ジャーナリストのモニカ・デイビーは、2013年6月11日付の『ニューヨーク・タイムズ』の記事で、シカゴでは銃撃事件と犯罪が大幅に減少したと記録している。
2013年のシカゴの殺人件数は、1960年代初頭以来の水準にまで低下し、2012年から2013年にかけて34%減少した。
犯罪の大幅な減少について彼女が示す説明は、ここ数カ月、残業する警官が1日最大400人、最も危険とみなされた市内のわずか20の小区域に派遣されたというものだ。
警察によると、市内に何万人もいる、ギャング構成員と疑われる人々、彼らが縄張りだと主張する地域、そして彼らの抗争関係について包括的に分析し、ギャングの派閥間で報復として起きる銃撃を抑え込んでいる。また、殺人に関与する可能性が最も高いと特定した、つながりを持つ400人超にも重点を置いている。被害者としてであれ、加害者としてであれ、殺人に関わる可能性が高い人々である。
新たな研究:社会ネットワークの主要人物に焦点を当てる
複数の共著者と進めている最近の研究(下記参照)は、ネットワークに組み込まれた主要人物をターゲットにすることが、活動全体にどのような重要な影響を及ぼし得るかを調べることを目的としている。これは特に犯罪に当てはまる。シカゴで犯罪を減らすことに成功したのは、より一般的なターゲットに資源を費やすのではなく、400人の主要人物をターゲットにしたためだった。
この取り組みは、犯罪、教育、研究開発、金融、マイクロファイナンスの普及など、さまざまな活動において、社会的相互作用と社会ネットワークが果たす役割に関する二つの重要な問いに向き合うものだ。
第一は、こうした活動におけるピア効果の役割である。
社会ネットワークにいる人々は、犯罪をより多く、あるいはより少なく行うこと、研究開発での協業を増やすこと、あるいは銀行融資をより多く、またはより少なく提供することに、どの程度影響するのだろうか。
第二に、ネットワークから取り除いたときに活動全体を最も大きく減少させる主体をターゲットにする「主要人物」政策は、現実の状況においてどれほど実証的な意味を持つのだろうか。
また、主要人物政策の予測性能を、より伝統的なネットワーク中心性の指標に基づく他の政策や、最も活動的な主体をターゲットにするなど、妥当な他の政策と比較したい。本稿では、犯罪、研究開発、教育、金融、マイクロファイナンスに関するこれらの政策を概説する。
犯罪
犯罪については、Lindquist and Zenou(2014)の研究を考えてみよう。この研究では、スウェーデンにいる16歳を超え、少なくとも一件の犯罪の容疑を受けた人々を対象としている。スウェーデンで犯罪を犯した疑いのある全員を記録した、警察の公式登録簿を利用できる。この登録簿には、誰が誰と犯罪を共にした疑いを持たれているかが記録されている。この文脈では、二人が一緒に犯罪を犯した疑いを受け(その後、有罪判決を受け)ている場合、二人の間に(犯罪上の)つながりがある。有罪判決データと容疑者データには、いずれも犯罪の種類、犯罪の日付、受けた制裁が含まれている。主要人物がもはや活動中のネットワークに属していない事例について、その人物を取り除く相対的な効果を調べる。そのため、対象期間中に死亡したかどうか、また刑務所に収容されたかどうかを示す指標変数を各人について作成する。結果によると、現実の世界では、主要人物政策はランダムな人物を選ぶ政策を9.58%上回る。また、最も活動的な人物を取り除く政策を3.16%、固有ベクトル中心性および媒介中心性が最も高い人物を取り除く政策をそれぞれ8.12%、2.09%上回る。
研究開発ネットワーク
研究開発ネットワークについては、König et al.(2014)の研究に従い、研究開発ネットワークにおける主要人物、より正確には主要企業を特定する。言い換えれば、市場から退出した場合(すなわち倒産した場合)、残る企業と消費者にとって、活動全体または厚生の面で最も大きなコストをもたらすという意味で、産業にとって重要な企業を特定することが目的である。MERIT-CATIデータセットを用いて40年以上にわたる主要企業を特定し、主要企業は通常、研究開発での協業数(次数)、特許数、固有ベクトル中心性、媒介中心性、近接中心性のいずれも最も高い企業ではなく、さらに重要なことに、その部門で市場シェアが最も大きい企業でもないことを示す。興味深いことに、2008年に大統領当選者オバマによる救済を受けたゼネラル・モーターズは、主要企業の一つだった。ゼネラル・モーターズが1990年に市場から退出していたなら、総厚生は8.37%低下し、総生産量は2.14%減少していたことを示す。
教育
教育については、Hahn et al.(2014)による最近の研究を取り上げる。この研究では、バングラデシュの農村部の小学校に通う小学4年生を対象に、対照実験を実施した。ネットワーク調査で各生徒に親友を挙げてもらった後、各学校で4人ずつの無作為なグループを作り、それぞれのグループに異なる算数と知識のテストを受けてもらった。答えたい中心的な問いは、偶然、平均中心性の高いグループに入った生徒は、平均中心性の低いグループに入った生徒と比べ、テストの点数にプラスの影響を受けるのか、ということだ。また、グループ内で中心性が最も高い個人が成績に及ぼす影響を調べ、グループ内のリーダーシップが成績に果たす役割も検証する。検討した6種類の中心性のうち、主要人物中心性とKatz-Bonacich中心性が、グループ内と個人の双方における生徒の成績を説明するうえで最も重要だと分かった。どちらのテストでも、最も優れた指標はKatz-Bonacich中心性だった。これらの結果は、中心性の観点から見たグループ構成が個人とグループ双方の成績に影響し、主要人物中心性とKatz-Bonacich中心性がその成績を左右する重要な要素であることを示している。
金融ネットワーク
Denbee et al.(2014)の研究を用いて、金融ネットワークも調べる。2006年1月から2010年9月までの日次データを使い、著者らはリスク上の主要人物、すなわち流動性リスク全体に最も大きく寄与する銀行を特定する。主要人物がこの期間に取ったリスクは大きく変動することを示している。また、ネットワーク内の主要人物が必ずしも最大の借り手とは限らないことも分かった。実際、信用ブーム期には、大規模な貸し手と借り手が同じ程度に主要人物となりやすい。この一連の知見は政策上重要であり、政府が介入を決めた場合に、流動性を効果的に注入してネットワークのリスクを低減する方法を示唆する。
最後に、Banerjee et al.(2013)の研究を用いて、インドにおけるマイクロファイナンス融資の普及で主要人物が果たす役割を検討する。中心的な問いは、新しい商品について情報を最初に受け取る村の人々のネットワーク上の位置が、最終的な普及にどのような影響を及ぼすか、ということだ。著者らは、情報伝達上の中心性が、マイクロファイナンスへの最終的な参加を強く予測することを示している。したがって、同様の村でマイクロファイナンスの情報を広めようとする人々にとって、有用な指針となるはずだ。
この記事は、 Vox EUとの協力のもと掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Yves Zenouはストックホルム大学の経済学教授。
画像:2013年9月4日、ニューヨークの通りを歩きながら手をつなぐカップル。REUTERS/Lucas Jackson

