パンデミック後の消費者需要の積み残しとロシアによるウクライナ侵攻を受け、今年、エネルギー価格が急騰した。
太陽光発電と蓄電を組み合わせたシステムは、価格の引き下げとエネルギー安全保障の確保に役立つ可能性がある。
人工知能で拡張したモノのインターネットは、太陽光発電量の向上、蓄電池管理の最適化、運用効率の改善、コスト削減に欠かせない。
新型コロナウイルス感染症後に積み上がった需要の顕在化や、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う供給の混乱など、複数の要因により、今年、エネルギー価格が急激に上昇した。
エネルギー価格の急上昇と、それがインフレ上昇に寄与していることから、消費者が生活費の高騰に直面するなか、世界各地で政策運営に混乱が生じている。例えば英国では、家庭が「生活費の危機」に見舞われ、消費者物価指数は、2022年7月までの12か月間で10.1%上昇した。
しかし、エネルギー価格の上昇と変動の拡大、とりわけ石油とガスの価格高騰は、世界の再生可能エネルギーへの移行を加速させる可能性がある。そこで登場するのが「最強コンビ」だ。
太陽光発電とエネルギー貯蔵を組み合わせたシステム、すなわち「最強コンビ」は、エネルギー供給の不安定さとコスト、さらにCO2排出量を低減しながら、エネルギー安全保障を確保する。再生可能エネルギーは、他国、時には非友好的な国から輸入するのではなく、「自分たちの身近な場所」で生み出される。
再生可能エネルギーはクリーンで安価だが、発電量が不安定でもある
再生可能エネルギー発電の最大の課題は、発電量の不安定さだ。太陽は一日中照り続けるわけではないため、再生可能エネルギーの発電量が少ない、または発電できない時間帯に備えて、信頼性の高い蓄電方法を組み込むことが重要であり、送電網の停電リスクの軽減にもつながる。
アナリストは、太陽光発電と蓄電の最強コンビは、蓄電池の商業化における最良の機会の一つだと結論づけている。蓄電の専門家グループから、蓄電池を併設するのに「最も魅力的な国」と評された英国では、国家のネットゼロ政策課題において蓄電池が重視されている。
再生可能エネルギーの拡大が続いていること、太陽光発電資産と蓄電資産の双方でコストが大幅に低下していること、再生可能エネルギーを管理しやすくする技術が進歩していることが、市場を押し上げる主な要因だ。
スマート技術を統合すれば、太陽光発電と蓄電を組み合わせたシステムの効果をさらに高め、課題の緩和とクリーンエネルギーへの移行加速につなげられる。
人工知能で拡張したモノのインターネット(AIoT)は、天気予報、電力網の制約、蓄電池の状態、電力価格、電力系統サービス市場などの要因を予測して対応することで、太陽光発電量や蓄電池の充放電サイクルを改善できる。
AIoTは、ほかにも、データを単一のプラットフォームに集約し、人工知能が分析結果を活用できるようにすることで、最強コンビの収益増加、蓄電池の寿命延長、太陽光発電量の拡大、保守費用の削減、安全リスクの低減に役立つ。
太陽光発電とエネルギー貯蔵を組み合わせる利点
送電網の安定性、蓄電池の安全性、停電の防止
太陽光発電と蓄電の組み合わせは、日照に備える保険のような役割を果たし、電力需要が高く(価格も高くなる)太陽光発電量が少ないときに、蓄えた電力を供給できる。こうしたスマート技術を活用して太陽光発電と蓄電を統合すれば、オーストラリアからカリフォルニア、レバノンから南アフリカまで各地で発生している停電の防止にも役立つ。
価格裁定取引と電力系統サービス
蓄電によって企業は、「安く買って高く売る」機会も得られ、需要と価格がピークに達したときに安価なエネルギーを利用できる。さらに、こうした資産は、周波数を一定範囲内に保つ動的周波数封じ込めなどの電力系統サービスを提供し、所有者に新たな大きな収益をもたらす。
発電収益の圧縮リスクを緩和し、蓄電池の安全性を高める
太陽光発電と蓄電の最強コンビは、収益や利益の圧縮(「太陽光発電の捕捉率」とも呼ばれる)を克服する有効な方法だ。これは、太陽が照っている時間帯に、より多くの太陽光発電資産が市場に参入することで、エネルギー価格が継続的に下落することを指す。さらに、最強コンビに組み込まれたスマート技術は、運用パラメーターを継続的に監視・最適化し、信頼性と発電収益を最大限に高めることで、蓄電池の安全性を強化する。
