細菌は未来のエネルギーを生み出せるのか?

細菌は未来のエネルギーを生み出せるのか?
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化学物質は私たちの身の回りにあふれています。農業、食品、化粧品など、あらゆる産業で欠かせないものです。こうした化学物質がどのように作られるのかを深く考える人はほとんどいません。ましてや、化学産業が社会の石油依存に一役買っていると考える人はごくわずかでしょう。しかし、実際にそうなのです。

歴史的に、農薬、栄養補助食品、化粧品などの製品に必要な化学物質を開発するため、石油が使われてきました。これらの化学物質の製造に必要な基本原料の多くは自然界に存在しますが、そうした天然素材を取り出し、大規模な工業プロセスで利用することは難しく、コストもかかることが分かっています。そのため、代わりに石油が使われています。

最近まで、石油は安価で豊富に入手できる商品と見なされており、化学産業での利用に最適でした。しかし、世界は変わりました。環境を守り、国家安全保障を維持するために、石油への依存を減らす必要性を私たちは認識しています。また、 健康への懸念 もあり、口にしたり身体に塗ったりする製品に石油を使うことが問題視されています。

だからこそ、産業バイオテクノロジーの新たな先端手法が重要です。これらの手法により、石油の代わりに遺伝子改変した細菌細胞を使って、こうした製品に用いる化学物質を開発できるようになっています。重要なのは、細菌を安価で再生可能なさまざまな資源で培養できることです。農地から出るさまざまな廃棄物も利用できます。

しかし、細菌を効果的に、そして産業で規模を拡大できる形で利用するには、細菌の細胞生物学について、さらに多くのことを知る必要があります。細胞の中心にある仕組みやプロセスを調べて初めて、これまで産業界では実現困難だった方法で、有機化学物質を作るために細胞を利用する方法が分かります。

有益な細菌

ニューカッスル大学の 細菌細胞生物学センター では、長年にわたり、 枯草菌(Bacillus subtilis)を研究してきました。この細菌は土壌、さらには 人間の腸内にも穏やかに生息しています。この細菌とその近縁種は、さまざまな有用なプロセスの触媒となる酵素を作り、分泌する能力に優れています。そのため、 バチルス属菌 はすでに産業界で広く利用されています。たとえば、 生物学的洗剤に使われる酵素 、すなわち血液、卵、その他のタンパク質汚れを分解するプロテアーゼや、でんぷんを溶かすアミラーゼの製造に使われています。

しかし、細菌が効率よく分泌できる酵素の種類は、私たちが望むよりもはるかに限られています。細菌の基本的な構造やプロセスに関する研究によって、多様な供給源に由来する幅広いタンパク質を分泌できるよう細胞を改変する道が、今まさに開かれつつあります。

つまり、そう遠くないうちに、 バチルス属菌 はあらゆる種類の酵素の製造に使われるようになります。その中には、現在石油に依存しているプロセスに代わる、化学産業に必要な酵素も含まれます。

これは大きな機会です。欧州の産業バイオテクノロジー業界の年間売上高は推定600億ユーロを超え、世界の産業用酵素市場は2018年までに 71億米ドルの規模になる と予測されています。洗剤用酵素だけでも、10億ドル規模の事業です。

しかし、石油ベースの解決策に依存し続ければ、成長が妨げられ、社会や環境に重大な影響を及ぼしかねません。石油を細菌に置き換えることは、人々の暮らしに実質的な影響をもたらすでしょう。

藻類対日焼け

日焼け止めクリームは好例です。ニューカッスルで私たちが取り組んでいる プロジェクト の一つは、再生可能な素材から有機紫外線吸収化合物を開発し、日焼け止めに使うことです。

紫外線にさらされることで生じる損傷は大きな懸念事項であり、紫外線を遮断する化粧品への需要は高まっています。業界では、日焼け止めに使う紫外線遮断素材を作るため、石油ベースの技術や無機金属酸化物粒子に頼っています。

しかし、海に生息するシアノバクテリアと呼ばれる光合成細菌が、自ら 有機系の日焼け止め分子を作ることが分かっています。シアノバクテリアから関連遺伝子を取り出し、化学製造ですでに広く使われている細菌に移植すれば、この状況を変えられると期待しています。成功すれば、このプロセスは容易に規模を拡大でき、化粧品業界は安価な有機系日焼け止めを開発できるようになるでしょう。

これは、細菌が石油に頼らない未来を支える可能性を示す一例にすぎません。廃棄物を使って細菌やほかの微生物を培養し、自動車や航空機の「バイオ燃料」として使われるエタノールなどの化学物質を作る可能性を探る研究は、すでに進んでいます。これにより、石油の使用をさらに減らせます。

この構想を実現するには、まだ多くの取り組みが必要です。しかし、細菌細胞の働きや化学物質の製造への活用方法を調べ続けることで、廃棄物がエネルギーに変わり、石油なしで暮らせる未来が見えてきます。

この記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。記事の掲載は、世界経済フォーラムがその見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:ジェフ・エリントンは、ニューカッスル大学細菌細胞生物学センターのディレクターです。

画像:専門家のジェレナ・コヴァルコワ氏が、2011年6月9日、リガの食品安全・動物衛生・環境研究所で、大腸菌(E. coli)菌株を分離する作業中にシャーレを調べている。REUTERS/Ints Kalnins。

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