放棄された多くの鉱山には水がたまっており、その水は地球の熱によって温められている。
イングランド北東部のある鉱山は、1,500世帯分の熱を供給できると見込まれている。
現在、英国全土で約30件の鉱山水暖房事業が計画されている。
鉱業を営む他の国々も、この持続可能な技術を活用して二酸化炭素排出量を削減できる。
英国の約4世帯に1世帯は、石炭の鉱脈の上に建っている。
こうした世帯の多くは、まもなく低炭素で持続可能な暖房の恩恵を受けられるようになるかもしれない。世界的な影響をもたらしうる技術によって、それが実現する可能性がある。
そのカギを握るのが鉱山水である。放棄された炭鉱に水が流れ込んでできた巨大な地下貯水池だ。地球の地殻の温度によって、水は温められている。技術の助けを少し借りれば、家屋を暖めるのに十分な温度になる。
英国では今後数年にわたり、多くの鉱山水を利用した暖房事業が計画されている。水を汲み上げて家庭を暖め、その後再び地下に戻して再加熱する仕組みであり、他の鉱業国でも再現できる循環型のモデルである。
鉱山水暖房の仕組み
ある事業では、イングランド北東部のシーハム・ガーデン・ビレッジに1,500戸の新築住宅が建設される予定である。完成後、これらの住宅には、近隣にある閉山されたドーダン炭鉱で地熱によって温められた水が満たされたラジエーターが備えられる。
この事業は、鉱山から汲み上げられた水が、いずれにせよ処理のために地上へ送られていたことから、合理的な解決策である。鉱山水は塩分が非常に高く、地下の飲料水源を汚染することもあるためだ。
汲み上げの過程により、地下の温度ですでに温められた水が、さらに一定の摂氏18~20度まで加熱される。
こうした事業には課題もないわけではない。英国放送協会(BBC)の報道によれば、スコットランドで行われた小規模な試験事業は、費用面の問題により中止せざるを得なかった。
鉱山水暖房事業には、大きな可能性がある
ただし英国政府は、より大規模な事業の可能性について楽観的である。エネルギー大臣のクワシ・クワーテング氏はBBCニュースに対し、「この事業は大きな変革をもたらす可能性があると考えている」と語った。
「石炭という巨大な歴史的遺産があり、その足跡を活用して緑のエネルギー源に変えられることは、非常に前向きなことだ。」
現在、英国全土で約30件の鉱山水暖房事業が計画されている。これらが成功すれば、英国が2050年までに実現を目指すネットゼロ(実質的な二酸化炭素排出量ゼロ)の達成にも寄与しうる。
英国では、住宅や事業所の暖房に伴う排出が、英国の二酸化炭素排出量の約40%を占めている。
鉱山水事業を規模拡大し、世界各地で再現することができれば、化石燃料に対する最大の需要の一つを減らすことにつながる可能性がある。
グレートリセットの時が来た
鉱山水暖房事業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック後において、持続可能な開発を優先課題とすることに貢献しうる。
世界経済フォーラムは、グレートリセットを呼びかけている。これは、新型コロナウイルスの危機を経て、より公正で持続可能かつ強靱な未来を築くことへの約束である。
「我々に与えられた地球は一つしかなく、気候変動が人類にとってさらに劇的な結果をもたらす次の世界的な災害となりうることを、我々は知っています」と、世界経済フォーラム創設者兼会長のクラウス・シュワブ教授は述べた。「残された短い時間の中で経済を脱炭素化し、我々の思考と行動を再び自然と調和させなければなりません。」
英国の石炭の歴史
近年、英国の石炭産業は大幅に衰退してきた。かつては産業革命を支えていたが、今日では、ガスや再生可能エネルギーにその座を譲り、発電においてますます小さな資源となっている。
2019年に生産された石炭は、過去最低の220万トンにとどまった。そして6月8日、英国は、石炭火力発電所からの電力を使用しない状態が2か月連続で続くという節目を迎えたと、英国の送電網運用者ナショナル・グリッドは発表した。
しかし、かつての大規模な石炭産業は、深い鉱山のネットワークという大きな遺産を残した。そこには、かつては価値を想定されていなかった資源、すなわち水があり、それが今日、新たな価値を持ちつつある。
また、人々の遺産もある。炭鉱産業によって発展した地域の古い鉱山の周辺には、数百万人が暮らしている。産業の衰退による苦難を経て、これらの地域は今や恩恵を受ける立場にある。