太陽光発電と蓄電の組み合わせによるコスト削減と新たな収益源
太陽光発電と蓄電の組み合わせは、必要な初期投資の一部を削減することで、再生可能エネルギー事業の投資利益率(ROI)を高める。つまり、同じ収益を得るのに必要なパネルの数を減らせるうえ、前述の電力系統サービスを提供することで新たな収益源も生み出す。
太陽光発電と蓄電の普及を妨げる障壁
太陽光発電と蓄電の普及を妨げる最大の障壁はノウハウだ。最適な設計の構成、投資額の見極め、リスク管理(規制対応を含む)に加え、こうしたシステムの管理には高度な複雑さとコストが伴う。
最適なシステム設計を構成する際には、投資利益率(ROI)を最大化する理想的な蓄電池構成の設計、最適なサイクル率や電力市場の動向、理想的な放電深度、劣化率の把握、資産の収益性と性能を最大化する適切なソフトウェアシステムの選定など、さまざまな課題に直面する。
投資とリスク管理も検討すべき点だ。技術がまだ成熟段階にあるため、投資家は大規模な投資を決める前に、太陽光発電と蓄電のプロジェクトの性能とROIに関わる技術面・規制面のリスクを評価している。この不確実性により、一部の市場では最強コンビへの投資が見送られる可能性がある。
最後に、複数の資産システムを監視することは非常に複雑で、コストもかかる。運用を最適化し、システムの健全性を維持するために、組織には、資産、拠点、事業部門全体にわたって運用を先回りして自動化し、故障を特定・解決する能力が必要となる。
技術を活用して太陽光発電と蓄電のシステムを最適化する
技術は、前述の障壁を克服し、より強靱で効率的な太陽光発電・蓄電インフラを実現するうえで重要な役割を果たす。主な解決策には、デジタルツインモデリング、予知保全、最適化と制御に向けたAIoTの統合がある。
デジタルツインモデリングは、設計と性能の最適化に役立つ。実際の資産を建設する前に、精度の高いシミュレーションを通じて投資判断に耐える事業計画を作成でき、意思決定の信頼性を高められる。デジタルツインにより、資産所有者は地域固有の電力網の実情を踏まえて問題を予測し、将来のリスクに備えることができる。
予知保全は、資産の稼働率とコスト効率を高められる。計画外の停止や不十分な保守は、望ましくないコストを招き、資産やプラントの生産性を5~20%以上低下させる可能性がある。
AIoTによる予知保全は、故障の予測、遅延の最小化、早期警告の提供を通じて、資産の信頼性、効率、性能を高め、保守費用全体を5~10%削減する。
さらに、AIoTエネルギー管理システムは、ミリ秒単位のきめ細かなリアルタイム制御を実現し、単一のプラットフォームで資産群全体を監視・制御できる。また、天候予測と電力価格予測を用いて、需要と発電量を正確に予測する。
複数資産のリアルタイム制御と高精度な予測により、エネルギーの充放電スケジュールを最適化し、需要側・供給側の制御、電力取引の高度化、円滑な電力系統への統合が可能となる。その結果、運用コストを削減し、収益を拡大できる。
クリーンで強靱なエネルギーを実現するスマートな太陽光発電と蓄電
戦争、インフレ、原油価格の高騰など、経済的・地政学的リスクを抑えるのは容易ではない。できるのは、「自分たちの身近な場所」でクリーンエネルギーの強靱性を築き、コストと炭素排出量を削減しながら、自ら制御できない脅威への露出を最小限に抑えることだ。
スマートな太陽光発電と蓄電は、その実現に役立つ。この将来を見据えたソリューションにより、クリーンエネルギーを動力源とする、インテリジェントで柔軟性と強靱性を備えた送電網の長期的な持続可能性を確保できる。
クリーンエネルギーへの移行に向けて、世界経済フォーラムは何をしているのか?
スマートな再生可能エネルギーの導入を怠れば、予測不能で望ましくない地政学的リスクへの露出が深まり、エネルギーコスト、ひいては誰にとっても生活費が上昇するおそれがある。
太陽光発電と蓄電の組み合わせなどのソリューションによってこそ、各国は生活費を削減し、エネルギー自給を実現し、敵対的な国への依存を減らせる。今こそ行動すべきだ。


