオマスを生産・加工するための資源を、地球の海洋に求めています
産業用 バイオテクノロジーの産業応用――新たな「バイオエコノミー」――は、バイオ燃料や再生可能な化学品を生産できるという可能性を示しており、石油や化石燃料を原料とする有限な資源で作られた製品への社会の慢性的な依存に代わる選択肢を提供するものです。「バイオリファイニング」は、バイオマスを基本原料とします。バイオマスは農業によって生産される再生可能な資源です。しかし、石油系原料を効果的に置き換え始めるために必要となるバイオマスの生産・利用規模は、食料と飼料のための現在の農業規模に匹敵するようになるでしょう。そこに問題があります。
「バイオリファイニング」技術には目覚ましい実証例があります。木質バイオマスに由来する多様な糖を先進的なバイオ燃料へ変換する技術や、トウモロコシから再生可能なバイオプラスチックを製造する技術などです。これらの製品の一部はすでに商品化されています。この分野で研究する科学者たちのスローガンは「糖は『新しい石油』である」であり、ここでの糖はバイオマスの分解によって得られるものです。
バイオマスを生産するための原材料は、当然ながら農業と同じです。すなわち、土地、淡水、肥料です。一人当たりの土地が豊富で、灌漑用水にも恵まれている国もあります。ブラジルはそのような国の一つであり、バイオ燃料の分野でリーダーとなっています。他の国はそれほど恵まれていません。例えばインドは、大規模経済国の中で一人当たりの土地面積が最も少なく(その大きな要因は、食料を供給しなければならない巨大な人口にあります)、また淡水も不足しています。米国は土地と水が十分にあり、バイオ燃料の分野でリーダーになり得ます(ただし、安価なシェールガスの台頭により、その緊急性はある程度弱まっています)。
淡水はバイオマスを生産するためだけに必要なのではなく、バイオマスの変換プロセスにおいても大量に必要です。発酵によってエタノール(再生可能なバイオ燃料)を生産する場合、通常、生成されるエタノール1リットルにつき、発酵終了時に9リットルの水が残ります。ブタノールなどの先進的なバイオ燃料では、水への溶解度が低いため、この比率はさらに高くなります。発酵プロセスから出るこうした廃水を処理・再利用するには、多額の費用がかかります。
では、持続可能な未来に必要となる大量のバイオマスを生産・加工するための資源を、地球の海洋に求めることは理にかなっていないでしょうか?
科学的には実際に可能であることが分かっています。海藻(または海洋植物やマクロ藻類)は塩水中でよく育ちます。海洋には、塩水での成長によく適応し、海洋バイオマスを有用な製品へと変換できる微生物からなる生態系全体が存在します。陸上の微生物や植物に対して大きな成功を収めてきた現代生物学の技術は、海洋微生物にも容易に応用できるはずです。
海洋環境で海洋植物を栽培・運用する際の工学的課題は、海底油田探査や洋上風力発電など、他の分野ではすでに克服されています。海水に長期間さらされても腐食を最小限に抑えられる材料はすでに利用可能です。世界各地ですでに稼働している海水淡水化プラントに目を向けるとよいでしょう。
これらすべては遠くない将来に現実のものとなり得ますが、各国がこうした解決策を追求する緊急性は、それぞれの地域の事情と、自国の将来のエネルギー供給の重要性をどう認識しているかによって異なるでしょう。
執筆者:ジョージ・グオチアン・チェン氏は、清華大学(北京)の微生物学・生体材料学教授であり、世界経済フォーラムの Global Agenda Council on Biotechnologyのメンバーです。シュリクマール・スリヤナラヤナン氏は、インドのSea6 Energyの会長であり、世界経済フォーラムのGlobal Agenda Council on Biotechnologyのメンバーでもあります。
画像:カリフォルニアのビーチで遊ぶ家族 REUTERS/Mike Blake

