このブログは、当フォーラムの 「Emerging Technologies 2014」に関するインタビューシリーズの一部です。
「グリッドスケールの電力貯蔵」とはどういう意味でしょうか。
私たちが話しているのは、電力を貯蔵するための技術の選択肢の幅広い範囲についてです。電力がいかに不可欠であるかを考えると、21世紀においても電力を効果的に貯蔵する能力がまだないのは不思議なことです。電力網の仕組みは、発電機が、いかなる時点においても消費されている電力量とまったく同じ量を送り込む必要があるというものです。需給は常に一致していなければなりません。
当然ながら、風力、太陽光その他の再生可能エネルギーといった変動性電源の供給が増えるにつれ、それは不可能になります。一方、原子力は需要のピークに合わせて出力するのではなく、主に大量のベースロード電力を供給しています。課題は、発電機から供給できる指令可能な電力量が減少している電力網をどう運用するかということです。そのため、貯蔵は、誰もが求める、いわば黄金の壺のようなものです。
あなたはこれを一連の技術として説明されました。それにはどのようなものが含まれますか。
エネルギーを貯蔵する方法はいくつかあります。化学的に貯蔵すること、運動エネルギーとして貯蔵すること、位置エネルギーとして貯蔵することができます。現時点で唯一の大規模なエネルギー貯蔵技術は、水の揚水式貯蔵です。ウェールズには大規模な施設があり、供給過剰時に水を高所へ汲み上げ、急激な需要のピークに対応するために大型タービンを通して低所へ戻しています。約16秒以内に追加で約2ギガワットを供給でき、非常に迅速に出力を上げることができます。しかし、当然ながら、上部の貯水池が空になると、それ以上利用できる水はなくなります。また、この種の施設は山岳地形と大量の水を必要とするため、建設費が高額です。エネルギーの大部分を再生可能エネルギー源に頼る場合、余剰エネルギーの貯蔵はより差し迫った課題となります。
充電して後日使用できる巨大なバッテリーは、解決策になるでしょうか。
バッテリーは、当然ながら、従来から小規模で電力を貯蔵してきた方法であるため、有力な選択肢の一つです。しかし、バッテリーの場合、問題は容量です。メガワットやさらにはギガワット時の供給に十分な電力を貯蔵するには、巨大なバッテリーが必要です。選択肢の一つは、フロー電池と呼ばれるものです。これは、エネルギーを液体の化学成分の中に貯蔵し、その液体を大型タンクに保管して、必要なときだけバッテリーに通して使用するものです。電力を貯蔵するために巨大なバッテリーを用意する必要はなく、そこを流れる液体を貯蔵できればよいのです。
もう一つの選択肢は圧縮空気です。これは位置エネルギーを貯蔵するもので、放出される際にタービン内で運動エネルギーに変換されます。米国のコノコフィリップスは、地下の岩塩洞窟に空気を送り込む施設を試験的に運用しています。多くの国で天然ガスが大量に貯蔵されているのも、このような岩塩洞窟です。空気は100バールに加圧され、放出されるとタービンを通過してタービンを回転させ、電力を発生させます。
フライホイールが3つ目の選択肢です。供給過剰時に電力によって回転するように作られており、その回転によって電力が発生します。フライホイールは長期間にわたって回転速度が落ちていきます。これは実際には、運動エネルギーとしてエネルギーを貯蔵しているということです。もう一つの選択肢は、可逆式ヒートポンプによる断熱(アイセントロピック)式の熱貯蔵と呼ばれるものです。英国ケンブリッジには、アイセントロピック(Isentropic)という小さな企業があり、砂利で満たされた2棟の建物を有しています。一方の建物には非常に高温の砂利、もう一方の建物には非常に低温の砂利が入っています。両者の温度差を利用して電力を発生させています。
余剰電力を使って水を電気分解することができます。水を水素と酸素に分解し、その水素を使ってメタンを生成すれば、それを既存のガス網に送り込むことができます。当然ながら、ガスの貯蔵はすでに広く利用されている技術です。ガスは数日から数週間貯蔵され、その後、燃焼させて電力を発生させるか、既存のガス網に送り込むことができます。したがって、これは化学的にエネルギーを貯蔵する方法となるでしょう。
これらの技術が直面している障害は何でしょうか。
最大の課題はコストであり、それは規模の拡大と関係しています。コストが高すぎれば、規模を拡大することはできません。コストの問題のもう一つの要素は、往復効率です。プロセスを経る過程でエネルギーの60%を失っているとすれば、それは大きなエネルギーの浪費です。
競合するすべての技術は、ほぼ同じ開発段階にあるのでしょうか。
先頭を走る技術は見当たりません。試験段階のものもあれば、試作段階のものもあります。フロー電池のように、いまだ実験室段階にあるものもあります。数十年にわたって稼働しているものは、もちろん揚水式貯蔵だけです。ドイツでは、今後10年ほどの間に大量の変動性再生可能エネルギーで電力網を運用する計画があるため、これは緊急の課題となっています。その中で先頭を走る技術の一つがメタン化技術です。このプロセスでは、余剰電力を使って水素を生成し、さらにメタンを生成します。そのメタンは貯蔵されるか、ガス網に送り込まれます。特定の技術が飛躍的に先行するとは考えていませんが、年末までには先頭を走る技術が現れると予想しています。
これは、再生可能エネルギー源の効率の問題を解決することだけに関するものでしょうか。
これは全般的に化石燃料からの転換に関するものです。化石燃料は指令可能な電力を表しており、ある意味で非常に便利です。石炭やガスを大量に備蓄しておき、発電が必要なときにちょうど燃やすことができます。現在私たちが話しているのは、天候条件が適したときに利用可能となる変動性の再生可能エネルギー源、あるいは24時間稼働する原子力のことです。原子力は、需要のピークに合わせて出力を上げたり、需要の落ち込みに合わせて停止したりすることはできません。したがって、原子力でピークを抑え、谷間を埋めることができたとしても、利用可能な電力量を時間的にずらすために貯蔵が必要になります。
これらの技術が、エネルギー供給の問題に影響を与え始めるのは、いつ頃になると考えられますか。
2010年代後半までに、化石燃料からの転換を実現するためには、これらの技術が急速に大規模化して稼働している必要があります。原子力発電所の閉鎖を進め、再生可能エネルギーの活用拡大を目指しているドイツは、電力網の安定を保つために石炭の燃焼量を増やしています。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を目指す国々が失敗しないためには、再生可能エネルギーの導入が拡大するにつれて、これらの技術を大規模に稼働させる必要があります。
著者:マーク・ライナス氏は、オックスフォード大学地理・環境学部の客員研究員であり、元モルディブ大統領の気候変動担当顧問を務めた経歴を持ち、気候科学と政策について頻繁に講演を行っています。取材:シェーン・リッチモンド。
画像:アート作品「CLOUD」は、新品と再利用の電球5000個で構成されており、2014年3月5日にシンガポールで撮影されたものです。 REUTERS/Edgar Su

