国際エネルギー機関によると、クリーンエネルギー技術の生産に用いられる重要鉱物の需要は、2040年までに現在の水準の3.4倍を超える可能性がある。
鉱業界は、重要鉱物を責任を持って採掘する革新的な方法を見いだすため、政府、技術リーダー、市民社会と協力しなければならない。
世界経済フォーラム2026年年次総会に集まる指導者たちは、環境の保護と経済成長の推進がどのように両立しうるかを探る。
この10年は、二つの革命が同時に進行した時代として記憶されるだろう。一つ目は人工知能(AI)であり、生産性を変革し、地政学を再構築し、経済が達成しうるものを再定義している。
二つ目はエネルギー転換であり、多様化したエネルギーミックスの構築、インフラの脱炭素化、モビリティの電動化、急速に温暖化する世界における強靭な環境保護策の構築を目指す競争によって主導されている。
この二つの革命を結びつけるものは、同じ文脈で語られることがほとんどないが、両者がともに鉱物集約型であるという点だ。AIデータセンターはすべて、銅を多く使う電力システムに依存している。電気自動車(EV)はすべて、採掘された金属から始まる。再生可能エネルギーの送電網、半導体、蓄電池システムはすべて、地中から採掘された素材に支えられている。
デジタルな未来やクリーン技術について多くの議論がなされているものの、今日の進歩は依然として極めて物理的なものである。だからこそ、イノベーションは単にクラウド上に浮かんでいるのではなく、地球の表層の下から始まるのだ。
重要鉱物によって持続可能な未来を築く
世界は前例のない試みに取り組んでいる。すなわち、デジタル化、脱炭素化、新技術の拡大を同時に進めることである。しかし、これらの移行はいずれも、同じ有限の資源基盤に依存している。
クリーン技術は、それが置き換える従来のシステムと比べて、鉱物の使用量が著しく多い。そして、クリーンエネルギー技術に必要な重要鉱物の需要は、国際エネルギー機関のネットゼロ経路のもとで、2040年までに3.4倍を超えるまで増加すると予測されている。
したがって、2050年のネットゼロを達成するには、EV向けのニッケルやネオジム、太陽光発電パネル向けのシリコンや銀、風力タービン向けの亜鉛など、グリーン技術の主要な投入資源の供給を、増大し続ける需要に対して確保する必要がある。これは、われわれが築こうとしている持続可能な未来の中心に、根本的な緊張関係を生み出している。
AIとクリーンエネルギーを支える素材が、生態系に負荷をかけたり、サプライチェーンを分断したり、社会的信頼を損なったりする形で生産されれば、移行そのものの信頼性が危うくなる。今日の指導者は鉱物が重要であることを理解しているが、現在の鉱物採掘の方法と、その利用に伴う影響が、われわれが皆望む未来に沿ったものであるかどうかを見極めなければならない。
グローバルなイノベーションを可能にする鉱業
数十年にわたり、イノベーションはソフトウェア、スピード、規模によって定義されてきた。今日、イノベーションは再び物理的なものになりつつある。AIハブのインフラ、電動化された輸送、先進的な製造、強靭な送電網はいずれも、性能、耐久性、効率のために設計された素材を必要としている。鉱物の炭素集約度、トレーサビリティ、信頼性は、現在、データセンターから電気自動車に至るバリューチェーン全体の持続可能性を左右している。
このため、鉱業の役割は根本的に変わりつつある。鉱業はもはや遠い上流の活動とみなすことはできない。それは、グローバルなイノベーションを担う戦略的な推進力になりつつある。
AIを活用した探査、精密採掘、デジタル監視、先進的な処理といった技術により、鉱物はより高い効率と、より少ない環境負荷で生産できるようになっている。これらのツールは単に操業を改善するだけでなく、責任ある資源開発の姿そのものを再定義している。AIの時代において、鉱業もまた知的なものにならなければならない。
重要鉱物は現在、経済安全保障と地政学的安定の中心にもなっている。しかし、サプライチェーンは集中しており、処理能力には偏りがあり、需要は新たな生産能力の整備を上回る速さで加速している。
サプライチェーンを多様化し、国境を越えてイノベーションを共有することで、鉱物への依存は強靭性へと転換されうる。各国が責任ある調達の規範で足並みをそろえ、企業が処理・リサイクル能力に共同で投資し、トレーサビリティと効率を改善するために技術が共有されれば、サプライチェーンはより安定し、コストは低下し、環境面の成果も向上しうる。
透明性、トレーサビリティ、責任ある調達に関する共通のアプローチは、予測可能性を高めることで変動性を低減する。これは政府が計画を立て、産業界が確信をもって投資することを助ける。また、コミュニティ内の信頼を築くことにもつながる。ここにこそ、世界経済フォーラムのような多国間プラットフォームが重要な役割を果たす。政府、産業界、技術リーダー、市民社会を結集させ、相互運用可能なESG枠組みから、鉱物サプライチェーンを強化する越境パイロット事業に至るまで、対話を行動へと転換させるのである。
持続可能な明日は、われわれが採掘する方法と同じくらい、われわれがどのように協力するかにかかっている。
重要鉱物を責任を持って採掘する
需要が高まるにつれ、期待もまた高まる。コミュニティ、投資家、顧客は、もはや鉱業を単に産出量だけで評価してはいない。彼らは、環境への スチュワードシップ、社会的影響、長期的な正当性によって鉱業を判断している。
信頼は鉱物経済において最も価値のある通貨となるだろう。生態系が尊重されているという信頼。コミュニティが実質的な恩恵を受けているという信頼。未来を支える素材が気候目標に整合する形で生産されているという信頼。この環境において、リーダーシップは埋蔵量だけで測られるのではなく、信用性によって測られる。
世界には、よりクリーンで、より賢明で、よりつながりの強い未来を築くために必要な鉱物がそろっている。したがって、イノベーションは製品が市場に届いたとき、あるいはアルゴリズムが稼働したときに始まるのではない。イノベーションを可能にする資源と、われわれがどのように責任を持って関わるかを決めたときに始まるのである。
未来はデジタルに感じられるかもしれないが、それは足元の地中にあるものの上に築かれている。

