炭層ガス採掘で生じた水は地下に再注入できるのか?
炭層ガス(CSG)採掘に関する主な懸念の一つは、採掘過程で生じる水をどう処理するかということです。また、業界が地下水に 及ぼす影響についても、より一般的な懸念があります。しかし、CSG採掘で生じた水を再利用し、地下に戻せるとしたらどうでしょうか。
私の 新たな研究は、CSIROの ガス産業社会・環境研究アライアンスの一環として実施されたもので、このCSG由来の水を帯水層に再注入できること、また状況を慎重に監視すれば水質上の問題はごくわずかであるはずだということを示しています。
なぜ炭層ガス由来の水を再利用するのか?
クイーンズランド州では、いわゆる「生産水」の管理に関する 州政府の方針(一般に「CSG水」とも呼ばれる)は、「環境を保護し、貴重な資源として生産的な利用を最大化する形で、CSG水の有益な利用を促進する」ことです。
政府の方針では、可能な場合、CSG水は環境、既存または新規の水利用者、既存または新規の水依存型産業のうち、少なくとも一つに利益をもたらす用途に使うべきとされています。
それが不可能で、実行可能な有益な用途を検討した後は、環境への損害を回避または最小限に抑える方法でCSG水を処理・処分するよう、規制で定められています。
CSG採掘で生じた水は、水質、量、処理レベルに応じて、次のような用途が考えられます。
地域の農家やコミュニティへの供給
農作物の灌漑や植林地の林業
粉じん抑制
掘削、石炭洗浄、発電所の冷却などの産業用途
堰やダムへの補水、または灌漑需要の高い地域の河川流量の回復
帯水層への涵養
そのため、クイーンズランド州のCSG企業は、処理済みのCSG採掘水を再注入することの実現可能性と潜在的な環境影響を検証しています。まず水を処理して溶解塩類やその他の化学物質を除去します。その後の水質は、再注入先の帯水層より良好な場合が少なくありません。
重要な問いは、受け入れ側の帯水層にすでに存在する地下水の量と水質にどのような変化が起きるかです。私たちは既存のコンピューターモデルを基礎に、地域および広域における水質と水量への影響を予測する手法を開発し、この問いに答えようとしました。
地下水の流れと、汚染物質が帯水層をどのように移動する可能性があるかをシミュレーションする4つのモデルを構築し、統合しました。そのうちの一つは、クイーンズランド州の 地下水影響評価局 が サラット盆地の地下水流動を調べるために開発した広域地下水モデルを基にしています。
残る3つのより詳細なモデルは、地下水系をより深く理解し、注入井からさまざまな距離で処理済みCSG水を再注入した場合の影響を把握するために構築しました。これらのモデルを使って答えようとした主な問いは次のとおりです。
帯水層の水質が変化した場合、再注入された水が希釈されて元の水質に戻るまで、どのくらいの距離と時間を要するのか。
汚染の危険にさらされる家庭用または家畜用の井戸はあるか。
地質断層が存在する可能性は予測にどのような影響を及ぼすか。
結果
サラット盆地のプレシピス砂岩層に処理済みCSG水を大規模に再注入するモデルシミュレーションでは、広域にわたって地下水圧が上昇することが示されました。再注入地点付近の観測井では、地下水位が最大140 m上昇する可能性があります。一方、再注入地点から遠く離れた家畜用・家庭用井戸で予想される地下水位の上昇はごくわずかです。
たとえば、最も近い家庭用・家畜用井戸は再注入井の地点から約15 km離れており、シミュレーションでは、この井戸での地下水位上昇は最大4.3 mと示されています(この地域の井戸の一部は自噴する被圧井で、地下からの圧力によって水がすでに地表まで達しています)。
この上昇は、再注入を行わなくても自然に起こる可能性があるため、必ずしもリスクとは限りません。また、地下水位の上昇は、この地域で利用できる淡水の量が増え、何十年にもわたって汲み上げられることを意味します。モデルは、プレシピス砂岩層の上に重なる他の帯水層では地下水位の変化がわずかであることも示しました(下図参照)。
サラット盆地の地下水系の図。
地下水影響評価局、著者提供
また、モデルを使って地下水質が変化する可能性も特定しました。結果から、再注入された処理済みCSG水は、注入井から5 km以内で非常に低い濃度(元の濃度の1%以下)まで希釈されることが示されました。
注入井から5 km以内には家庭用・家畜用井戸がありません。このため、処理済みCSG水の再注入によってプレシピス砂岩層にあるこうした井戸が汚染されるリスクは、無視できる程度と考えられます。
しかし、提案されている注入井は広い範囲に分散しており、地層にすでに存在する汚染物質が移動する不確実性もあるため、望ましくない変化を検知して封じ込められるよう、地下水質を継続的に監視することが不可欠です。
この記事は、 The Conversationとの共同掲載です。掲載によって、世界経済フォーラムが記事の見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Sreekanth Janardhananは、CSIRO土地・水部門の地下水水文学研究プログラムに所属する研究科学者です。
画像:炭層ガス採掘で生じた水は、地下に再注入される前に逆浸透膜プラントで処理されます。CSIRO、著者提供

