気候変動対策を求める声の高まりと、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとするエネルギー危機により、グリーンエネルギーへの移行に改めて注目が集まっている。
しかし、誰がクリーンエネルギー分野の仕事に就けるのか、どのような技能が必要なのか、賃金はいくらなのかという疑問が残る。
IEAは、現在の国際的な気候変動対策の公約が達成されれば、2030年までにクリーンエネルギーおよび関連分野で働く人がさらに1,300万人増えると予測している。
化石燃料産業に依存する地域社会には、適応に向けた支援が必要となる。
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとするエネルギー危機により、各国がどのようにエネルギーを生産し、利用するかに改めて注目が集まった。世界的によりクリーンなエネルギー源への移行が進むなか、欧州の複数の国はロシア産ガスへの依存を急いで減らしている。
世界が石炭や石油などの化石燃料から太陽光や風力などの再生可能エネルギーへ切り替え、脱炭素化を目指すなか、多くのエネルギー産業の労働者も同じ状況に直面している。
クリーンエネルギーの拡大に伴い、こうした新たな仕事に誰が就けるのか、どのような技能が求められ、賃金はいくらなのか、また、従来の採掘産業に依存する地域社会のグリーン移行をどう支援できるのかという問いが生まれている。
トムソン・ロイター財団は、エネルギー構成の変化が雇用に何を意味するのかを探るため、気候変動の専門家に話を聞いた。
グリーンエネルギーの仕事はどれくらいあるのか?
国際エネルギー機関(IEA)の最近の報告書によると、世界のエネルギー産業で働く人は約6,500万人で、その半数以上をクリーンエネルギー分野の労働者が占めるようになった。
IEAの定義によると、クリーンエネルギー分野の仕事には、バイオエネルギーの供給、原子力や再生可能エネルギーを含む低炭素電力の発電、送電網と蓄電、電気自動車の製造、エネルギー効率化に関わる仕事が含まれる。
「クリーンエネルギー経済は、いずれ訪れるものではなく、すでに現実のものとなっているのは明らかです」と、シンクタンクである世界資源研究所のリサーチ・アソシエイト、ジョエル・イェーガー氏は述べた。
同氏によると、こうした仕事は化石燃料分野の仕事に比べ、パンデミックによる経済的影響に対してより底堅かった。石油とガスの価格がその後高騰したにもかかわらず、両分野の雇用は2020年以降の水準を回復していない。
現在の国際的な気候変動対策の公約が達成されれば、2030年までにクリーンエネルギーおよび関連分野で働く人がさらに1,300万人増え、従来の化石燃料産業で予想される雇用減少を上回ると、IEAは予測している。
しかし、各国が脱炭素化を加速し、2050年までのネットゼロ達成に向けた道筋に乗れば、雇用の増加予測は倍増するとIEAは述べている。
この移行は、エネルギー産業の男女間の不均衡も変える可能性がある。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、女性が占める割合は再生可能エネルギー分野の仕事の32%で、平均すると、石油・ガス分野の22%を上回る。
グリーン関連の仕事はどこにあるのか?
クリーンエネルギーや再生可能エネルギーの仕事は世界各地にあるが、労働者数が最も多く、増加のペースも最も速いのはアジアだ。
世界のエネルギー産業の労働者の約30%を擁する中国は、IEAによると、太陽光パネル(太陽光発電、PVとも呼ばれる)の製造を支配し、この分野で働く人のほぼ半数を雇用している。
「地域によって進捗には差があります」とイェーガー氏は述べ、中東とロシアでは依然として従来型の化石燃料関連の仕事が主流だと指摘した。
「新興市場国と発展途上国では、どのような状況になっても仕事が増えるでしょう。一般に、こうした国々の経済ははるかに労働集約的だからです」と同氏は述べ、クリーンエネルギー関連の仕事がすでに化石燃料関連の仕事を上回ったインドを例に挙げた。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのグランサム気候変動・環境研究所のエコノミスト、オーレリアン・ソーセイ氏によると、中国が太陽光発電(PV)製造で優位に立てたのは、他の技術よりも機器を輸出しやすかったことが一因だ。
一方、風力タービンには北欧と米国に強力な地域拠点があり、アジアとの競争による脅威はそれほど大きくないと同氏は述べた。
質の高い仕事なのか?
新旧いずれの分野でも、エネルギー関連の仕事は経済全体の他の仕事と比べ、より高度な技能が求められ、賃金も高い傾向にある。
IEAによると、エネルギー関連の仕事の約45%は高度な技能を要する。一般の仕事では、その割合は4分の1だ。
しかし、石炭、石油、ガスの労働者は、風力や太陽光などの再生可能エネルギー分野の労働者よりも高い賃金を得る傾向にある。
たとえば米国では、天然ガスと石炭の労働者は、賃金プレミアムがそれぞれ59%と50%で、全国の時給中央値を大きく上回る。米国エネルギー・雇用報告書によると、風力は36%、太陽光は28%だ。
IEAの報告書によると、従来型のエネルギー関連の仕事は労働組合の組織率が高く、数十年にわたる労働者の代表活動の恩恵を受けてきた一方、クリーンエネルギー分野ではパートタイムや契約雇用の割合が高いためと考えられる。
IEAによると、これは新興市場国や発展途上国で特に顕著で、インドでは石炭労働者の賃金が全国平均の約3~4倍に達する。
アナリストによると、新たなクリーンエネルギー分野が研究開発段階から、新しいインフラの設置や建設へと移るにつれて、より低い技能水準で就ける仕事も増えている。
この変化により、新たなクリーンエネルギー関連の仕事は賃金や雇用の安定性が低い一方、教育水準が比較的低い人にも就きやすくなる可能性がある。
化石燃料分野の労働者はグリーン関連の仕事に移れるのか?
化石燃料分野で働く人にとって明るい材料は、よりグリーンな経済でも活かせる技能が多くあることだ。
たとえば、海洋石油掘削施設で働く人は洋上風力発電所でも役立つ技能を数多く持っている。また、従来型のエネルギーインフラのプロジェクトマネジャーは、新産業の同様の職務にも十分対応できる可能性が高い。
しかし、エコノミストのソーセイ氏によると、最大の問題は、クリーンエネルギー関連の仕事が、比較的遠隔地にある化石燃料資源に結びついた従来の仕事と同じ場所に生まれるとは限らないことだ。
「従来の仕事は、失業率が高く賃金が低い地域に、高賃金の雇用を生み出す傾向にありました」とソーセイ氏は付け加え、世界各地にある従来型の工業地域を挙げた。
それに対してクリーンエネルギー関連の仕事は、より広い地域に分散し、経済的に困窮した地域に集中していない。
同氏は、社会の分断を避けるには、従来型のエネルギー産業の労働者の再訓練と技能習得を進めるとともに、彼らが暮らす地域に新たな雇用機会を生み出す必要があると指摘した。
「それに伴う政策を整備しなければ、経済的な機会を失った地域社会が生まれることになります」とソーセイ氏は述べた。




