イランの天然ガスは核交渉の行方をどう変えうるか

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クリミア併合と、それに伴うロシアによるガス供給停止の脅威は、不都合な真実を改めて思い起こさせた。政治に関して、欧州はロシア産ガスへの依存によって常に影響を受けるということだ。欧州議会によると、2013年、ロシアは欧州連合(EU)のガス輸入の43.2%、石油輸入の31.38%、石炭輸入の26.7%を供給した。しかし、依存は双方向に及ぶ。欧州向け石油・ガス輸出がロシアの連邦予算収入(5,150億米ドル)のほぼ52%を占めるため、EUはロシアにとって重要な貿易相手であるだけでなく、脆弱な実体経済を支える不可欠な支柱でもある。

ウクライナとシリアをめぐって欧州連合とロシアの亀裂が深まるなか、ウラジーミル・プーチンは欧州に冷淡な態度を取り始め、ガス供給を東方へ振り向けている。モスクワは最近、史上最大となる契約に署名した。北京との、30年間で4,000億米ドルのガス契約だ。同様に、ウクライナを迂回して黒海経由でロシア産ガスをブルガリアへ運ぶことを目的としていたサウスストリーム・パイプライン計画をプーチンが突然放棄したことは、ロシアが当面、譲歩するつもりがないことを示している。

その結果、欧州のエネルギー企業は代替パイプラインのルートを開発し、新たなガス供給国を見つけることに強い関心を持っている。ロシアからの天然ガス供給を、カタール、アルジェリア、ノルウェーからの供給に切り替えることは、欧州連合が大幅なエネルギー料金の上昇を受け入れる意思があるなら、検討に値する選択肢である。

イラン産ガス:欧州を長期的に救う切り札

欧州連合はこれまでイラン産の石油・ガスを一切輸入していないが、この選択肢は検討すべきだ。ロシアのガス輸出に匹敵する代替供給国がほとんどないことを考えれば、特に重要である。イラン政府が連邦予算の均衡に必要とする基準価格を現在の石油価格が下回るなか、両当事者が膠着状態から抜け出す道を見つける好機が生まれている。

BPの最近の報告書によると、イランはロシアに次ぐ世界第2位の天然ガス埋蔵量を持ち、その量は世界全体のガス埋蔵量の15.8%に相当する。イランは、ペルシャ湾に位置する世界最大の海底ガス田、サウス・パルス/ノース・ドームガス田をカタールと共有しており、同ガス田には推定1,800兆立方フィートの天然ガスが埋蔵されている。1979年のイスラム革命とイラン・イラク戦争の後、同国は精製能力の著しい不足に苦しみ、その結果、天然ガスの総生産量は1,666億立方メートル(bcm)に減少した。現在、そのうち輸出されているのはわずか94億立方メートルである。欧州議会は、イランの総輸出能力は年間1,500億立方メートルを超えると見ており、これはガスプロムが現在EU向けに輸出している1,400億立方メートルと比べても大きい。

イランからトルコへ延びるタブリーズ・アンカラ・パイプラインは、サウス・パルスガス田からトルコ国境の都市バザルガンまでガスを輸送している。イランは、「ペルシャ・パイプライン」の建設によってパイプライン網を延伸する計画を提案している。トルコを横断してイタリアに至る、全長3,300kmのネットワークである。ここで北部と南部の区間に分岐し、ドイツ、オーストリア、スイス、フランス、スペインへガスを輸送する。ペルシャ・パイプラインの輸送能力は年間約37~40bcmと推定され、最低でも約70億米ドルの外国投資が必要となる。

このルートはロシア領を迂回し、EUが年間25~30bcmを輸入することを可能にする。これは2013年にイタリアとドイツへ輸出されたロシア産ガスの総量に等しい。イランから欧州へのもう一つの長期的なエネルギー供給手段は液化天然ガス(LNG)であり、両貿易当事者間の相互信頼を強化することを目的に、10年間にわたって年間最大10bcmを輸出する能力が見込まれている。ガスはパイプライン網を通じてオマーンのLNGハブまで運ばれ、その後、地中海沿岸の港へ船で輸送される。

これまでの核交渉ラウンドでの取引条件は立場を変えるほど魅力的ではなかったが、今や利益の全体を拡大する機会がある。ロシアへのガス依存を断ち切りたい欧州の意向は、イランがEUとより良い条件を交渉する機会となる。このような長期的な互恵戦略の一環として包括的な解決策を見いだせば、波及効果が生まれ、ウクライナとシリア双方の和平プロセスに大きな影響を及ぼしうる。

イランと欧州のこの連携戦略には、双方による長期的な譲歩が必要となる。欧州連合はイランからのガス輸送について長期契約を結び、イランの精製能力向上への投資とペルシャ・パイプライン計画の完成を盛り込むことになる。その見返りとして、テヘランは核交渉でより妥協的な姿勢を取る可能性がある。

これが合意されれば、モスクワはEU加盟国に対する自らの影響力が弱まると認識するだろう。イランが「開放」され、西側諸国との関係が正常化すれば、EUのガス市場でより大きなシェアをロシアと争うことになる可能性が高い。新たなガス競争相手が登場すれば、ロシアは欧州に対する支配力をできる限り維持しようとするかもしれない。その選択肢の一つは、最大のガス市場であるEUを今後も確保しようと、ウクライナをめぐる合意を結ぶことだ。

近年、ロシアは核合意においてイランを熱心に支持しており、両国は最近、ロシアが新たに8基の原子炉を建設することで合意した。しかし、国家は主として自国の利益に突き動かされ、連携は利害の一致に基づいて形成されるものであり、その利害はいつでも変わりうる点に留意することが重要だ。ロシアとイランの接近は、現在の世界的な力の均衡が直接もたらした結果である。両国は経済・政治面で緊密な関係にあるものの、歴史的に見れば、その関係は決して友好的とは言えなかった。

1813年のゴレスターン条約、1828年のトルクメンチャーイ条約以来、ロシアとイランの関係は緊張してきた。ロシアに軍事的に敗れた後、皇太子アッバース・ミールザーは、現在のアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアを含む南コーカサスの領土の支配権を譲り渡した。イラン人は今なお、ペルシャ帝国領のロシアによる併合を、両国関係が不安定になった起源として語る。ロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンとの間でカスピ海の地位と帰属について合意できなかったことで、ロシア・ペルシャ関係はさらに悪化した。

そのため、テヘランがモスクワとの関係を深めているのは、同国を実行可能で信頼できるパートナーと考えているからではなく、選択肢が限られているためだ。現在も過去と同様、イランの利害は西側諸国とのほうがより重なっている。ロシア、イラン、EUの接近の可能性は、シリアの和平プロセスにも影響を及ぼす。イラン、ロシア、欧州連合がより妥協の精神を示せば、国際社会が一つの声でこの紛争に取り組んでいるという強いメッセージを、シリアの紛争当事者に送ることになる。

これは、もともと Harvard International Review

本記事は、もともとHarvard International Reviewに掲載された記事の短縮版です。

*免責事項:本記事で表明されている見解は著者個人のものであり、世界銀行、その理事会、または理事が代表する各国政府の見解を示すものではありません。著者:Dr. Tara Shirvani(@Tara_Shi

)は現在、世界銀行グループのエネルギー・運輸ユニットに勤務している。2012年、エネルギー政策と持続可能性の分野で世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーに選出された。Twitter

画像:イランのペルシャ湾岸、アサルーイェにあるサウス・パルスガス田の第2~3フェーズの眺め[イランとカタールが共同所有]。REUTERS/Morteza Nikoubazl

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