医薬品の高価格は、イノベーションのために私たちが支払う代償

A veterinarian prepares a dosage of rabies vaccine at the 2014 Taipei Pet Show at Nangang Exhibition Hall in Taipei July 11, 2014. The show runs from July 11 to 14. REUTERS/Pichi Chuang (TAIWAN - Tags: SOCIETY DRUGS) - RTR3Y3TS
The relationship between unmet medical need, innovation, and high drug prices is complex and politically fraught.Image: REUTERS/Pichi Chuang
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米国のドナルド・トランプ大統領は最近、伝えた米議会に対し、米国民は「医薬品の人為的につり上げられた価格を引き下げ、直ちに引き下げるために取り組まなければならない」と述べた。米国の処方薬が非常に高価であり、それが世論の大きな怒りを招いているという点で、トランプ氏の指摘は正しい。しかし、この問題に取り組むにあたり、科学的イノベーションを損なわないよう慎重でなければならない。

満たされていない医療ニーズ、イノベーション、医薬品の高価格の関係は複雑で、政治的な論争も絶えない。例えば、米国で1983年に制定された希少疾病用医薬品法(オーファンドラッグ法)は、希少疾患の治療法開発を支援することに成功した。しかし、同法が研究開発を行う企業に税控除などの金銭的な優遇措置を与えたにもかかわらず、開発された治療薬には目を疑うような価格が付けられている。また、一部の企業は制度の抜け穴を利用し、古い薬をはるかに高価な希少疾病用医薬品として転用した。この慣行は世論の怒りをさらに強めた。

その怒りの一部にどれほど正当な理由があるとしても、新薬の発見と開発は非常に困難で、リスクも大きいのが現実だ。多くの疾患の根底にある異常なメカニズムは依然として謎であり、倫理的かつ有効な実験的医学研究を行うことは難しい。

その結果、医薬品の研究開発は失敗しやすい。臨床試験段階に進んだ抗がん剤100品目のうち、規制当局の承認を得るのはわずか7品目だ。大半の薬はそれよりずっと前に開発に失敗する。こうしたすべてに費用がかかる。

トランプ氏が「遅く、負担が大きい」と表現する承認手続きも、医薬品のコストをさらに押し上げている。もちろん、承認手続きは消費者を守るために設けられているが、イノベーションを担う企業にとって高額になり得ることに変わりはない。こうした費用をすべて合算すると、製薬業界で研究開発費の支出が最も多い上位15社は、新薬1品目を成功させるまでに平均約30億ドルを投じている。

しかし、イノベーションを担っているのは巨大製薬企業だけではない。むしろ、医薬品開発のイノベーションは歴史的に、私がCEOを務めるSilver Creek Pharmaceuticalsのような独立系の小企業が担ってきた。こうした企業は開発した薬を、あるいは会社全体を、より大きな企業に売却する。

投資を確保するため、私たちのような企業は、薬が市場に出れば、その見返りが失敗した試みの費用を十分に上回ることを証明しなければならない。病人を治すという道義的な使命を理由に、特別な優遇措置が与えられるわけではない。資金調達にあたって、私たちは他の誰もがそうであるように、投資家に優れた利益をもたらす一方で、人類への恩恵には疑問が残るゲーム業界などと、同じ資本をめぐって競争している。

新薬の価格は、次の薬の開発資金として利用できる資本の量に直接影響する。これはあらゆる医療制度にとって重要だが、米国にとっては特に重要である。製薬分野を含む科学イノベーションは、米国の主要な競争優位であり、世界への最も重要な貢献の一つでもあるからだ。

イノベーションのためには高価格が必要だという私の主張は、製薬業界のロビイストを安心させるように聞こえるかもしれない。しかし、問題のもう一つの側面、つまり薬を必要とする人々が入手できるようにすることを忘れてはならない。

私は20年間、さまざまな意味でこの第二の要請を体現する制度、すなわち英国の国民保健サービス(NHS)で働いた。その間、病院の「医薬品使用委員会」の委員長を務め、限られた医薬品予算をどの新薬に充てるかを選定した。基準は単純で、安全性、有効性、費用対効果だった。私の役割は変わったが、医薬品の費用対効果についての考えは変わっていない。

医療に携わる同僚たちは、新しい「奇跡の薬」を提供できないことに不満を感じることがあった。価格があまりにも高かったのだ。NHS全体と同様、私たちは後発医薬品への積極的な切り替えや、処方者が選べる薬の管理を通じて、予算を最大限に活用しなければならなかった。病院を破綻させることなく、真に革新的な薬を患者に届けてきた実績を誇りに思う。

医薬品の価格を決めるにあたり、私が生まれた国と、移住して市民となった国は、明らかに異なる道を選んできた。双方の経験から学ぶことができる。

英国では、事実上、政府が採用する薬を選ぶ。この仕組みは多くの薬へのアクセスを広げる一方で、相当なコストを伴い(専門家ではない人々が判断を下すため、遅延やロビー活動の余地が生じる)、イノベーションを制約する。しかし、NHSは英国人口の100%を、自己負担がほとんど、あるいはまったくない形でカバーし、GDP比でみた医療支出は米国の半分未満であることも指摘しておきたい。

自由市場が医薬品価格を決める米国では、価格が高くなり、その負担は保険料、税金、自己負担金に反映される。この仕組みは製薬分野のイノベーションを継続させる一方で、一部の米国民が必要な薬を買うことを難しくしている。この意味で、米国民は、世界全体が恩恵を受ける将来の医薬品イノベーションの資金を、不公平にも事実上、負担している。

トランプ政権はいま、ジレンマに直面している。医薬品の平均価格を引き下げなければ、世論の怒りはさらに強まる。無差別に大幅値下げすれば、資本は米国から医薬品開発により理解のある国々へ流出するか、医薬品開発そのものから離れていく。

だからこそトランプ政権は、医療業界のあらゆる分野の代表者を交えた、理性的な議論を促すべきだ。その議論が大衆迎合や業界のロビー活動に左右されないよう、トランプ氏が過去に称賛したNHSのような制度から、医療費全体を抑え、費用対効果の高いイノベーションを活用する方法を学ぶべきである。

米国民が薬を入手できるようにすることと、米国の競争優位および世界への貢献を維持すること。この二つの要請を両立できるのは、開かれた姿勢に立つ、きめ細かなアプローチだけだ。トランプ政権はこの取り組みを主導すべきである。

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